宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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第百九話 凄乃皇と改造と

「XGシリーズb型改め凄乃皇弐型、最終調整完了だァ!」

 

帝国の国連軍基地にて改修が進められていたXGシリーズの一機は、秋津島開発の技師達によって完璧とも言える状態に仕上げられていた。

 

「武装は荷電粒子砲だけ、なんとも潔い機体だな」

 

「社長まで引っ張り出されるとは思いませんでしたが、何はともあれお疲れ様です」

 

「機体の制御系は色々と刷新されたからな、まあ作ったヤツが一番詳しいってことだよ」

 

原作において佐渡ヶ島で散った凄乃皇は、大海を超えてはるばるインド亜大陸まで投入されることとなった。それも数機の00ユニットを載せた状態で、炉も中身も入れ替えてだ。

 

「00ユニット3機による並列処理で機体の制御を万全にするとありますが、性能から見て一機でも充分に演算能力が足りるあたり化け物ですね」

 

「リーディングによるBETAへの諜報活動も可能だ、第三計画様々だな」

 

直轄部隊であるA-01連隊で周囲を固めつつ、荷電粒子砲による砲撃を敢行する。戦力も後方支援も万全だ、後は予想外の展開に対応出来る柔軟性を確保しておく程度だろうか。

 

「00ユニットの最終調整、調律だとかはもう大丈夫なんですか?」

 

「量子頭脳とかいう既存の常識が通用しない代物だから少し苦労したが、まあ生体コンピュータの知見が役に立ったな」

 

SPFSSと同様の技術を使い、人工的に作り出した擬似人格にて動作させる。対BETA諜報インターフェースとして充分な性能を持ち、特に安定性は原作の比ではない。

 

「元々は人の人格をそのまま転用する気だったらしいが、AIでも問題なく動作するって分かったのは本当に良かったよ」

 

「ちょ、ちょっと待ってください」

 

香月博士の研究ではより良い確率世界を手繰り寄せるという特殊な能力が必要とされるため、人間の人格データが必要だとされて来た。そのため社長も候補の一人だったりしたのだが、彼はそれを断り早期完成と安定性の向上という観点からAIの採用を進めた。

 

彼自身が持つ過去未来全ての情報へのアクセス権という唯一無二の力を駆使した結果、AIであっても人間と同レベルの手繰り寄せ能力を得ることに成功したらしい。原理も何も分からないが、こうなると人とAIの境目はどこになるのだろうか。

 

「アレに人を入れる気だったんですか?」

 

「今こそアンドロイドにしか見えない形だが、計画当初は人間の姿形そっくりそのままに作る予定だったんだよ」

 

00ユニットに人の人格を入れるのはまだいいのだが、自身が完全に人ではないと自覚した際に面倒なことになる。人格データがぶっ壊れ、人として機能しなくなるのである。

 

「精神の状態も冷媒の劣化に直結することが分かったし、人を使っても良いことはないってことになったんだ」

 

「いやその、かなり人の道を外れた技術の研究をしてませんかコレ」

 

「…うんまあ、行った実験の内容は伏せるよ」

 

色々とあったが00ユニットの人格も完成し、身体も万全の状態であるのは確かだ。既に3機が用意されているのを見て分かる通り、ある程度の量産体制も組まれている。

 

「これで第五世代機のメインコンピュータも用意出来るって寸法だ」

 

「冷媒に使うODLという物質の調達に難があると聞きましたが、そこは大丈夫なんですか?」

 

「なんとかした、人工ODLの実用化は不可能じゃあなかったしな」

 

「最近の特許周りはそれですか」

 

未来で00ユニットが大量に存在することを知っていたので色々と検索してみた結果、必要な技術を出力することが出来た。現状では1gあたりの単価が触媒の関係でプラチナを超えていたりと、滅茶苦茶な高コストなのは辛いところだ。

 

「第四計画で湯水のように使うお陰で貯めてたG元素がガンガン減ってくのは辛いな」

 

「目減りした予算見た帝国と国連の人が揃って泡吹いてましたけど」

 

「地下に出来たODLの濾過装置と製造機は凄い大きさになったしな、でもまあ予算は有効活用してるよ」

 

「それは確かにそうですね、本当にこの世にない物を片っ端から作るっていう実績は積み重ね続けてますし」

 

報告書に誰もが一度目を擦るような文字が羅列され、それが毎回続くのは第四計画くらいだろう。すげぇ兵器やら設備やらを作ると言い出した次の報告書で完成したと言って来るのだ、心臓が持たない。

 

「やり過ぎて本当かどうか疑われましたけど、もう何人確認しに来たかもう覚えてませんよ」

 

「仕方ないだろ、マジで作ってんだからさ」

 

「だからタチ悪いんですよ」

 

この開発スピードに慣れている帝国は兎も角、国連は完全に目を回してしまったようだ。最近はやっと眩暈がする程度になったらしいが、基地の地下は地上の数十倍の速度で時が流れているのではないかと真剣な眼差しで聞かれた際に社長は吹き出した。

 

「感覚が麻痺してましたけど、香月博士も凄い人ですよね」

 

「俺よりよっぽど凄いし、立派な人だぞ」

 

「社長は気に入った人に対しては全肯定マシーンになりますよね…」

 

「ファンだからな、ファナティックを略してファン」

 

「自らを熱狂的だと形容するのは立場ある人間としてどうなんですか」

 

社長がある意味狂っているのは、今に始まったことではないのだ。




最近の趣味は和太鼓の演奏を聴くこと。
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