「これがG元素利用型の2700mm電磁投射砲です」
「君、これは流石に桁がおかしくないか?」
「合ってるんですよ、これが」
基地の地下で最終調整を終えようとしている凄乃皇四型だったが、それを確認しに来た国連軍の関係者は手渡された資料を見て冷や汗をかいていた。
「超電磁砲ではないのかね」
「レールガンを和訳するのであれば超電磁砲より電磁投射砲が適切ですから、アレは我が社の商標なんですよ」
「なるほど」
疑問の一つを解消したところで数字の桁が減るわけでもない、搭載されたという武装の数々もそのままだ。やはり見間違いでは無かったかと諦めつつ、説明の続きをするよう促した。
「搭載武装として両腕に2700mm電磁投射砲を計二門、120mm電磁投射砲を八門、36mm機関砲を十二門装備しています」
「…ほ、ほう」
「G元素を使用しているため砲身寿命が従来品と比べて数十倍ありまして、発射間隔を余程高めなければ発射し続けることも可能です」
「規格外だな、いつものことだが」
既に弾薬が運び込まれ始めており、作業員達がコンテナから電磁投射砲専用の弾頭を機体の弾薬庫へと移している。
「また機体内部に装備されたVLSに変更はありません、あくまでこの機体はHI-MAERF計画当時に設計されたXG-70dの余剰空間に火器を詰め込んだだけですので」
「詰め込んだ物が物だろう、元々この機体は36mm機関砲を中心とした自衛用の通常火器しか搭載してなかった筈だ」
「主機も載せ替えて発電量も安定しましたし、両腕や頭部に設けられた空間を鑑みると将来的な搭載は想定していたようですので」
00ユニットの実用化によりML機関搭載兵器は巨大な電算機を積まずとも運用出来る時代になった、XGシリーズに時代が追いついたとも言える。
「我が社の浮遊艦は00ユニットの搭載を前提としていないため大型で非常に堅牢な設計にせざるを得ませんでしたが、この機体は遥かに合理的です」
「随分と持ち上げるのだな、てっきり時代遅れの代物だとでも言うかと思ったが」
「社長が御執心だったので気になったんですよ。未来に託した機体と現状で足掻いた機体の差ですかね」
技術者としての矜持があるのだろう、米国製の欠陥機とすら言われた機体に対して秋津島開発の社員達は大きな敬意を抱いていた。
「そして目玉となる追加装備として、この自在型追従装甲が挙げられます」
「…戦術機が使う盾のようなものか?」
「重力制御により稼働、ラザフォードフィールドに次ぐ第二の防御手段として運用されます」
ML機関によって機体自身が空を飛ぶように、機体以外も宙に浮かせることは不可能ではない。機体の周囲を覆う重力場との干渉を考えると必要な演算能力はかなりのものだが、00ユニットを三機並列で稼働させることを考えれば大きな問題ではなかった。
「つまりラザフォード場を突破される可能性があると、そう考えているわけか」
「BETAがG元素を生産する能力を持っている以上対策は必要だということになりまして、武装は搭載していませんがその分非常に堅牢かつ軽量です」
社長は原作においてオリジナルハイヴの最奥に鎮座するBETAの司令塔、あ号標的が見せたラザフォード場の貫通攻撃を非常に警戒していた。触手による機体や人体に対する侵食とそれに伴うコントロールの奪取は作戦失敗に直結し得るものだ、対策を練らない訳がない。
「念には念を、というわけか」
「最終的に頼りになるのは物理的な装甲ですから、複雑な武装に比べて実装も容易ですし」
「いや、こんな船の側面を引き剥がして来たかのような板をすぐさま用意出来ることも充分難しいと思うが」
「大気圏突入用の耐熱シールドの裏に炭素系素材の装甲を貼り付けたんです、重光線級相手にもまあ撃ち合えるかと」
流石は宇宙開発も行う大企業、この手の資材には困らないらしい。既に規格外となった機体だが、視察に来た彼はまだ資料のページが余っていることに気が付いた。
「…まさか」
めくった先にあったのは凄乃皇四型のための追加装備、それについての資料だった。確かに時間が許す限り改修を続けるとは聞いていたが、弐型の背部母艦ユニットと同規模の装備を作り上げていたとは思わなかった彼は、一度眼鏡を外して目元の汗を拭った。
「この追加装備というのは何処にあるんだね、どういった物なのか気になる」
「ML機関です、双発にするので」
「は?」
凄乃皇四型が燃料を馬鹿みたいに消費する予定なのはこれに尽きる、幾ら燃費の良い秋津島製の主機であっても大型化したものを二つ載せるのだ。
「ま、待て待て待て!双発!?」
「ラザフォード場による防御を二重に行えるということは非常に有意義なんですよ、特に荷電粒子砲を運用するのであれば」
「…きちんとした理由があるんだな、聞こうじゃないか」
「荷電粒子砲の発射時にラザフォード場を利用する必要があり、光線の防御が不可能になるのはご存知だと思いますが」
「ああ、だからこそ甲13号作戦では二隻用意したと聞いている」
ラザフォード場による防御も絶対ではない、荷電粒子砲を放つ際に粒子収束や反動相殺にその力を使う必要があるのだ。その場合生成できるラザフォード場の殆どが主砲に割かれ、飛んでいるのがやっとの状態になってしまう。
「ラザフォード場の生成能力が不足しているのであれば、まあ増やしてしまえという話になりまして。これにより主砲発射時の隙を無くしつつ、追加装甲などの重力制御も容易になっています」
「それで双発にするというのか、理にかなっているのかもしれんが…」
「00ユニットも追加で載せて、六機での並列稼働となります」
「君らに加減って物はないのか?」
「予算の範囲内で作れるように加減してますよ?」
これでも加減していたのかと呆れる彼だが、確かに予算が幾らでもあればXGシリーズの改修などは行わずに別の機体を新造しているだろう。それも化け物のような装備を大量に取り付けてだ。
「追加装備に背負う形で載せているこの馬鹿デカい筒には何が入ってるんだね、大陸間弾道ミサイルと言われても驚かないが」
「G弾です」
「は?」
眼鏡がずり落ちた、こんなことを聞かされればそうもなる。
「加害範囲を意図的に小さく直線的にしたG弾で、社長曰く重力子放射線射出装置と呼称するとのことで」
「…あぁ、うん」
「空間を削り取るように全ての物体を貫通するので、最悪の場合はこれで侵攻ルートをこじ開けるそうです」
元々のG弾のように大きな加害範囲は持たず、自身の周囲数十メートルを削り取り分子を引き裂きながら筒状の穴を開ける特殊兵器だ。規模が小さいため重力異常が発生する可能性は殆どない、複数発を同時に使用しない限りだが。
「過激派がまとめて粛清されたG弾推進派が新たに提唱した低負荷G弾に関する研究が元になっていますが、実用化したのは皮肉にも我々だけです」
「君達が人類の味方で、私は本当に嬉しいよ」
凄乃皇四型は大量の武器弾薬を抱え、ハイヴへと殴り込む準備を着々と進めていた。基地への襲撃を警戒する社長は大量の無人機や防衛設備を優先的に配備させており、数々の試作機や凄乃皇二型の予備機すら待機しているという状態だ。
この機体が飛び立つ時がオリジナルハイヴ陥落の日である、この場に居る誰もが確信していた。
凄乃皇四型に関してはラフを活動報告に置いておきました。