「無人機一個連隊、なんとか掻き集められましたね」
「インド亜大陸の大地は厳しいが、まあそこは安心と信頼の秋津島開発さ」
港で社員達が見送るのは大量の輸送船であり、東南アジア諸国を経由しつつ戦場を目指す。原子力や水素など様々なエネルギーが開発され化石燃料の代替が進んではいるものの、今だにその需要は高い。油田地帯がBETAの占領下に置かれれば燃料不足による凍死など更なる犠牲が出ることは確かだ。
「各国が大量の戦術機と機甲戦力を抱えての参戦です、恐らくボパールハイヴのG元素を押さえる気かと」
「そこは帝国に譲ってもらうさ、着陸ユニットから採掘可能なG元素はまだある」
「それで納得するでしょうか」
「ハイヴの中で内ゲバなんて馬鹿みたいな真似してみろ、全ての取引を中断してあらゆる資本を引き上げさせてやる」
凄乃皇も新型艦も既に飛び立った、急に場所が空いた地下の格納庫はなんだか寂しく感じるほどだ。基地の防衛のため残された戦力は少ないが、その分の穴を埋めるため帝国軍が来てくれている。
「後は待つだけか、今のうちから受け入れ準備を進めよう」
「了解ですと言いたいところですが、社長は基地の陣頭指揮よりも本社の方でやることが山積みですよね?」
「…他にもまあ、色々あるんだけどね」
ー
国連呼称甲13号の攻略を目的とした甲13号作戦だったが、その主体となるのは国連軍だった。帝国軍は中華戦線への派兵により大きな戦力を動かせず浮遊艦と疾風を中心とした砲撃部隊が主体であり、東南アジア各国は後方支援に専念していたため前線に多くの戦力を割けなかった。
「国連軍の主力部隊はTYPE-97ブリザード、吹雪を中心とした第三世代機で構成されています。数の上での主力はF-15Cですが、予備戦力として例の無人機部隊が待機しています」
「…大盤振る舞いね、社長」
『それほどでもない、あと一年あれば無人機を倍は用意出来たんですがね』
設営された指揮所に居たのは香月博士と、社長が遠隔操作する機械歩兵だった。国連軍でも広く運用されている無人兵器だが、こうして要人が遠隔で作戦に参加するために使われるのは世界初ではないだろうか。
「ML機関搭載兵器の専門家として、有事の際にはよろしくお願い致しますわ」
『任せて下さい』
あの社長が指揮所に居るという事実に皆が驚いてはいたが、香月博士と数回の会話をした後は黙っているのを見て少し落ち着きを取り戻した。
「作戦の第一段階に移行、目標である甲13号ボパールハイヴ付近に存在するBETAを砲撃により殲滅する!」
「A-02及びJNW01は砲撃位置に前進。直掩のA-01、エコー及びウィスキー部隊は重力場との干渉に注意せよ」
「BETA群第一陣接近中。大隊規模、光線級の存在を確認」
「本当に砲撃は最低限でいいんだろうな、性能を信じる他無いが」
スワラージ作戦と同規模かそれ以上の作戦であるのにも関わらず、砲撃の密度は高くない。ハイヴの地中深くから釣り出されて来るBETAの殲滅が作戦成功の鍵であり、最初から弾薬を今まで通りの使い方で消費するのは浪費に等しい。
「荷電粒子砲の発射準備進行中、重金属雲発生後も各艦とのデータリンクに支障なし」
「敵が射程に入り次第砲撃が開始される、戦術機部隊は砲撃時後方に発生する重力場に注意せよ」
宙に浮く二隻は砲門を開き、地平線を埋め尽くすBETAに向けて水素原子の加速を始めた。G元素を利用した荷電粒子砲を持つ凄乃皇弐型は秋津島開発の手で行われた改造のお陰もあり、小柄ながらも浮遊艦と同等の火力を有している。
「ハイヴ突入までに大きな損害を被ることは許されない、新戦力ありきの戦術がどこまで通じるかだが…」
国連軍はML機関搭載兵器を運用したことが無い、今回の作戦立案には帝国軍が大きく関わっているとも聴く。彼らにとって未知の戦力が結果を出さなければこの後が苦しい、だが少なくともこの中で二人は勝利を確信していた。
『当たりましたね、いい火力だ』
「ええ」
刹那、大隊規模のBETAが消滅した。続いて接近する敵集団も射程に入り次第塵と化し、直掩の部隊はすり抜けて来た小規模のBETAを疾風が撃ち抜くだけのワンサイドゲームだ。
「…我が方の被害無し、それでいて敵集団の殲滅に成功?」
「そのまま前進、予定通りに敵集団の殲滅を続行!」
武装を有する浮遊艦が大口径の超電磁砲にて遠距離の取りこぼしを撃ち抜きつつ、発射準備が整った凄乃皇弐型が敵集団の中央に主砲を放つ。重力場に巻き込まれぬよう機体の動作をある程度自動操縦に委ねている戦術機達だったが、激戦になるものだと考えていた前哨戦に殆ど出番が無いのを見て唖然としていた。
「進撃速度は予定より30%ほど上回っています、どうされますか」
「…帝国軍の言う通りだったか、このままで問題ない」
厄介な重光線級対策としてハイヴ周辺には既に重金属雲が展開されていたが、それをBETAごと吹き飛ばして二隻は先へと進む。直掩の機体は重力制御によりある程度浮遊させられているため燃料の消費は最低限、補給は一度で済みそうだ。
「前代未聞だな、これは」
ポパールハイヴは目の前だ、作戦の要は国連軍が想定していた以上の働きをして見せた。特に弐型を第四計画が所持、運用しているという事実は非常に大きなものになるだろう。
「香月博士、貴女は対BETA戦略を書き換えるに足る存在を作り上げたようだ」
「隣にもう一隻居るのが笑えるところですわ、本当に規格外ね」
『00ユニット程の演算能力は無いので防御力は劣りますが、火力の投射能力だけはかなりのものかと』
辺り一帯のBETAを殲滅することが出来れば、砲撃部隊を前進させられる。そして次に始まるのは大量に存在するであろうBETAとの根気比べ、奴らの物量を捌き切れるかが焦点だ。
『また人類の歴史に名を残しましたね、今度は科学に続いて軍事分野でもビッグネームだ』
「貴方が居れば少なくとも人類は滅びそうもない、光栄ですわ」
『戦後は是非とも我が社に来ていただきた…おっと、失礼』
勧誘をするような場ではない、社長は機体のマイク入力を切ってまた暫く黙ることにした。
評価待ってるぜ、もうそろそろ完結するしね。
200話超えたらまあ…その時はその時ってことで。