ハイヴの最奥、地下4キロに位置する大広間には大穴が空いていた。凄乃皇四型が放ったG弾により形成された横穴から侵入した突入部隊は、遂に人類を長らく苦しめて来たBETAの司令塔と相対したのだ。
「…形容し難い形だな、アレが本当に司令塔なのか?」
細かく描写するとなると、この小説をR-18にする必要があるだろう。そんな形だ。
「事前情報と一致する、触腕による攻撃に注意しろ!」
オルタネイティヴ計画はBETAとの対話を試みるために始まったものだが、既に対話が可能な時期はとうに過ぎている。やることは引き金を引くことだけだ、人類とBETAは相容れない。
「衝角攻撃来ます!数…52!」
「要塞級と同じ攻撃だが数が多い、迎撃は試みず回避に専念しろ!」
先んじて突入した戦術機部隊を襲ったのは目標である司令塔、あ号標的からの攻撃だった。要塞級と同等かそれ以上の衝角攻撃を同時に数十回行なってくるという行動に驚いたものの、超重光線級が同様の機能を備えていたことは既に共有済みだ。
「疾風改の超電磁砲は衝角の迎撃、凄乃皇は2700mmの発射準備急げ!」
「全て叩き落とすぞ、近付けるな!」
「クソッ、こんな状況だってのに変な形しやがって…」
「集中を切らすな、前衛を殺す気か!」
疾風改と凄乃皇四型によるレールガンの一斉射撃が降り注ぎ、放たれた砲弾が衝角を砕き撃ち落とす。そして防衛のために集まっていたらしいBETA群はVLSから放たれたS11弾頭弾により例外なく吹き飛ばされ、36mm機関砲塔による掃射が残存する個体を潰していく。
「最強のBETAキラーだなコイツは!最高だぜ全く!」
「射線から退避しろ、撃つぞ!」
明らかに他と比べて重い発射音と共に放たれたのは、凄乃皇の両腕部に搭載された2700mm電磁投射砲だ。巨大なあ号標的ですら命中すれば無事ではなく、大きく裂けた身体から体液を流した。
「このまま…」
「第二波来ます!」
この砲撃を受けても尚無事だった衝角が一斉に飛来、AIによる画像認識が不完全になるほどの数が殺到した。戦術機部隊は必死に回避を試みたが、自らを素通りする触手を見てその真意に気が付いた。
「狙いは…A-04!?」
「A-04防御体制に移行、ラザフォード場集中展開!」
「盾を前に出したということは、迎撃は無理か」
リミッターを外し赤熱する砲身で機関砲かと見紛う砲撃を敢行する疾風改だったが、その瞬間火力でさえ全ての迎撃は不可能だった。二枚の盾を構えた凄乃皇に大量の衝角が殺到し、そのうちの何本かは隙間を縫って機体本体へと突き刺さった。
「重力場消失!A-04の座標固定が機能していません!」
「馬鹿な、消失だと?」
「あの衝角が原因か……直掩機は切除を優先しろ、我々は奴の気を引くしかあるまい」
水色の不知火達が一糸乱れぬ動きで編隊を組み、大きな傷を負っても尚凄乃皇に一撃入れて見せたあ号標的へと殺到した。戦術機の武装ではあまりに威力不足だが、凄乃皇が復旧するまでの時間を稼ぐ必要があった。
「凄乃皇の内部構造に被害発生!衝角が内部にまで被害を与えています!」
「溶解液か?」
「いえ、より細かい触手が機体の伝達系に干渉して…うッ!?」
切除を行なっていた疾風改の一機が機関砲塔からの攻撃を受け、通信を途切れさせた。全身に取り付けられた武装の一部が触手を通じて乗っ取られているのだ、なんという悍ましい光景だろうか。
「凄乃皇が!」
「触手を斬り落とせ、元を絶てば…!」
一機の不知火は兵装担架に収まっていた長刀を跳ね上げ、機体の速度を乗せた斬撃を触腕に放った。しかしその機体に向け数本の衝角が放たれ、盾で防ぐも弾き飛ばされる。
「馬力が段違いだな、マトモに打ち合ったら勝てんか」
「120mmの一斉射撃で衝角の発射部分を潰すぞ!」
威力が低いとは言っても数十機が同時に連続して放てば話は別だ、太い触腕も大量の徹甲弾や榴弾の攻撃を受けても耐えられるわけではない。そして凄乃皇に突き刺さった衝角についても排除が進み、攻撃を受けた疾風改の回収を終えたことで重力場再展開の準備が整った。
「損傷機の回収終わりました、やって下さい!」
「触手の切断完了、A-04の復旧指令を送る」
『ML機関の再起動開始、電力供給を予備電源に切り替え』
ML機関の復旧が始まり、各種武装が予備電源によって息を吹き返す。背部に増設された発電機が唸り、冷却装置が赤熱する。
「荷電粒子砲で纏めて吹っ飛ばします、時間を!」
不時着した凄乃皇四型が立ち上がり、重力場によって再度浮遊する。双発化されたからか、00ユニットが複数機搭載されていたからか、完璧に近い調整を受けていたからか。要因は分からない、だが復旧はあっという間だった。
「流石だな、もう立てるか」
「凄乃皇からの攻撃来ます!」
「まだ復旧したのは重力操作だけだろ、どうやって…」
あ号に突き刺さったのは先ほどの攻撃で穴だらけとなった盾だ、重力操作の応用という奴だろうか。重力場自体は消されても、既に加速させられた物体の速度までを消すことは出来ない。
「…アレ宇宙船の底面装甲ですよね、重力で重いものを投げつけるだなんて器用なことを」
レールガンの砲撃によって既に大きな損傷を受けていたあ号標的は大きく揺れ、放とうとしていた衝角の動きも攻撃と同時に精彩を欠いた。それを見逃す精鋭部隊ではなく、次々と触腕が斬り落とされていく。
「やるなぁ!」
「衝角攻撃、また来ます!」
「いや、もう遅いさ」
戦術機達が一斉に離れ、凄乃皇の射線を通した。既にあ号を吹っ飛ばすだけのエネルギーは溜まっていて、荷電粒子砲も既に砲口のカバーを外していた。
ーーー
ーー
ー
凄乃皇四型がA-01と共に行動する中、大きな犠牲の上で投入に成功した軌道降下部隊は第二目標の確保へと動いていた。国連宇宙軍が有する戦術機の大多数を占める二個連隊のF-15は別ルートにてハイヴを進行中だ。
「…これが、い号標的か」
「目標を確認、確保へと移る」
BETAの大部分はML機関を搭載するA-04へと向かっているが、それでも彼らが遭遇する敵群の密度は想定を超えているものだった。しかし米軍機で構成された彼らにとってい号標的の確保は必須条件であり、戦後を見据えた戦略には不可欠だ。
「G元素生成プラントとは言うが、確保したところで人の手で運用出来る代物なのか?」
「それは上が考えるさ、俺達は命令を遂行するだけでいい」
二個連隊ともなると200機の大部隊だ、それをハイヴに別動隊として突入させたことで退路の確保と陽動を同時に行うことが出来る。米国の首を縦に振らせるため、香月博士によってG元素がニンジンの如く吊るされた結果だ。
「だがA-01が攻略に失敗すれば我々も…まだ交信は不可能なままか?」
「ハイヴの構造では通信が上手くいかないらしい、中継機の設置も急いではいるがこうも通信が確立できないとはな」
その瞬間、地下茎全体が揺れた。振動の原因は凄乃皇が放ったS11ミサイルと荷電粒子砲砲によるものだが、彼らと主力部隊とのデータリンクを00ユニットが欺瞞していたために情報が共有されることはない。
「…爆発、S11か?」
「状況が分からん、通信さえ繋がっていれば分かるんだが」
そう話していたが、振動と衝撃は連続して響き続けている。それも段々と強くなっており、戦術機のセンサは振動源の接近を示している。
「地下侵攻か!?」
「不明です!」
遂にい号標的のある広間の壁すら揺れ始めた、確保のため動いていたF-15達は距離を取りつつ突撃砲を構えた。
「この侵攻速度、母艦級でしょうか」
「欧州とアジアでも接敵しているらしい、ここに出ないわけが無いか」
120mm砲の弾倉を徹甲弾のものに入れ替え、搭載されているS11が使用可能かを確認する。母艦級が相手の場合戦術機が勝つ方法は一つ、口の中に爆弾を放り込むことだけだ。
「来るなら来い…引き金はいつでも…」
「データリンク復旧!味方です!」
「何が!」
「A-04が壁を破壊してこっちまで来てるんです!」
壁が崩壊し、瓦礫が転がる。大型VLSに搭載されていた隔壁貫通誘導弾頭弾が突き刺さり、その炸薬量でもって分厚く強固なハイヴの壁を破壊したのだ。
「うわぁぁぁあ!?」
「アレが、A-04なのか」
驚きのあまりトリガーを引いた衛士も居たが、敵味方識別装置がそれを阻んだ。彼らの視界に突如現れた巨大兵器は味方だと強調表示され、しっかりとA-04の名を示している。
「負傷者が多いので少々強引な方法で合流させて貰った、すまないが脱出ルートの確保は?」
「…あ、ああ、地上はA-02がそのまま抑えてる。設置して来た中継機を辿ればこの巣を抜けられる筈だが、補給は大丈夫か?」
「コンテナがあるならある程度譲って貰いたい、A-02も無事じゃあ無くてな」
A-01の面々は補給機から弾薬や燃料を受け取り、機体の簡易的な損傷確認なども並行して始めた。生きて帰ってこそ、彼らに最大限の支援を行なっていた秋津島開発の社長はしきりにそう溢していた。
「…待ってくれ、我々はデータリンクが切れていたので状況がよく分かっていない。目標となっていたあ号標的は?」
「木っ端微塵さ」
この後、地上へと帰還したA-01及びA-04はオリジナルハイヴに存在する残存BETAの殲滅に協力した。またあ号標的撃破後にBETAが突如として前進を停止、各国の防衛線は訪れた静寂に作戦成功を悟ることとなる。
原作
未完成凄乃皇四型と武御雷一個小隊
こっち
完全体凄乃皇四型と不知火&疾風改が約100機
という結果でしたとさ。