宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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光線属種積乱雲

両手で保持する大型レールガンはBETA群を切り裂き、超重光線級の元まで飛燕を導いた。しかし弾薬は底をつき、巨大なドラムマガジンも随分と軽くなってしまった。

 

「替えの弾倉は?」

 

『後方にしかありません、投棄を』

 

飛燕を駆るテオドールは弾切れになった主砲を投げ捨て、肩部の兵装担架から突撃砲を引き抜いた。突撃砲とは言うものの、外見は兎も角中身は小型化されたレールガンだった。

 

『…不味いですね、目標が大き過ぎます』

 

それそのものは優秀だ。

問題は既存の携行火器と比べて遥かに強力な筈の電磁突撃砲を持ってしても、巨大過ぎる超重光線級相手には分が悪いということだ。

 

「どうする!」

 

『衝角攻撃が厄介ですが、ひとまず重力場で逸らしつつ目を潰しましょう。主砲の弾を使い切った以上仕方ありません』

 

これからは長丁場になる、この巨大な化け物の攻撃を掻い潜りながら解体しなければならないのだ。

 

ーーー

ーー

 

「何か落ちてくるぞ?」

 

「A-00の主砲です、あの馬鹿みたいな威力のレールガン!」

 

「避け…いや受け止めろォ!」

 

限界を超えてしまい砲身が割れた突撃砲を投げ捨て、先行していたタイフーンが落ちて来たレールガンを受け止める。その衝撃に関節が悲鳴を上げるものの、実際には中隊支援砲より少し重いくらいだ。

 

「補給部隊に連絡して予備弾倉が無いか聞いてみよう、コイツにここまで運んでもらったんだからな」

 

「確かに使えれば御の字ですけども…後方!」

 

「近寄らせるな!」

 

主砲の構造は超電磁砲とG元素利用型のハイブリッドであり、寿命を伸ばしつつ貴重なG元素の必要量を減らしている。超電磁砲ではない以上ML機関と同様にBETAを誘引してしまうのだが、暴れ回る飛燕が敵の注意を引いてくれていた。

 

「あ、あるそうです!」

 

「運べるか?」

 

「補給機に載せてあるそうで、本来であれば途中で補給を行う予定でしたが敵の密度が高過ぎて不可能だったと言っています」

 

「なら切り開くしかない。話は聞いていたなCP、上申を頼む!」

 

効力を発揮し始めた砲撃のお陰で戦術機部隊は戦力差を縮めつつあり、虎の子の誘導弾を担いだソ連軍機がクラスター弾頭をばら撒いて光線属種を耕していた。大型機の突入も可能な状態になったということだ、絶望的だった戦況は好転しつつある。

 

「我が部隊の戦術機は見ての通り疲労困憊だ。そこで一度補給に戻りつつ荷物を受け取り、再装填したレールガンをA-00に受け渡す」

 

「弾倉以外にも予備の装備があれば抱えて進みましょう、あの化け物の相手をしてくれている機体が居なくなれば負けます」

 

新鋭機である筈のタイフーンは投入前の小綺麗な姿とは打って変わって損傷が目立ち、自慢のブレードエッジ装甲も所々で折れてしまっている。しかしまだ動くのは事実、一度補給に戻るのは合理的な判断だろう。

 

「決まりだな、他の部隊の動きは?」

 

「中隊支援砲や超電磁砲を持った砲撃機が前進、光線級に打撃を与えていますが重金属雲は薄くなる一方です」

 

「何故だ、AL弾は撃ち込まれている筈…」

 

そう言った直後に砲兵隊からの砲撃が敵陣へと降り注ぎ、その半数が撃ち落とされた。しかしよく見ると迎撃された物は全て爆発しており、蒸発して重金属雲を発生させた弾頭は見つからない。

 

「奴らAL弾を見分けられるのか!」

 

「重金属雲を発生させないために撃ち落としていないってことですか!?」

 

「それに奴らが発生させた光線属種積乱雲(レーザークラウド)に重金属雲が巻き込まれる、上昇気流に根こそぎ持っていかれるぞ」

 

光線属種はレーザーを発射する際に大きな熱を発するが、複数の光線属種が一斉に射撃を行った際の莫大な熱量により積乱雲が発生することが知られている。超重光線級が放つ熱量は既存の個体の比ではなく、単体で巨大な積乱雲を発生させることが出来るだろう。

 

「つまり、つまりですよ。このまま速攻しか選択肢は無いと?」

 

「元々不利なのをA-00が単騎でひっくり返したんだ、奴の勢いが削がれれば負ける!」

 

こうして話している間にもBETAは群がってくる、これ以上時間を無駄にするわけにはいかさなそうだ。

 

「話は聞いていたな部隊員共、ひとまず下がるぞ!」

 

タイフーンを有する中隊は付近の味方にその場を任せ、一度後方に下がる。二機がかりでレールガンを抱えながら、飛燕に勝つための一手を託すために飛び立った。

 

ーーー

ーー

 

超重光線級の三つの首は既に二つ失われ、胴体の衝角も格納部分を著しく損傷していた。しかしこれでもまだ脅威であるのは変わりなく、まだ生きている部位を使って即死に繋がる攻撃を放ってくる。

 

『一番の砲身に亀裂確認、二番は電装系の異常により機関部融解』

 

「試作品は試作品か」

 

使えなくなった電磁突撃砲二つを捨て、残った二つを構え直す。腕の下に設けられた補助腕を使って弾倉を交換し、残り少ない武装に危機感を感じつつも戦闘を続行した。

 

「格闘用の武装は無いのか?」

 

『背中にナイフが一つ、無理矢理ですがくくりつけてあります』

 

「分かった」

 

迫り来る衝角攻撃を僅かな機体制御で避けて見せ、伸びた触腕を電磁突撃砲で千切り飛ばす。途中で切断されたことで支えを失った衝角が脱力して落下するのを尻目に、まだ損傷の少ない最後の首目掛けて何発か撃ち込んだ。

 

「機体の揺れが大きくなってやがる!」

 

『戦闘中に受けたレーザー照射の負荷が大きかったようです、稼働時間は更に減ったと考えて良いかと』

 

「火力が足りないんだ、何か手は無いのか?」

 

マトモな装甲が施されていない試作機でここまで超重光線級を追い詰めていることがまず不可思議なのだが、彼は最良の未来を選び掴む能力に長けていたと言えるだろう。限界は近い、機体に搭載されたS11が嫌でも目に入る。

 

「A-00、配送のお時間だ!」

 

その時だった、補給を終えたタイフーン達が突出して彼のための補給物資を抱えてやって来たのは。

 

『欧州連合の部隊からです、あれは…投棄した主砲です!』

 

「回収してたのか、それとも予備があったのか!?」

 

しかしそんなことはどうでもいい。ありったけの弾薬をばら撒いてから急降下、周囲の敵を重力場で跳ね飛ばしながら彼らの元へと向かう。

 

「待たせた!」

 

「機体のフレームが剥き出しだぞ、大丈夫なのか?」

 

「元からこうなんだ、コイツは」

 

ML機関に釣られて押し寄せるBETAの相手は彼らに任せ、新品の武器を受け取る。空になった兵装担架に突撃砲を収め、機体の胸部ハッチを開いた。

 

『1番カートリッジが空です、交換を』

 

「戦場で扱っていい物なんだろうな」

 

右胸から空になったG元素カートリッジが排出されたのを見て、テオドールは新しい燃料を機体に押し込んだ。敵の跳ね飛ばしや光線の防御は多くの燃料を消費してしまう、戦場での補給を秋津島開発が考えない筈も無かった。

 

『跳躍ユニットの燃料は残り三割、ですが武装は全て全力発揮可能です』

 

「…リィズ、大丈夫か?」

 

機体の揺れが一瞬大きくなり、そしてすぐに無くなった。演算処理の速度は持ち直し、視界には予備のODLタンクが消費されたと表示される。

 

「頼んだぞA-00、超重光せ…うぉおおッ!?」

 

「本当に戦術機ですかアレは」

 

飛燕は手を振る戦術機部隊に一瞥した後、重力制御により予備動作なく機体は上昇し跳躍ユニットの推力を一気に引き上げた。ロケットエンジンに火が入り、オレンジ色の炎を吐き出しながら急加速する。

 

「…は、はは、流石は音速超えか」

 

最新鋭機である筈のタイフーンでも不可能な動きだ、どうせ作ったのは秋津島辺りだろうと見送った衛士は思わざるを得なかった。

 

「なんなんですかあの機体、滅茶苦茶な機動でしたよ!」

 

「これで役目は終わった、俺達はまた後退だ」

 

「行ったり来たりと忙しい、命が幾らあっても足りませんよ」

 

 

この数分後、A-00によって超重光線級は撃破された。大量に存在した光線属種も面制圧が可能になったことで個体数を減らし、戦場に集結していた戦術機部隊によって殲滅することが出来た。

 

尚A-00と呼称されていたML機関搭載型戦術機については国連軍により回収された後、秋津島が有する海上プラットホーム群へと移送された。機体に関する詳細や搭乗していた衛士等に関しては第四計画の権限により明かされていないが、欧州を救った英雄として軍関係者の間で密かに噂されることになる。

 




お久しぶりです。


【挿絵表示】


マブDのイベント走ったり、支援絵描いたり、Pixivの依頼進めてたりしました。年内に完結は…無理かもしれない。
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