宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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一人分隊

ユーコン基地の演習場では盛んに模擬戦が行われているが、近年においては無人機の導入によってその内容は様変わりした。現在社長が視察中の演習場では国連軍所属のF-15Cと吹雪の分隊が戦っていたが、有人機は分隊長機のみだ。

 

「良い動きをするな、吹雪の方は相当な経験値を積んでるだろう」

 

「あー…社長、衛士を見たら納得ですよ」

 

「どれどれ」

 

吹雪の空力特性を完全に理解し、最低限の動きで機体を思い通りの機動に繋げて見せる。思考も柔軟で機体が取る動作から見ても固さは感じられない、時に見せる大胆な動きは身体全体をエアブレーキとして使っているのだろうが見ているこちらがヒヤヒヤするほどの失速具合だ。

 

「ユウヤ君じゃないか、彼国連軍に居たっけ?」

 

「AIを活用するって技術では彼の右に出る衛士は居ませんよ、だから色んなところに出向してるんです」

 

 

【挿絵表示】

 

 

吹雪が建造物の合間から一気に飛び出し、演習の様子を記録するためのUAVに一瞥する。そして敵との距離を詰め、すれ違いざまに撃墜して見せる。被弾したものの装甲が分厚い肩部で受け止めており、一瞬のうちに見せたダメージコントロールは人間に出来る物ではない。AIとの連携だろうか、なんにせよ見ている誰もが息を呑んでいる。

 

「なるほど、最近会わないなぁとは思ってたんだよな」

 

原作での活躍を知っている社長は彼に様々な英才教育を施すべく動いていた時期があった。しかし預かった手前押しつけるのも良くないという単純なことに気がついたが、既に家の中には軍用のシミュレータが搬入されていた。暫くは埃を被っていたが戦術機型の小型ロボットホビーがきっかけになったのか、彼はいつの間にかシミュレータを使い始めるようになっていたらしい。

 

「会わないって、仲はどうなんですか」

 

「…避けられてる可能性は大いにある」

 

「何故です」

 

「ちょっと…複雑な家庭事情の真相を語らずに今日に至るというか…」

 

ユウヤ・ブリッジス、彼が社長の元へと預けられたのには事情があった。というのも秋津島開発が急拡大を見せ、異常なほどの利益を帝国へと齎したからだ。それにより譜代武家の血を引く彼の価値は原作と比べて相対的に高まり、米国に留まることすら危うくなった。

 

「結果的にとはいえ家族を引き裂いた訳だ、罪悪感は消えない」

 

「やっぱり腹を割って話した方が良いですよ」

 

「うっ…」

 

「前任者ならそう言うと思いますよ、当時の話も伺ってますから。やっとBETAとの戦いもひと段落したんですし、別の問題も直視する時です」

 

僚機を失ったF-15Cは一気に劣勢へと追い込まれていたが撃墜はされていなかった、衛士が優秀なのだろう。手強い有人機ではなく付け入る隙が垣間見える無人機へと狙いを定めたが、狙われたことに勘付いた吹雪は突然長刀を抜刀した。

 

「君はこう言う時にズバッと言ってくれるから助かるよ、アイツが推薦するわけだな」

 

「であれば予定を空けましょう、お話を出来る時間を作っておきますね」

 

「…その間俺は何を?」

 

「話す内容を考えつつハイネマン氏と戦術機に関する意見交換をお願いします、あとは人攫いにお気をつけて」

 

応戦するべくナイフを抜いたが間に合わず、吹雪の袈裟斬りが放たれる。今回はユウヤの完勝に終わったようだ、このような演習が重視されるということは対人戦でも無人機の存在は必須になりつつあるというこの証左だろう。

 

「飛燕を模擬戦に出せと言われていますが、それはどうします?」

 

「超電磁砲と重力場で演習場を更地にするわけにはいかんと返しておいてくれ、それに調整も何も終わってないからな」

 

「今は格納庫のスパイ対策中で機材搬入が進んでませんからねぇ…」

 

「だがまあ面倒なテロリストもオリジナルハイヴと一緒に壊滅したんだ、見せつけるだけ見せつけて帰れる時に帰ろうぜ」

 

帝国軍はML機関搭載兵器の暴力でもってユーラシア大陸中のハイヴを片付けるつもりだが、目的は何もG元素だけではない。国土の奪還が済めば次に来るのは復興だ、それは大きな市場になる。

 

「戦争戦争って言い続けても駄目な時代になったんだ、良いことさ」

 

秋津島開発が設計した環境改善用の超大型車両も各地にて建造、運用が始まっており、それ自体が多数の人間を収容した街として振る舞っている。またBETAの活動により大地が真っ平らになったことで地面効果翼機はその運用範囲を大きく広げ、その積載量と速度で物流を支えていた。

 

「ですが復興に際して土木部門も駆り出されたお陰で売り上げ比率に大きな変動がありましたけどね、今や一番儲かるのがインフラとは…」

 

「今までも宇宙のインフラを整えてたようなもんだろ」

 

「我が社単体でやることではない気がしますけど」

 

「戦術機の開発技術で追いつかれようと本業の宇宙開発だけは誰にも負けないぜ!目指せ太陽系制覇!」

 

今日も秋津島開発は人類の夢を実現すべく邁進している。その夢がどんなものであれ、今となっては夢を見られること自体が素晴らしいことなのだ。

 

「今やML機関搭載兵器を量産する自称宇宙開発企業ですけどね」

 

「…うんまあ、そういう意見もある」

 

見るものが見れば死の商人の如き暗黒メガコーポである。

 




アニメの元ネタはエクストルーパーズ。
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