「…帝国軍もプロパガンダと思って許可を出したとはいえ、この路線とは思わなかったでしょうね」
「今の今までこんな作画じゃなかったからな」
『ぼく吹雪!帝国の平和を守るため、今日もみんなと頑張ってるんだ!』
この絵柄でも中々のアクションシーンがあり、制作が終わっている第一クールのラストでは先輩の疾風さんと共に光線級吶喊に挑んでいたりする。絵柄が可愛いから騙されてしまうが、中身はしっかり戦争物である。
「軍需にばっかり頼ってたら駄目だ、この手の映像作品もプロパガンダ以外の側面を少しずつ強くしていかなきゃならん」
桜花作戦が成功し、人類が数年の猶予を得た後のこと。社長は飛燕の完成に尽力する中、娯楽業界への投資を増やすよう指示していた。
「傘下にアニメスタジオを何個も抱えているなんて、少し前だったらどんな無駄遣いかと怒られたものですけど」
「秋津島放送が覇権を握った今、アニメの価値は鰻登りって寸法よォ!」
映像制作のために専用の機材とソフトを出力しているあたり、中々の力の入れようと言えるだろう。
「これと並行して各種グッズに例の戦術機型ロボットも売り出すぞ、据え置き筐体を並べたゲームセンター作ってやる!」
「儲けになりますか?」
「ククク…子供へのプレゼントランキングは秋津島が独占するさ…」
この世界では2000年代に入っても娯楽と聞かれてボードゲームと答えるくらいであり、ゲーム機という物は発達していない。秋津島開発の衛星通信用端末を普及させたのはその布石、ソーシャルゲームは瞬く間に広がった。
「帝国軍の戦術機を作る許可はもう取ってある、ロボットが一気に広がれば他の企業との交渉もやりやすい」
「こういう時は何もかもバッチリなんですから、それを決戦の時もというのは流石に酷ですけど」
「いやだって…家族が大手を振って遊べないし…」
「貴方って人は本当にィ!」
秋津島開発は正月を前にして大々的に新商品や新サービスの展開を発表、隠れて用意されて来たゲームセンターもこれを機に日の目を浴びた。
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「…やり過ぎた」
「みたいですね…」
ゲームセンターに長蛇の列が出来ており、携帯ゲーム機は抽選販売会場が戦場と化している。一人一枚の抽選用紙を貰うために開店前から店に並び、家族で祈りを捧げる様をTVで見た時は茶を吹いた。
「こんなに一気に流行るかよ」
「やってみた身からすれば劇薬ですからね、アレで身持ち崩す人は必ず居ますよ」
「うんまあ、俺も子供時代にコレがあったらのめり込んでるわ。格闘ゲームが滅茶苦茶流行った時みたいな物なのか…?」
戦術機型ロボットはLittle・TSFと名が付けられ販売された。購入者は主なターゲットだった子供に留まらず、様々な層へとその人気は波及した。
「L-TSFは既にどれだけ売れたか分かりませんよ」
「前こそコストの問題で一般向けの販売は諦めたが量産化のための試行錯誤は進めていたんだ、それで大量生産も出来るようになった」
「犯罪に利用されたりしませんか?」
「ジオラマの床から無線で給電する方式だから大丈夫だ、外に出れば動けなくなる。システム側でジオラマ外の動作は止めてるし、勝手に改造されたら動かないようにもしてあるさ」
本来なら小型の探査機用の技術として開発が進められていた系譜だが、国からの口出しで研究項目の再編が進められようとしていた。明らかに軍事技術に偏重したそれを止めるため、玩具として製品化することで実績を作ったのだ。
「…では思う存分楽しめますね、事件にならないことを祈りますか」
「一戦やっとく?」
「手加減しませんよ」
本当に手加減しなかった秘書にボコボコにされ、それを見ていた監視役は冷や汗をかいていた。弾切れになった突撃砲を投げつけ、両手にナイフを握って突撃してくる様は滅茶苦茶怖かったとだけ言っておく。
「ドス持って走ってくんなよ!怖えって!」
「うぉぉぉおおッ!」
「ホラー映画かよテメェはよぉ!」
最近SEEDのHDリマスター見始めたよ、試作艦を回転させた時のバレルロールってアークエンジェルのアレだった訳かぁ。主人公はナイフ抜いた時が一番怖い。
【挿絵表示】
これは少し見た時のやつ、オレンジメガネ…俺はお前の肩を持つぜ…!