宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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第百七話 F-15と対地攻撃と

「米国の新型戦術機?」

 

「遂に配備が始まったF-15の改修型だそうですが、聞いていた通りに第三世代機の技術を一部流用しているそうです」

 

「なるほど、F-15Eか」

 

第二世代機最強の機体はこの世界でも生まれたようだ、実際のところF-15系列機は隼改よりも優秀な性能を誇る。少しコストが高いのが問題だが、第三世代機を揃えるよりも余程マシだ。

 

「対地攻撃能力を重視した支援型で、ミサイルコンテナを通常の倍である四基搭載出来るそうです」

 

「…えっ?」

 

「また砲身を強化した分隊支援型突撃砲を装備、使用する弾薬は36mm弾ですが弾倉の形状変更により制圧能力が向上したとのことです」

 

「待て、待ってくれ」

 

原作では正統進化とも言える順当な道筋を辿る筈だったF-15は、なんの因果か現実の戦闘機同様に対地攻撃能力を大いに強化されて現れた。

 

戦術歩行戦闘機(ストライクイーグル)が現実の方の戦闘爆撃機(ストライクイーグル)になってるじゃねぇか!」

 

「はい?」

 

「何があったんだよ、いやまあアリだと思うけどさ」

 

「忘れたんですか社長、マクダエル・ドグラム社に戦術機用センサの製造契約を結んだじゃあないですか」

 

「…あっ、ハイネマンさんの件か!」

 

数年前のことだが、戦術機の開発において優秀なアビオニクスが欲しいというハイネマン氏の話を聞いてそれならばと会社同士の契約にまで発展させたことがあった。米国におけるセンサ類のライセンス製造は軌道に乗ったという報告を受けたのは数ヶ月前、つまりは湯水のように使えるようになったということだ。

 

「最近はステルス装備は必要か必要ではないかって議論をしていたじゃあないですか、その時に何か聞きませんでしたか?」

 

「いやF-15Eが完成しそうって話は聞いたけど、ガチガチの支援型に仕立て上げてくるとは思わなくて…」

 

何故こうなったのか、それを知るためにハイネマン氏と深い交流があることで仲がいいマクダエル社から来た書類を読むことにした。書かれていたのは要約すると"作った電子機器は色んなことに使いました、良かったです"みたいな内容だった。

 

「BETA群の識別能力は格段に向上したようですね、画像の識別にAI技術も導入したことでミサイル自体の精密性も上昇したと大雑把ですが書いてあります」

 

「細かく書くと情報漏洩だからな、これでもかなりギリギリを攻めて教えてくれてる方だろ」

 

戦術機部門を統括するハイネマン氏は秋津島開発との繋がりを維持し、出来るのであればより深いものにしたいと考えているらしい。

 

「そんで本命はこっちか」

 

「F-15CをE型に改修する上で必要となる部品製造への協力、つまりプリンタを有する我が社の製造ラインを貸せと?」

 

「隼とF-16みたいな低価格帯じゃあ殴り合ったからな、国連向けの輸出には数が必要なことだし大陸に近い帝国の立地は有用ってのもあるだろ」

 

アジア戦線の機体を改修するので設備の整った後方に下げるとなれば、最悪海を渡って米国にまで行かなければならない。帝国側でアジア向けの部品製造と機体改修を手伝えば、かなりの負担軽減になる筈だ。

 

「在日米軍も居るしな、機体の機密保持はそっちに回せばいい」

 

「利益をこちらに割くことになりますが、マクダエルの経営陣はそれで納得したのでしょうか」

 

「製造ライセンスの品数拡大を目論んでるのは確かじゃないか、特にAI技術は欲しがってる素振りを見せてる」

 

「アレはその、再現出来るような代物ではない気がしますが」

 

脳味噌を思い通りの形で培養した上で様々な処置を行い、更にはコンピュータのように振る舞うようプログラムする。使用されている言語を読み解ける技術者は秋津島にも数人しかおらず、内容に関しても理解出来るのが半分ほどという半ばブラックボックスのようなものなのだ。

 

「まあ仲良くやれるならそうしようじゃないか、帝国に怒られたくないから全部作っていいよとは言えないけどな」

 

「軍事機密を独断で提供したら会社が無くなりますよ」

 

社長はぶっ飛んでいても心は小市民、天下の秋津島も国には勝てないのである。

 

 

この後帝国軍から話があり、社長はある会議に出席していた。てっきり米国企業の件で釘を刺されるのだと秋津島側は考えていたが、議題は別のものだった。

 

「対地攻撃能力を強化した支援型の存在意義、ですか」

 

「アレは超電磁砲や荷電粒子砲を持たない米国軍が独自に発展させた機体だと我々は考えているが、是非専門家のご意見を頂きたい」

 

「うーん、もしかしたらあの一件が発端になっているのかもしれません」

 

「あの一件とは?」

 

「F-15が配備されたばかりの頃に行われたダクト、異機種間戦闘訓練で誘導弾をこれでもかと積んだ疾風を使ったことがあります」

 

衛星との連携により市街地のF-15を一方的に攻撃、被害を出すことなく完勝したという過去がある。当時は色々と議論が巻き起こったが、米国にある程度の影響を与えていた可能性は無視出来ない。

 

「超電磁砲を有する疾風はBETA群への攻撃能力だけでなく、強力な対空迎撃設備としても使えます。第二の光線級とも言える機体への対抗策として誘導弾搭載機を出して来たとも考えられるかと」

 

「…なるほど、戦後におけるミサイルキャリアーとしても有用という訳か」

 

「四基のミサイルコンテナを搭載すれば機動力はかなり下がるとは思いますが、使い方によっては強力かもしれません」

 

こんなミサイルガン積み戦術機は見たことがない、幾ら原作の知識があっても出て来ていない機体となればお手上げだ。

 

「ここまでの積載量があればF-14と同等かそれ以上の誘導弾を搭載出来る、米国と国連軍がどう使うかを見なければ判断は出来そうに無いな」

 

「…まあ悪い機体じゃないでしょうね、ハイネマン氏の機体ですし優秀な子だと思いますよ」

 

この後どうなったかと言うと、改修型として順当に性能が上がっていたために普通のF-15と同じように扱われたというのが事の顛末だった。

 

しかし積載量を活かして両肩にガンポッドを載せたA-10モドキや、兵装担架と増槽を追加で取り付けた重武装型などが現れるなど、前線では様々な改修機が生まれたことも特筆すべき内容だろう。




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