「全部聞いてる」
「マジで?」
全てを話すべくユウヤのことを呼んだ社長だが、いざ本当の父親について話そうとすると彼は驚くべき言葉を発した。全て母親から明かされていたようだ、いつの間に聞かされていたのだろうか。
「父親が近衛の黄色だかなんだかで」
「あってるな」
「渡米した時に恋仲になって」
「そうらしいな」
「俺が出来た後で親父の所に転がり込んだ」
「100満点だ、呼んだ意味無かったな!」
なんでも精神的に安定し切っているため、真実を話すことにしたらしい。戦術機のテストパイロットやらなんやらを務める彼は満足そうにしていたが、社長からすれば誘導してしまったのではないかと内心心配だった。
世界は多少平和になったのだ、別の道を歩みたいのであれば全力で支援する用意は出来ていたが彼の選択であれば仕方ない。
「昔は本当に親父の子なんじゃないかと思ってたが…」
「あぁ…」
思春期は相当凄かった、あまり家に帰れない社長ですら荒れていることが分かった程にだ。複雑な家庭環境故に仕方ないことだが、この事件を機にして母親であるミラ氏が地上勤務に戻ったりと色々あった。
「本当の父親に対して思うところはある」
「やっぱり」
「だが本人達が納得してるなら下手に波風立てることでもない、そうだろ?」
「…大人の対応だな」
母親の過去に関してはキッパリと割り切ったらしい、なんだかんだで彼女が伸び伸びと働いているというのもあるのだろうか。今はロシア系戦術機の解析も帝国からの依頼で行っているらしい、有能な技術者は引っ張りだこだ。
「じゃあもうこの話はおしまい!最近の話しよう、なんでもいいぞ!」
「親父、刑期は終わりそうか?」
「刑務所の面会じゃないんだけど…」
社長の行動を支持する人々によってクーデターが起きかけたというのは数年前のことだが、当事者達にとってはそう昔の事件だとは思えないものがある。機密の塊である新型戦術機をロケットに詰めて打ち上げたのだ、予定の軌道から少しでもズレると超重光線級に撃ち落とされるという状況下で。
「逮捕されずに執行猶予付きってことになってるけど、軽くして貰えた理由はあの第五世代戦術機にある」
「飛燕か」
「あのモンスターマシンを量産するのにこの老人が必要なんだってさ、配備も進んだし一応刑期は終わりってことになってる筈だけども」
「なんであの機体を運び込んだんだ、他の国に親父諸共狙われるぞ」
「機体開発が少し行き詰まってるってのもあるけど、狙って来るような馬鹿を炙り出すのも目的らしい」
護衛の数は多く、どれも身元の調査を済ませた上で帝国本土から来ている人々だ。指向性タンパク対策も講じているらしく、寝ることがないAI達と協働して警備を行ってくれるとのことだ。
「テロ組織の残党を潰す気なのか」
「残ってないと思うけど…最近停戦監視軍が所属不明機と交戦した、こういうのは大抵良くない兆候だよ。備えるためにも飛燕の対人装備を仕上げなきゃならない」
戦う相手がBETAから人になるというのもおかしな話だ、秋津島開発でさえその流れからは逃れられない。戦後は段階的に縮小し解体する予定だった秋津島警備の戦力は減るどころか増え、無人機の運用実績も相まって人気も増している。
「悪いけど手伝って貰うことになる、追って連絡があるとは思うけど先に伝えておくよ」
「飛燕の装備開発計画…本当に見ても大丈夫なんだよな?」
「伏せられてた機体スペックもある程度載ってる、黒塗り箇所は少ないから危険極まりないけどね」
そう言って社長は卓上シュレッダーとライターを取り出した、読んだら燃やせということだ。彼は資料を捲り、ML機関の莫大な発電能力やそれを利用した高火力電磁兵器、重力場を利用した次世代空力制御に対光線防御など代表的な項目を頭に叩き込む。
「マジかよこのスペック…この記録上の最大速度ってまさか、あの時の?」
「おう、試作機が叩き出してる」
あの時の00ユニットは元気らしいとだけ言っておく、プライバシー保護の観点から彼の近況は明かされていない。
「そして今回の計画は米国と帝国が連携してる、第四世代戦術機の開発計画と並行して行われる手筈になってるからな」
「米国とは今ML機関周りで揉めてるだろ」
「表向きはな、裏じゃG元素採掘のためにソ連と戦う準備を進めてるくらいには仲良しだ」
ユーラシア大陸は未だに多くのハイヴを有しており、共産陣営は自領内のG元素確保のために国連軍の許可なしでハイヴ攻略を行うための戦力を用意し続けている。BETAが大人しくなったとはいえ近付けば襲って来るのは変わらない、そんな中突貫工事で築き上げられた防衛ラインは脆く、下手に刺激してBETAが動き始めたらどうなるか分からない。
「…碌でもねぇな」
「限られた場所で限られた資源を取り合うから駄目なんだよな、宇宙開拓計画にもっと目を向けてくれれば助かるんだが」
「なるほど、そのための第四世代機ってことか?」
第四世代機の定義は1Gから0Gで活動可能な戦術機とされる、つまり宇宙空間やG弾での重力異常下での運用を想定しているということだ。飛燕が第五世代機とされたのは色々と理由があるが、そもそもあの段階では地下から出す気は無かったのだ。
「本当は飛燕の試作型でML機関の研究を進めつつ第四世代、第五世代と段階を踏む予定だったんだよ」
「第四世代なんてあったのか?」
「宇宙空間でデブリの影響を受けずに単独で月のハイヴまで辿り着ける戦術機を開発する計画だったからな、まずは宇宙でも動く機体が必要だろ?」
今や第四世代機の定義は上記のもの以外にも既存のものよりも柔軟かつ強力な無人機の管制能力が盛り込まれるなど変わりつつあるが、各国で開発が進められている。第五世代機というその名の通り世代を飛び越えた機体など作れるわけがないのだ、なんとか量産に漕ぎ着けた飛燕ですら無理をしている。
「…変わらないんだな、親父は」
「取るのは歳だけさ、月に連れて行きたい奴らも居るんで頑張んないと先に寿命が来ちまう」
ちなみに香月博士は諜報合戦が巻き起こる戦後の国連を抜け、その比類なき実績で秋津島開発の専務の席に収まっているらしい。そして様々な研究を行いつつ、社長に対して約束した老化の克服を実現しようとしている。
「色々あったが、これからもよろしく頼む」
「テストパイロットとして期待以上の働きを約束する、縁故採用とは言わせないから任せてくれ」
「本当に心強いよ、本当に」
テロ組織も壊滅し指導者も拘束、更にはBETAも司令塔を潰されて大人しい。原作のような騒動に巻き込まれないことを祈るばかりだが、そう平穏ばかりが続くとは思えない世の中だ。
そういや名前だけ言ってオリジナルの方のリンク貼ってねぇや…
言い出しっぺの法則、というわけでコレを。
https://ncode.syosetu.com/n8329jb/
検索してまで来てくれた方々、本当にありがとうございます。