オリジナルハイヴでの戦闘は、BETAによる先制で始まった。超重光線級の放つレーザーが重力場によって歪められ、あまりの光量にセンサが焼ける。
「浮遊艦被弾!高度低下!」
「重力場に巻き込まれるな、我々の目的はA-04の護衛だ!」
陸路で進行していた桜花作戦における主力部隊は三隻のML機関搭載兵器と共に行動していた。しかし超重光線級との接敵により、帝国海軍の浮遊艦は船体正面の武装区画を撃ち抜かれたのだ。
「クソッ、ラザフォード場を正面から貫通しやがった!」
「00ユニットを積んでいる凄乃皇とそうじゃない浮遊艦の差ってヤツか…」
オリジナルハイヴ付近に辿り着くまでの敵集団との度重なる接敵、母艦級による強襲などを跳ね除けて来た制式浮遊艦も遂に損傷を受けてしまった。墜落した船の周りでは随伴機が迫るBETAに対応しつつも復旧中の重力場に巻き込まれないようにせねばならず、難しい立ち回りを要求されているようだ。
「A-02、荷電粒子砲発射!」
「BETA戦のスケールはいつからここまで大きくなったんだか、分からんな!」
しかし凄乃皇弐型による荷電粒子砲が超重光線級及びその周囲の光線属種を根こそぎ吹き飛ばし、数万のBETAが一瞬にして息絶えた。ML機関搭載兵器が互いに協力出来るというならば、超重光線級であっても対処は出来るのだ。
「命中!」
「直撃すれば流石に死ぬか…助かったな」
他の戦域では膨大な被害を計上した特殊個体、超重光線級はあっさりとした幕引きでこの世から去った。
そして無防備になったハイヴの巨大な地表構造物、通称モニュメントが荷電粒子砲によって抉られる。厄介な光線属種を排除した弐型はそのまま第二射を放ち、地上へ湧き出るBETAを薙ぎ払った。
「補給は終わったか?」
「ええ。超重光線級が撃破されたと言うことは空が動きますし、目的地まで急ぎませんと」
軌道艦隊は超重光線級撃破の報を受け、待機させていた艦隊を総動員。オリジナルハイヴとその周辺に向けた戦力投入が始まった。軌道降下部隊は有人機に加え、秋津島の無人機も大量に降下することになる。
「降下部隊も俺達のために来て下さるそうだが、油断するなとのお達しが来ている。信用し過ぎるなよ」
「何故です?」
「ハイヴ内の第二目標はとんでもない厄ネタだ」
ハイヴ内に存在するG元素生成プラント、仮称アトリエについては様々な国が狙っている。G元素の供給を握るのは米国と帝国の二国だが、ボパールハイヴを国連軍が陥落させたことで状況が変わった。
「ボパールのG元素でも爆弾だ、それなのに生成プラントなんて確保されてみろ」
「…面倒なことになりそうですね」
「確実にな、そうなる理由は目の前に浮いてるあたりタチが悪い」
後衛を務める2人が横を見れば、巨大な空中要塞が悠々と空を飛んでいる。他の二隻のエスコートにより突入する前に一発も無駄弾を使っていない、温存は徹底されている。
「軌道爆撃艦隊の位置情報が共有されました、爆撃まで90分」
「今から低軌道に入るとなると妥当な時間か…」
「凄乃皇弐型の荷電粒子砲で地表のBETAは一掃出来ます、彼らが本当に必要になるのはその後かと」
ハイヴ最奥を破壊して帰還したA-04が光線属種に狙われるのは確実であり、周囲全ての脅威を排除するのに弐型だけでは手が足りない。それを宇宙からの精密爆撃で補う必要がある。
「A-02、第三射!」
「…振動検知、母艦級も来るな」
「コード991発令、範囲はハイヴ周辺全域です」
「滅茶苦茶だな、流石は本拠地か」
地面には次々と新たな門が開き、大量のBETAが這い出てくる。流石の荷電粒子砲でも地下に潜伏している個体を一掃するのには無理がある、ここからは随伴機の仕事だ。
「総員速度そのまま!湧き出た奴らの相手は居残り組に任せる、我々はこのまま突っ切るぞ」
「中隊長殿は張り切っちゃってまあ…」
「制圧後の掃討戦で戦乙女中隊に負けたからな、配置場所も近いしやる気なんだろうさ」
「ハハ、らしい反応だな」
彼らが操る不知火は87式支援突撃砲を備える後衛仕様で、ボパールハイヴでの戦闘を物語る細かな傷が残っていた。大きな損傷を受ければ新品に交換される筈であり、この状態であると言うことはそれ相応の手傷を負ったことがないということだ。
「前衛が張り切り過ぎないと良いんだがな」
同じ分隊である二人は同時に砲を構えて、前衛が引き金を引く前に攻撃を開始した。放った弾丸は羽を開き、細かな誤差を修正しつつ要撃級の頭を撃ち抜いた。
『36mm
「狙撃手泣かせだな、まあ威力は落ちるが援護に使うなら便利極まりない性能だ」
不知火の全身に張り巡らされた光通信ケーブルはより早く、より細かな操作を可能にし、高速で飛行していても機体の狙撃姿勢は崩れない。
「ティーンエイジャーでも一発でBETAを殺せるぜ、恐ろしい時代になったもんだなオイ」
データリンクによって驚異度が判定されたBETAは最も効率の良い方法で撃破可能な機体に目標として割り振られるため、射程が長い彼ら後衛の仕事は多い。
「ハイヴに入ってからが本番だ、被害は無しで行きたいもんだな」
「どうだか、不意打ち喰らって死ぬなよ」
「安心しろよ、周りを見張ってる相棒は俺より目が良いのさ」
本来であれば00ユニットの候補者選定のために死んでいたであろう連隊規模の衛士達は激戦を潜り抜け、非常に高水準の練度と装備を持つ強力な実働部隊としてオリジナルハイヴに突入する。
本来であれば数機の武御雷と不完全な凄乃皇が挑んだ最終決戦は、全く違う様相を呈することになるのだった。
えっとその、はい、描き終わらなかったです。
挿絵は完結後に更新しますので。