「えー、ご迷惑をおかけしました…」
「おかえりなさい社長!開始は待たせてありますから、ほらどうぞどうぞ」
「わーお凄い人」
釈放の知らせを受けて秋津島開発と第四計画、帝国軍を巻き込んだ祝賀会が開かれた。今回の事件におけるガス抜きを兼ねたこの催しだったが、政治的な意図を気にする暇は無いほど参加者達は昂っていた。
「散々待たせてしまったので前置きは無しで行きましょうかね、では桜花作戦の成功を祝ってェ…」
「「「乾杯!!」」」
1998年、桜花作戦の成功によってBETAの侵攻は一時停止。今まで見せていた適応能力は封じられ、ML機関搭載兵器によるハイヴの各個撃破が可能となる。これにより人類は滅亡を回避出来るだけの余裕を手に入れ、前線国は国土の回復に向けて動き始めるのだった。
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「イェーイ!香月博士バンザーイ!」
「何言ってんのよぉ!」
パーティを抜け出した社長と香月博士は別室にて酒瓶を既に二、三本空にしていた。途中から参戦した秘書は二人の出来上がりっぷりに驚愕したが、ゲロ吐いて窒息死でもされると困るのでその場で二人を監視していた。
「メリィィィイ…クリスマース!ちょっと早いけどなァ!」
「こんなに用意して、ちょっと早いプレゼントってわけぇ?」
「どっから用意したんだそんな衣装…パーティの出席者が見たら卒倒間違い無しですね…」
社長と香月博士はサンタの紅白衣装に身を包み、鼻メガネを付けて盛大に笑っている。テーブルの上に置かれているのは世界に名だたる一級品の酒達であり、秋津島食品の伝手で貰ったものを社長が引っ張り出して来たのだ。
「…これ何年物なんだろうか、絶対にこんな飲み方していい代物じゃないでしょうに」
「戦術機なんてデカブツ作れる癖に半導体の塊を手のひらサイズに出来ないって悩みにはもうおさらば!時代は00ユニットよ!」
「ハハハッ!宇宙に行かせてくれよ!宇宙!空!」
「もう駄目だろ、寝てくれよ」
「私に未来があるってことは、地球にも未来があるのよ!」
「ハハハ、ハハハハッ!サイコー!博士大好き!!」
社長が日本酒を飲み切った後、そっとテーブルにガラス製のコップを置いた。そして急に黙った後、ソファに横になって静かに寝た。あれほど酔っていた筈が流れるように就寝した社長を見て、秘書は頭を抱えた。
「なんなんだ…本当に人間なのかこの人…?」
「さあね、そこは私も時間さえあれば調べたいところだけど」
「いや酔ってねぇのかよ!ドッキリかなんかですか!?」
「アイツの方は本気で酔ってるわ、多分素よ」
「益々訳がわからない…」
鼻メガネを外し、香月博士は酔っている演技を辞めた。そして真面目な顔をして社長の謎に包まれた生態について思考を巡らせて見せる様に、秘書は呆れて再度頭を抱えた。
「まあでも安っぽいサンタの格好して、好きでもない酒を一緒に飲もうと思うくらいには良いヤツね」
「付き合い方考えた方がいいと思いますよ」
「…冷たいわね」
「でもまあ我らが社長ですから、こんなコスプレ大会に付き合って下さりありがとうございます」
「あらそう、やっぱり好かれてるわねぇ」
色々あったとはいえ、人類は勝利を収めた。一仕事終わり、この一室に集う人々の肩からは重い荷が降りたと言えるだろう。
「明日がある、か……なんとも型破りな男ね」
「型が存在するか怪しいですけどねこの人、自分で作った枠組みぶっ壊しながら開発進めてますし」
「それはまあそうね、やっぱりおかしいわよコイツ」
よく分からない所で意気投合した二人はテーブルに座り直し、新品のコップで改めて酒を飲み始めるのだった。ちなみに社長は朝起きて普通に出社し、秘書は飲み干した酒瓶の値段を知って二日酔いでも無いのに頭痛に苛まれた。