宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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第百六話 過去の機体と未来の技術と

「社長、極秘プロジェクトの件なんですが」

 

「おう、どうした?」

 

「見に来て欲しいとだけ言われました、進捗を見せられるまでに仕上がったようです」

 

秋津島開発では表に出せないような研究も行っている、今回視察に行く物についてはその際たる物と言っていい。向かう場所は東京であり、京都に次ぐ第二の首都だ。

 

「バビロン計画に付随する地下施設の建造、そしてそれを利用した研究施設の整備とは帝国も腹黒くなったもんだな」

 

「ひっきりなしに人と物資が出入りしている場所ですから、隠すのに都合の良い場所ではありますね」

 

大都市の地下に大企業の研究所があり、公には出来ない研究をしている。字面だけ見れば映画かアニメの悪役であるが、国家転覆を企むクーデター部隊を支援した前科があるためあながち間違いではない。

 

「G元素の確保が出来た後から研究開発部は色々とおかしいというか、勢いが違いますよね」

 

「設立当初の空気に似てるな、若い社員が増えて良い風が舞い込んだらしい」

 

G元素を使うことで大抵の問題は全て解決する。宇宙空間の長大な移動時間、高速で飛来するデブリ、必要とされる莫大な電力と推進剤、回転式重量発生装置のコリオリ力問題などなど…これら全てがどうにかなりそうなのが今の秋津島開発である。

 

「BETAを倒した後には何十隻という大型船が重力を操り、ロケットエンジンを使わずに大気圏外に飛んでいくだろう。デモンストレーションのために戦艦大和を宇宙戦艦にするって話はまだ諦めてない」

 

「それはやめて差し上げた方が良いですよ、相手も困りますって」

 

「いや意外と乗り気なんだよ、アイツら」

 

 

東京の支社や工事現場を見て回った後、地下へと進む貨物列車へと乗り込んだ。車両の後部には幾つかのコンテナが載せられており、その全てが戦術機に関する物だった。

 

「斜めに進むタイプの車輌って良いよな、隣にあるデカいエレベーターとかも近未来SFって感じで好みなんだ」

 

「我々は常に近未来を体験する立場に居ますが…」

 

それなりの深さまで到達した貨物列車は荷物の積み下ろしを始め、それと同時に社長達も降りて先に進んだ。案内されるままに先へと進めば、そこは巨大な格納庫だった。

 

「えっと、ここは?」

 

「ML機関搭載兵器のための場所だ、まだすっからかんだがな」

 

「いやそこではなく、戦術機用のハンガーとほぼ同型に見えるのですが」

 

ML機関を乗せた兵器というと巨大なイザナギやXG-70が思い浮かぶが、戦術機サイズの兵器はどの国も作れていない。炉は兎も角、それに付随する演算装置が巨大になり過ぎるためだ。

 

「戦術機の大きさまで小型化する予定でな、まあ多少の無理はあるんだが」

 

「コックピットに収まる程度のコンピュータでは到底制御出来るとは思えませんが…」

 

「出来るぞ、最近出来たじゃないか」

 

秘書はなんのことかと頭を捻ったが、数秒と経たずに第四計画の研究内容を思い出した。

 

「まさか00ユニットを載せる気ですか?」

 

「作り方は博士のお陰で全部分かってるからな、人間サイズなら複座式の管制ユニットに丁度収まって都合が良い」

 

「国連主導の計画で得られた技術を私物化するのはその、問題なのでは」

 

「それはソ連に言ってからにしてくれ」

 

何か言われればG元素利用技術の提供をチラつかせて牽制する予定だ、この地下で作っている機体は秋津島の本来の目的を達成するためにも必要であるため手段は選ばない。

 

「完成すれば第四世代すっ飛ばして第五世代機って所だな、無法もいいとこだ」

 

「そこまでの代物に…なるでしょうね、確実に」

 

原作において第四世代機は0G環境下での活動能力を持つ機体を指し、第五世代はG元素を動力とし重力場を発生させられることが明らかになっている。後者の完成は2031年、つまり30年以上も早く実機が完成することになる。

 

「無人機の技術と合わせればBETAの一方的な殲滅が可能になり、宇宙空間で将来的に必要になるであろう次世代MMUの先駆けにもなる筈だ」

 

「それ以上に武力としての側面が強くはありませんか?」

 

「…戦後の抑止力になるだろ、正直戦争が起きないとは俺も思ってないからさ」

 

もしこのまま第四計画によりオリジナルハイヴを攻略したとしたら、原作と比べて国力を大きく温存したままの国家が非常に多く存在することになる。秋津島開発が齎した様々な兵器の恩恵を受けられたのは西側ばかり、パワーバランスが崩壊したこの状態がどのような結果を招くのかは誰にも分からない。

 

「帝国は備えが必要だと思ってる、そして俺達は未来のための機体が作りたかった」

 

「戦争に巻き込まれれば宇宙開発どころではなくなりますか、確かにその通りかもしれませんね」

 

格納庫を抜けて更に奥へと進んだ二人は、ある機体を眼にすることになる。背中からML機関が突き出し、剥き出しになったフレームの合間からは大量のケーブルが垂れている。

 

「社長、よく来て下さいました!」

 

「試製三号は素体として使えたみたいだな、良かった良かった」

 

「ええ。過去の機体とはいえ流石は社長の設計、構成する素材と部品を少し変えれば一線級に早変わりでしたよ」

 

「…マジで?」

 

試製三号は砲撃機開発プロジェクトにて作られた試作機であり、疾風と名を改めた試製四号より一つ前の機体である。機体に超電磁砲用の大出力発電機をそのまま搭載した機体であったが、固定式にしたが故の劣悪な整備性と飛び出た背中が既存の輸送方式に合致しないという点から試作機で終わったという経歴を持つ。

 

「おっかしいな、変なの出力してたのか俺は」

 

「昔の試作機から発電機を外して代わりにML機関を載せたって、ここの開発チームは中々な無茶をしますね」

 

「こんなに上手く行くとは思ってなかったな、よくやったもんだよ」

 

しかし着脱式よりも大きな剛性と内部容積を持ち、近代化改修を難なく受け入れる基礎設計の優秀さ、超電磁砲を運用するために用意された規格外の機体内の送電能力はML機関の搭載に高い適性を見せたのだ。

 

「許可さえ頂ければ機体の送電網も全部超伝導体に載せ替えるんですがね、流石にそれはまだ駄目ですか」

 

「量産が効かなくなるから駄目だと言いたいが、今後のためにも一機分の予算は用意しておくことにしよう。来期の予算を見て腰を抜かすなよ?」

 

「やった!社長なら分かってくれると思ったんですよ!」

 

今なら技術者達にある程度好きにやらせた方が上手く回る、人材がここまで育つとは社長にとっても想定外だっただろう。

 

「コイツが飛び回るようになれば月の奪還も夢じゃない、約束を果たせると良いんだがな」

 





【挿絵表示】


容量がデカいので後で差し替えますが、試作機と将来的に完成するであろう量産型の頭部イメージです。昔のプロットだとエピローグまで塩漬けになる予定でしたが、出した方が楽しそうという理由から出演決定です。
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