ハイヴから湧いて出た数万のBETAが荷電粒子砲で灰燼と化す、この光景は既に五度目だ。二隻のML機関搭載兵器は交互に砲撃を行い、戦域に存在する全てのBETA相手に一方的な攻撃を行っていた。
「二隻の損傷は?」
「凄乃皇弐型の砲撃準備中に重光線級の初期照射を受け前面装甲に被害が出ています、ですが戦闘続行に支障なし」
「よろしい、このまま敵個体数を減らし突入部隊の障害を排除する」
砲撃を行う二隻に全てのBETAは釘付けだ、ハイヴ突入のための準備は着々と進んでいる。今回はオリジナルハイヴ攻略のために有人の軌道降下部隊は温存されており、宇宙艦隊から行われるのは軌道爆撃と補給コンテナの投下のみだが密度は過去よりも増している。
「本来であれば甚大な被害を出しつつ囮部隊が陽動を行いBETAを引き剥がすのだがな、そんな必要も無いとは」
既に攻撃部隊は足を止め、防御陣地をある程度構築した。ハイヴ近辺ともなると地下から湧き出すBETAも必然的に増加し、接近戦の機会も増えつつある。その中で投下された補給コンテナを確保しつつ、補給機と合わせて各部隊へ物資を分配するのは少々困難だ。
「補給は予定より遅れているようですが、遅延は問題の無い範囲です」
「凄乃皇二型の防衛は国連軍のウィスキー部隊が行う、A-01は予定通り突入準備を進めるよう通達を」
「了解、輸送機を前へ!」
ハイヴ攻略は幾つかの段階に分かれているが、地上の制圧が最初の壁である。大量のBETA相手に砲撃や軌道爆撃を浴びせ、更にハイヴから敵を引き剥がす必要がある。その際に行われる砲撃は苛烈極まりなく、一国家が備蓄する弾薬を使い切るとまで言われるほどだ。
「既に殆どの障害は乗り越えた、砲撃部隊の出番がここまで後になるとは思いもしなかっただろうな」
しかし今回は荷電粒子砲が二門存在し、ハイヴ近辺のBETAは纏めて吹っ飛ばした。つまり砲撃部隊は一国家分の弾薬を温存しており、前進した部隊に守られつつ前進したことでハイヴを完全に射程内へと収めている。
「A-01の搭載が終わり次第二隻の砲撃は中止、砲兵隊での攻撃に切り替える」
「既に設営は完了したとのことです、護衛の機甲部隊も展開をほぼ終えました」
荷電粒子砲では突入しようとするA-01を巻き込んでしまうため、ここに来て砲撃部隊の本領発揮というわけだ。大量の弾薬を抱えた彼らは今か今かと砲撃の合図を待っている。
「A-01の搭載完了しました!」
「よろしい、突入及び砲撃を開始せよ」
A-01の戦術機が乗り込んだ輸送機というのは、以前秋津島開発が研究を進めていた地面効果翼機だ。ハイヴの周辺はBETAによって整地され、その機体が苦手とする起伏は無いに等しい。
「囮によって全てのBETAは前面に釘付けになる、その状況を作り出した上で背面から突入部隊を侵入させるとは…」
軌道降下部隊は非常に損耗率が高い、本命であるオリジナルハイヴを前に壊滅させるわけにはいかなかった。その結果考案されたのがこの作戦であり、ML機関搭載兵器が健在でなければ不可能だった行動だ。
「凄乃皇弐型を突入部隊に同行させなくても良かったのでしょうか」
「自衛用の火器を持たない機体を連れて行くのは負担が大きい、それに突入部隊が大量のBETAを引き寄せてしまう」
大量の火器を搭載する予定の凄乃皇四型でもなければ、連れて行くリスクとリターンが合わないのだ。
「既に我々が掃討したBETAの数は13万を超え、予測個体数が正しければハイヴは7割の戦力を失っていると考えられる」
「つまり、我々は掃討戦に移りつつあると」
「BETAがハイヴ陥落の際に目標を破壊する可能性もある、万全を期すためには海王星作戦で見せた撤退行動を起こす前に確保する必要がある」
彼らは確実にハイヴを陥落させ、目標を確保するつもりでいる。他のハイヴからの増援が来る前に攻略を終え、二隻の戦力に頼らない防衛線を構築しなければならない。
「第四計画主導による人類の国土奪還、未だ日和見を続ける国に有無を言わせぬ実績が要る」
正確な軌道爆撃が突入部隊の活路を開き、付近に存在した敵集団を砲兵隊の長距離ロケット弾が吹き飛ばす。BETAの死骸が目立つようになった辺りで戦術機は輸送機から離脱、速度を維持しつつハイヴへの突入を敢行する。
「A-01は全機が不知火と疾風改で構成されている精鋭部隊だ、あの部隊で制圧出来ないのなら諦めるしかなくなるが…」
「その心配は無いようです」
突入部隊は破竹の勢いで奥へと進んでいる、移動するBETAの背後を攻撃出来ているのも大きな要因だろうか。
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第四計画主導によるボパールハイヴ攻略作戦、甲13号作戦は見事成功に終わった。突入部隊にある程度の損害は出たものの、海王星作戦で突入した同規模の三個大隊が被ったものと比べると少ない範囲で収まった。フェイズ5と呼ばれる最大に近いハイヴを攻略出来たことは、第四計画の正当性を大きく示したと言えるだろう。
HI-MAERF計画にて語られた「XGシリーズ実用化の暁には、ハイヴ攻略に必要な戦力は従来の数十分の一になる」という言葉は、机上の空論等ではなく確固たる事実として受け止められた。
第四計画はこの成果と得られたG元素を片手にオリジナルハイヴ攻略を提唱、全ての国々を巻き込んだ一世一代の大作戦が始まろうとしていた。