追記
前半を分離して前話にした上で大幅な加筆を行いました、一つ前の話をご確認下さい。
「というわけでだ、俺達は桜花作戦と横浜基地防衛戦と超重光線級撃破と佐渡ヶ島及び帝国本土防衛を同時に行う必要がある」
馬鹿みたいな過密スケジュールである、文字通り殺人級だ。
「横浜に基地は無いですけど」
「気にするな」
桜花作戦を成功に導いたオルタネイティヴ主人公組と、黎明作戦にてГ標的こと超重光線級を撃破したトータルイクリプスの主人公はまだ衛士ですらない。原作のキャラクター達に期待を寄せるのは不可能だ、もとより戦場に彼らを送るつもりが無かったとはいえ縋るものがないというのは少々怖い。
「あとは地下に逃げやがったMiG-29も捕まえないといけないのか」
「報告が鳴り止みません、対処すべき物はもっと増えますよ」
「吐き気がして来た」
このままでは帝都燃ゆも始まってしまう、あと残すのはクーデターくらいだろうか。それも起きたら気絶する自信が社長にはあった。
数十時間後にオリジナルハイヴ攻略作戦を始めるというのに障害は増えるばかり、BETAの動きも前例がない形で活発化している。母艦級による地下侵攻も相次いで発生しており、欧州の防衛線は既に後退の準備が進められているとも報告が飛んでくる。
「既に各方面でBETAとの交戦が始まっています、アジア戦線に関しては既に一部では突破を許しているとも報告が」
「いやいやいや早い早い」
「師団規模の敵群がBETA支配地域にて入水準備を開始、手出しが出来ない場所から来る気ですね」
「アジアに展開していた帝国軍の派兵組は?」
「最寄りのハイヴから突如現れた超重光線級と遭遇、現在は要塞を使って遅滞戦闘中とのこと。付け加えますと、砲弾の撃墜率は脅威の100%だそうです」
「砲兵部隊が意味を成してないじゃん!」
「私も吐きそうです」
ハイヴから突如姿を現した光線属種の新種、超重光線級により人類の戦力は苦戦を強いられていた。対抗出来るのは超電磁砲を有する疾風くらいのものだが、直接照準射撃を行える距離に辿り着く前にレーザーで焼かれてお陀仏だ。
「無人艦隊による軌道爆撃を試みましたが悉く撃墜され、爆撃自体も全て撃ち落とされました。低軌道に存在する衛星や観測機も全て破壊され、早期警戒網は健在なれど被害は大きな状態です」
「原作でもГ標的は一体だったじゃん!なんで三体も居んだよ!!」
「軌道降下を試みようものなら全機が未帰還に終わりますね」
「無人にした再突入駆逐艦を片っ端から盾にして降下するとかどうだ」
「超重光線級の照射にはまず耐えられませんね、重光線級であれば数秒持ったでしょうが…」
「この状況で陸路しかないのか……」
まあ分かっていたことだ。凄乃皇四型は燃料となるG元素をありったけ詰め込んだ後、全速力でA-01が待つボパールハイヴに向かっている。攻略作戦を成功させるためには軌道戦力は不可欠、だが超重光線級によりそれは阻まれている。
「出現した超重光線級はアジア戦線、欧州戦線、オリジナルハイヴ近辺の三つに展開している。再突入駆逐艦は無理でも巡洋艦や戦艦クラスの船なら重光線級の照射を受けてもコンテナの投下をやり遂げられる可能性はある」
「何をする気ですか」
「まあ聞け。軌道上からオリジナルハイヴへ向かう際の航路では欧州戦線の上を通る、この時の脅威をどうにかするだけならアジアの個体は無視していい」
そして社長が手元の端末を操作すると、ある兵器がディスプレイに投影された。帝国軍が有するML機関搭載兵器である浮遊艦と見慣れない戦術機だ。
「荷電粒子砲の復旧が終わった試作艦を本土の防衛に当て、ボパールにて待機中の艦は刺し違えてでもオリジナルハイヴの超重光線級を撃破してもらう。そして欧州の個体はコイツを使う」
「これってあの、東京の地下で建造中だった試作次世代戦術機ですよね」
「この戦術機と一つだけ余っていた00ユニットの試作機、この二つを使って光線級吶喊を行ってもらう」
「今から欧州にどうやって機体を届けるんですか!」
「ロケットがある、米国の上を通れば光線級は居ないだろ」
「ではその機体に搭乗する衛士は」
「適任が居る、というか主人公が倒した相手には主人公をぶつけるしかない」
東ドイツにて光線級吶喊を幾度となく成功させた現666中隊の隊長、テオドール氏に頼み込むしかない。というかこのままでは最前線であるドイツが陥落するので、成し遂げて貰わないと世界がヤバい。
「欧州の最前線と交流があって良かっただろ?」
「いやかなり一方的な交流じゃありませんでした?」
「そういう形の愛もある」
折角分割されたドイツがどうにか纏まりそうという所まで来たのだ、ここで国ごと滅ぼされるのは許容出来ない。
「無人機はありったけをボパールに送っちまった、あれから生産出来た機体はあるか?」
「戦術機タイプは一個中隊がギリギリですね、攻撃機タイプは投入の機会が無かったので無傷で待機中です」
「そうか、実戦用の装備を持たせて即座投入が可能な形で帝国軍に押し付けておいてくれ」
原作において帝国は防衛に失敗し領土を半分失っているが、その際には天災とでも言うべき悪天候に見舞われていた。だが今は晴天そのもの、気象レーダーを見る限り悪化の傾向は見られない。
「神風はBETAに味方しない、それだけでも良かったな」
「なんというか、今日の社長が話す言葉の中で理解出来ない物が多々があるのですが」
「いいんだよもう、取り繕ってる余裕無いの」
もう何方面作戦なのか考えることも出来ない、出来るのは明確な意思によって動かされたBETAをぶん殴り続けることだけだ。
「法的に許されないことを色々やるけど、全部俺の責任にするから安心してくれ」
「えっ?」
「ML機関乗っけた戦術機ってさ、帝国軍の軍事機密じゃん。アレを外国に打ち上げた挙句東ドイツの衛士に乗ってもらうことが問題にならないと思う?」
「数え役満っすね」
「…ハハッ!」
もう戦いが終わった後は収監されるのみ、そう思えば気が楽だと思い込み始めた社長のブレーキはぶっ壊れた。