宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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真意と混乱と

「東京に侵入した戦術機は一機を除き全機が撃破され、対策課の活躍により損傷の少ない溶解液入りコンテナを鹵獲出来ました。船も制圧したそうですし、救助活動で街は寝る暇も無さそうですね」

 

「最悪ではあるものの、どうにかなったか」

 

「人が居る市街地で戦術機を飛ばしたお陰で大変なことになってますよ、割れたガラスが飛散して大量の被害者が出てます」

 

連日の暴走騒ぎからテロにまで発展し、東京は混乱を極めている。輸送船にBETAが確認されたことから、小型種が送り込まれた可能性を危惧して未だに戦術機部隊は展開されたままだ。

 

「その取り逃がした一機は何処に?」

 

「溶解液にて地下への侵入口を開き、作業区画に逃げ込んだそうです」

 

「…どの区画だ」

 

「首都直下から離れた海の下、都市と堤防を結ぶ鉄道輸送網建設用の区画です」

 

MMUにより採掘中のトンネルに逃げ込んだらしい、非常に厄介なことになった。採掘途中であり安全とは言えず、周囲にもMMUや機材を置くためのスペースがあるため非常に迷いやすい場所だ。

 

「四機で研究施設に突入するつもりだった、だが上手くいかず各個撃破された末にトンネルに逃げ込んだ…とか?」

 

「トンネルの高さは15m、比較的小型のMiG-29は兎も角不知火や疾風では入り込めませんね」

 

「しかも横穴やらなんやらで待ち伏せはやり放題、面倒なことになったな」

 

今後の対応に市民感情がかかっている、秋津島警備の戦力も使って動く必要があるだろう。ここで戦術機に対して大きな嫌悪感を持たれてしまうと、東京近辺の基地に関して問題が出る可能性もある。

 

「溶けて出来た大穴については…」

 

社内の人員をどう動かすかを考えていた二人だが、目の前で鳴り始めた電話を見て社長が受話器に飛び付いた。

 

「菊地だ!」

 

『反応炉に不審者が接触したので射殺したのですが、その…』

 

「大丈夫だ、どんな報告でも信じる」

 

『外見は人そのものなのですが、中身は機械で出来ていて』

 

急なことだったのだろう、電話の向こう側に居るであろう人物が困惑していることが目に見える声色だ。

 

「00ユニットはそっちか…分かった、香月博士に繋いでくれ」

 

「すみません、一体何が」

 

「奴らは帝国の都市を滅茶苦茶にしてくれた訳だが、どうにも陽動だったらしい。国家でも軍隊でもない、俺達秋津島の注意を一時的に引くための攻撃だったということさ」

 

「…それは、その、信じ難いことですが」

 

「香月博士の護衛だけに気を取られていた、制圧後の器材搬入でセキュリティがどうしても緩くなるのは考えれば分かる話だってのに」

 

香月博士の暗殺という最悪の状況を想定するばかりで、原作で起きた出来事を失念していた。テロ組織が人類に大打撃を与える方法など、やり方を選ばないのであれば最悪のものが一つ残っていた。

 

「恐らく侵入者はODLに関する区画に立ち入った筈だ、低軌道の全区域に対してデブリ警報を発令してくれ」

 

「それでは宇宙戦力が支援を行えなくなりますが」

 

「ODLは情報媒体だ!00ユニットは稼働にそれが必要だが定期的に反応炉に繋ぐ必要があってだな、その結果ODLを介して記憶が情報としてBETAの手に渡る!」

 

「つまり?」

 

「BETAが戦略的な行動を取り、今まで行わなかった行動を即座に行うようになる」

 

今まで攻撃されなかった宇宙も標的になり、単純な増えては進むを繰り返していたBETA群は人類の重要拠点をピンポイントで狙ってみせるようになる。その結果原作では前線からは遠いはずの基地が大打撃を受けていた、ご丁寧に人類の切り札を狙ってだ。

 

「凄乃皇四型の最終調整は?!」

 

「済んでます!」

 

「洋上に退避させろ、足場にするプラットフォームが沈んでも構わん!」

 

秋津島開発の宇宙管制システムは即座にデブリ警報を全域に発令、低軌道に存在する艦艇全てが一時宇宙港に帰還した。第四計画の根幹となる帝国内の基地も厳戒態勢、全ての兵器に火が入った。

 

「ああクソッ!最後にやってくれたな畜生!」

 

ーーー

 

反応炉から情報を抜き取り解析するため、制圧されたハイヴに香月博士は滞在していた。あとはオリジナルハイヴを攻略するのみ、そう思っていたところに冷や水を浴びせられた形だ。

 

「…やられたわね、ODLの特性についてはさっき判明したばかりよ」

 

『我々の00ユニットが抜き取った情報に根拠があったのか、これで国連を説得出来る』

 

「BETAの指揮系統が完全なトップダウン型ということが立証されたのは僥倖と言うべきよ、完全に対応される前に司令塔を潰すしかないわ」

 

『凄乃皇四型が幾ら強力でも兵器は兵器、対抗策を編み出される前にというわけか』

 

巨大なオリジナルハイヴを攻略するためには凄乃皇四型の存在が不可欠、だが種が割れれば大破させられた試作艦のような目に遭いかねない。

 

「その凄乃皇四型が狙われるわ、基地の防備はどうなってるの?」

 

『四型は太平洋側の海上プラットフォームに逃した、あるのは弐型の予備機だけだ。ML機関を稼働させれば囮になる、攻められた時はどうにか戦ってもらうしかないな』

 

「逃がせたのはいいけど、どうやってオリジナルハイヴに戦力を投入するつもりなのかは聞きたいところね」

 

『情報が漏洩した以上、軌道降下は狙い撃ちにされるだろうな』

 

「ボパールから行くにしても地形や道中で遭遇するBETAが邪魔よ、宇宙から飛んで向かうにしても辿り着くころには機体が限界だわ」

 

陸路で向かう場合、相当数のレーザー照射を受けるのは目に見えている。かと言って空からでは人類の戦術に対応したBETAの行動が不確定要素として重くのしかかる。

 

『…輸送手段の確立は任せてくれ、猶予は?』

 

「19日よ、今となっては信頼に値しないかもしれないけど」

 

『オリジナルハイヴのマップデータ、解析頼む。こっちはどうにかして攻略作戦が行える準備を50時間で整える』

 

「任せるわ」

 

A-01連隊からML機関搭載兵器、西も東も巻き込んだ類を見ない作戦が始まろうとしていた。作戦名は桜花作戦、その実行は50時間後だ。

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