宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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燕と隼

建造中の堤防にて発生した暴走事件を解決して帰還しようとしていたMMU対策課だったが、沿岸部にて起きた事件を見てほんの少し留まることを決めていた。第一分隊と第二分隊が共に出動したことで、この場には4機の隼がある。

 

「輸送船が航路を逸脱してると聞きましたが、なんだが騒がしいにも程がありますね」

 

「空気が良くないんだよ、この雰囲気は意図的に作り出されたものだ」

 

「空気?」

 

以前の暴走事件から被害は広がっており、暴れるのはMMUに留まらない。指向性タンパクに関する報道も盛んになっており、国民は疑心暗鬼になりつつある。秋津島開発が軍向けに生産していた指向性タンパク検知キットが民間に卸されるも、連日品切れの状態だ。

 

「あの船、碌でもないものを積んできたね」

 

「こちら第二分隊の三番機、望遠での映像出せます」

 

「頼んだよ」

 

拿捕に乗り出した巡視船が接近するも、見るからに大きな輸送船は進路を変えない。実力行使に出るしかないと思われたが、輸送船の甲板から何やら煙が噴き出した。

 

「…煙?」

 

『待ってください、識別機能が反応してます』

 

響き渡るエンジン音と派手な噴射炎、そしてそれと共に飛び上がった比較的小柄な人型。ソ連製の小型戦術機、燕の名を冠したMiG-29ラーストチカだ。

 

「機影は4機、識別結果は…MiG-29!?」

 

三番機の手に握られた支援突撃砲のスコープ越しに現れた存在は紛れもなく実戦仕様の戦術機だ、それを確認した衛士は驚きと共に機体名を叫んだ。

 

「戦術機まで持ち出したのかよ!」

 

「第二世代機か、分隊長は機体に戻って」

 

「了解!」

 

巡視船が機関砲にて応戦するが、既に接近された戦術機相手にはどうしようもない。放たれた36mm劣化ウラン弾は巡視船の装甲を紙屑同然に突き破り、あっという間に致命傷を与えてしまった。

 

「不味いね、本当に不味い」

 

『また甲板から煙が出た、何か来ます』

 

「一体どれだけの仕込みをして来たんだ?」

 

飛来したのはロケットブースターを装着した補給コンテナであり、そのまま街の方へと飛び去った。切り離されたブースターは市街地にも落下するだろう、よくもまあやってくれたものだ。

 

『第一分隊の一番機と二番機は動けます、街に向かった敵性戦術機鎮圧の指示を!』

 

「敵の狙いを探りつつ動く、各員は武装の再確認を」

 

戦術機の突撃砲相手には心許ない拳銃から弾倉を引き抜き目視で確認、機体に装備された予備弾倉もあることを再度確かめる。

 

「装填中の弾倉一つと予備二つでどこまでやれるか…」

 

「相手は何倍も抱えて飛んできてるんでしょ?」

 

「装甲はこっちの方が分厚いんだ、盾を上手く使うしかない」

 

前衛を務める第一分隊には新たな兵装として、小型の盾が装備されていた。元々左腕部に追加装甲があるものの、機体の胸部を丸々収められるというのは安心感が段違いだ。

 

「三番機、確か武器は実戦仕様とほぼ変わらないんだったよな?」

 

「ああ、だが単発での砲撃しか出来ない」

 

「それならトリガーをSPFSSに連打してもらえ、最近発見した裏技だ!」

 

「何を試してるんだお前は!?」

 

アンドロイドのマニピュレーターなら突撃砲の発射レートを再現することくらいは可能だ、滅茶苦茶な話だが可能なものは可能なのである。

 

「警察無線はどうなってます?」

 

「混乱を極めてるね、敵機が複数居るお陰で何を信じて良いのか分からない。でも戦術機が出て来た以上、帝国軍の戦術機部隊がすぐにでも動く筈…」

 

対策課の面々がが沿岸部からの移動を進める中、帝国軍の即応部隊と思わしき戦術機が街の上空に現れた。中隊規模の彼らは部隊を二つに分け、船と街のそれぞれに対応することにしたようだ。

 

「不知火と秋津島の無人機か、あの機体ならMiGの第二世代機に勝てる!」

 

「疾風も居ます、本気で潰しに来てますよ」

 

「そう簡単に鎮圧されるような作戦を立てては来ない筈、警戒を怠らないように…」

 

警察の装備としては例外的に広域データリンクと接続している対策課の戦術機は、今までで殆ど聞いたことがない警告音を耳にした。訓練課程で脱落した三番機の衛士以外は知る由もないだろう。

 

「…レーザー?」

 

輸送船から放たれた光線が戦術機に突き刺さり、それに対して割り込んだ機体が数秒後に爆散した。空中で遮蔽になるものが無かったのが原因だが、あまりに一瞬の光景だった。

 

「BETAだ、アイツら船にBETAを載せてやがる!」

 

「無人機が盾になったのか、残骸が墜落するぞ」

 

それを見て黙っている帝国軍ではない、既に超電磁砲を有する疾風が輸送船を照準の中に収めている。光線級の再発射に要する時間は12秒、疾風の自動化された砲撃システムは1秒もかからずに引き金を引いた。

 

「滅茶苦茶だ、俺達の出る幕はもうないんじゃあ!?」

 

「きっとある、四番機はUAVを展開!」

 

「了解、何を探りますか」

 

「戦術機は軍に任せる、飛来した補給コンテナを探してほしい」

 

補給コンテナの大きさは戦術機に匹敵する、内部に跳躍ユニットの燃料を積んでいるのであれば大惨事になる。それに武装以外も固定さえすれば載せることが出来るだろう、警戒する必要がある。

 

「帝国軍とのデータリンクは繋がってます、アイツら街中でドンパチやってますよ!」

 

「そうせざるを得ないとはいえ、これは後が怖いね」

 

「コンテナ、コンテナコンテナ!」

 

「呼んでも出て来ねぇよ、黙って探せェ!」

 

エンジン区画を超電磁砲にて撃ち抜かれた輸送船が軋んで轟音を鳴らし、爆煙が立ち昇る。それを背に赤いパトランプを光らせながら、4機の隼が町を目指して走り続けている。

 

「この状況でも物怖じしないのは良いことかな、武装の使用は自由!」

 

「MMU対策課A小隊、突撃ィー!」

 

「うぉぉぉお!コンテナぁー!」

 

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