宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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ソ連が分断されるー!

追記
主人公達の年齢を計算に入れ忘れてました、修正しておきます。


第十三話 BETA大攻勢と連隊が持ち帰った物

ヨーロッパは前線と化しつつあるためか、雰囲気は後方国である日本とは少し違うように感じられた。隼の工場建設予定地、出資額、技術提供の有無など双方の政府関係者を交えつつ議論は行われた。

 

結果として欧州が欲していた技術提供に関しては、米国が現在行なっている他国への戦術機開発技術移転を利用した日本の曙計画の終了後、改めて議論するという先延ばしに近い形で終了した。

工場は既に建設班が着工のため準備を行なっているが、日本政府に国外に長く留まるのは良くないと釘を刺されたので直ぐにでも帰らなければ。

 

「向こうのライセンス生産機、見たかったんだがなぁ」

 

「ご自分の立場を理解されてます?」

 

部下に引きずられ、宇宙経由で日本に帰ることになった。

 

 

蜻蛉返りして戻ってきた帝国本社に、帝国からあるものが持ち込まれていた。それはコンピュータ用の記憶媒体だったが、国連軍で使用されているものと同型だ。

中身はそう、ハイヴ内の地下茎構造を記録したデータだ。後世でヴォールクデータと呼ばれるそれは、今目の前にあった。

 

「これがハイヴ内の構造か、アリの巣みたいだな」

 

「根を張るように広がっていますね、そこら中にBETAが張り付いてます」

 

360°から襲ってくるBETAと戦うのは地上戦と全く違う状況だ、俯角の取れない戦車はお荷物にしかならないだろう。やはりハイヴ内を攻略できるのは戦術機しかない、そう確信した。

 

「この状況下で隼は運用可能か、とは中々な質問だな」

 

「仕方ないですよ、いつ日本の近くにハイヴが建設されるか分からないんですから」

 

帝国軍は将来的にハイヴ攻略が差し迫る事態になることを想定しているのだろうか、まあ今の戦況を見るに仕方ないとも言える。現在ユーラシア大陸では原作通りに起きてしまったBETAの大侵攻が確認され、パレオロゴス作戦で疲弊した戦力ではBETAを止めることが出来ていない。

しかし軌道爆撃が間に合ったことで重金属雲の広域展開に成功、辛うじて撤退と防衛線の再構築に成功した。しかしソ連は東西に分断され、また土地が失われてしまったのは紛れもない事実だ。

 

「ハイヴ攻略において発生する比較的近距離での戦闘において隼は高い適性を持つため、F-4以上のハイヴ内戦闘能力を持つ…ってとこだな」

 

「問題は最適化が進むF-4と比べて、今の技術じゃ改良出来るところが少なくて全然安くならないところですかね」

 

「機密保持のためとはいえ、ほぼ全てが独自の部品だからなあ…」

 

OSのアップデートにより、隼の評価は帝国内で向上し続けている。日本仕様に改修されたF-4J、撃震も隼製造時に培われた装甲の一体成型技術により部品点数が減少し、メンテナンス性の向上と価格の低下が確認された。

 

「国外でも作られてるし、米国でも大量生産中だから部品の輸入も出来ないわけじゃないからな」

 

特に米国からは多くの部品を輸入しているらしい、輸出の優先順位を下げたことを引き合いに出して引っ張ってきたとかなんとか聞いた。撃震独自の部品もあるが、それでも設計通りの部品の方が多いのだ。

 

「戦術機の数も増えてきたな、斯衛仕様の試作機も完成しそうだし」

 

「ええ、日本にBETAが来たとしても追い返せるレベルになりつつあると感じますね」

 

「ああ、絶対に日本は…」

 

何かが頭に引っかかる、何か忘れているような。そうだ、横浜ハイヴ攻略作戦だ。あれが起きたからこそ00ユニットが生まれ、主人公がこの世界に来ることになったのだから。

 

 

【挿絵表示】

 

 

この場合どうなるのだろうか、何事もなく別の世界線として歩むことが出来るのだろうか。

それとも何かの因果による干渉を受けたりするのだろうか、この世界がマブラヴの世界である以上油断は出来ない。

 

「社長、どうしたんですか急に黙って」

 

「あ、いや、なんでもない」

 

未来においてBETAによって拷問を受け、00ユニットとなってしまう少女はこれから横浜で生まれ育つ筈だ。彼女の幼馴染、この世界の主人公も同様に。もし並行世界の彼らの因果が何かによって流入すれば…

いや、やめよう。因果率量子論には詳しくない、今は目の前のことに集中すべきだ。

 

「ちょっとな、さっき会社の前を学生が通っただろ?」

 

「ええ、近場の高校ですかね」

 

「BETAが目前に迫れば徴兵も行われるだろうし、こんな平和な風景は見ることは出来なくなる」

 

対BETA戦における生存率は絶望的だ、既に人類の総数は類を見ない速度で減り続けている。前線国から見た日本はとても平和な状態を維持しているように映るだろう。

 

「日本にBETAは入れさせない、そのためにも頑張らないとと思ってな」

 

原作通りの道など歩ませない、学生連中は戦地など行かずに勉学に励んでいればいいのだ。人並みに青春を送り、学校も軍事拠点になっていなくて、歩けば女子を引っかけてくる原子核のような男とキャッキャウフフ…

出来ていたらいいな、全員国の偉い人たちの娘だから色々大変そうだが。

 

「なんにせよ、矢面に立つのは大人だよな」

 

「なに勝手に腑に落ちたような顔してるんですか、変なこと言ってないで仕事しますよ」




他世界の因果がどのように関与するかはいまだ不明です。

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