宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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第百十一話 ハイヴ解体作業

「どんだけ撃つんだよコイツは!」

 

彼ら戦術機部隊の体感ではゆっくりと、しかしBETA占領地であることを考えると異様な速度で殲滅と前進を繰り返しているのはハイヴ攻略部隊だ。二隻の船より前に展開した彼らだが、砲撃の余波でボロボロになったBETAにトドメを刺す作業を繰り返していた。

 

「黙って撃て、撃つ相手はいつもより少ないがな」

 

「先月の間引きより楽なハイヴ攻略ってなんだよ、俺達が撃つ前にエレクトロでマグネティックなランチャーが吹っ飛ばして下さるしよぉ」

 

帝国軍の疾風及び疾風改率いる長距離狙撃部隊は光線属種を撃破することを主任務としていたが、厄介な突撃級や要塞級には限定的な対処を行なっていた。前衛を務める国連軍の吹雪は持ち前の近接格闘戦能力で難なくBETAを撃破しており、被害は非常に少ない。

 

『回収機が飛行します、該当地域の飛行には注意してください』

 

「何処の馬鹿が堕とされたんだ?」

 

『片腕を喪失したようです、簡易ドックにて処置を行います』

 

「了解、ぶつからないように背中を見張っててくれ」

 

最近実戦投入が始まったらしい無人戦術機の分隊が部隊の間をすり抜けるように飛んでいき、損傷した機体に肩を貸しながら戻って来る。彼らが目指すのはML機関搭載兵器の一つ、凄乃皇弐型である。

 

『損傷機回収完了、着艦許可を』

 

『着艦を許可、二番ハンガーに機体を移送して下さい』

 

『了解』

 

凄乃皇弐型は改造する前と同じく武装は荷電粒子砲のみ、だが他の物が付け足されていないわけではない。その積載量と重力制御能力による安定性を見た秋津島開発の手により、限定的ではあるものの空母としての側面を追加されていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

『損傷部位の切り離し完了、喪失部の再出力を』

 

『プリンターへの電力及び材料の供給に問題無し、左腕部の再出力を実行』

 

幸い腕以外に大きな損傷は無かったようで、作り直すのは腕だけで済んだようだ。ハンガーに固定された機体は左腕の付け根に巨大なロボットアームが取り付き、その場で失った腕を作り上げていく。

 

『出力完了まで凡そ45分、燃料補給と簡易整備を行なってください』

 

00ユニットの管制により戦術機達は次々と戦線に復帰、積み込んだ予備の武装を抱えた補給機が共に飛び立っていく。

 

『次回の砲撃は3分後です、周囲の機体は自機の座標に注意して下さい』

 

企業製だからか知らないが軍用機としては柔らかすぎる物腰で周囲に警告がなされ、機体各所に増設されたスピーカーから警告音が鳴り響く。砲撃に際しても衝撃を完全に相殺するためプリンタによる出力にも影響は無い、初の実戦投入とは思えない安定感だ。

 

「あの、俺はどうすれば」

 

『休憩していて下さい、焦った結果死ぬところだったんですから』

 

「…そうするよ」

 

片腕を作り直されている機体の衛士は同乗していたSPFSSに諭された上、彼女から手渡されたボトルを受け取った。汗をかいていたことをバイタルデータから知ったのだろう、気が利く相棒だ。

 

『我々は足を止めることなく進軍中、あと数キロでハイヴの地表構造物が射程に入ります』

 

「てことはBETAの光線属種もこっちを捉えるわけか」

 

『恐らく現在の敵攻撃パターンを見る限りこちらのA-02の方が狙われやすいようです、下手に動くより大人しく修理を待つのが得策かと』

 

「だな、腕がないんじゃあ火力も半減だ」

 

他にも様々な機体が運び込まれては、修理されてもう一度出撃していく。豊富な予備戦力を活かし、少しの損傷でも後方に下げては修理を行わせているようだ。

 

『我が方の損耗率は一割以下、有人機の被害に絞れば更に下がります』

 

「ハイヴともなれば陽動やら掃討やらで数割死ぬのが常識だったんじゃあ?」

 

『それは我々が常識を塗り替える前の記録です、今日この日の戦果を以て全てのハイヴ攻略戦術は正式に過去のものとなりますから』

 

万全の後方支援と正確無比な射撃と連携により、光線属種はその性能を活かせぬまま消滅していく。もし照射されたとしてもラザフォード場がそれを難み、すぐさま浮遊艦の超電磁砲がカウンターとして叩き込まれる。

 

『補給機による空中給油に支障なし、速度を維持しつつ進軍可能』

 

『現環境評価に変動なし、無人機間ネットワークによる戦域把握は問題なく機能していると判断する』

 

『荷電粒子砲への負荷は許容範囲内、砲撃を続行』

 

「この空中要塞、人が操作してないんだもんなぁ…」

 

ハイヴ周辺の重光線級が二隻を捉えるが、既に発射準備が完了していた荷電粒子砲の方が先に放たれる。ハイヴの地表構造物の上半分を巻き込みながら、師団規模のBETAが消滅した。

 

「地面が抉れてる、車輌の進軍に支障が出そうだな」

 

『そんなことまで気にするとは、緊張は解れたようですね』

 

「そうだな、腕が直り次第前線に戻ろう」

 

良い意味で緊張感が無い、有りすぎず無さすぎないとでも言うべきだろうか。戦力の損耗は抑えられ、決死の突撃を行う必要もなく淡々と作戦は進んでいる。これこそ進歩し続ける人間が遂にBETAを突き放したことの証明に他ならない、既に我々は刈り取られる資源では無いのだ。




多数の評価ありがとうございます、滅茶苦茶嬉しい。
総合評価もなんか数百点上がってましたし、日刊ランキングにもまたお邪魔させて貰っていて感謝感激。

完結したら宇宙開発企業デイアフター編の構想練るので、これからもよろしくお願いします。
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