宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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なんか新作が出るらしいじゃあないですか。


凄乃皇と戦争と

 帝国軍は潜在的な脅威の排除を名目に、ユーラシア大陸に対するBETA掃討作戦を強行する気だ。G元素利用兵器の集中運用は夢物語だったが、急ピッチで進められた飛燕の配備により現実のものとなった。

 

 大量の武器弾薬が倉庫には積み上げられ、宇宙も軌道爆撃の準備で大忙しだ。軍事作戦となればマスドライバーの打ち上げスケジュールも変更が必要だろう、宇宙港も少し前のようにというべきか、火を吹く勢いでフル回転している。

 

「オリジナルハイヴ攻略時に起きたBETAの本土侵攻がトラウマになってますね、ソ連と多少衝突してでも脅威となるハイヴを潰す腹積もりかと」

 

「国際的な緊張は高まるばかりだな。帝国も脅威の排除以外に、攻略したハイヴのG元素の独占を狙っているだろう」

 

「オリジナルハイヴを攻略したとはいえ、BETAの設備を解析して利用できるようになるには時間がかかりますからね」

 

 秋津島開発としては、帝国に協力する姿勢だ。拒否するわけにもいかないというのが大きいが、拒否したとしてもより悪い状況へ転がっていくことが目に見えている。

 

 ユーコン基地からでは指示を出したとしても、少々のタイムラグがある。この戦争に彼が乗り気ではないことは、帝国側にも伝わっているだろう。だが国民感情的、安全保障的に攻撃は実行されるだろう。

 

「凄乃皇は……まだ国連所有のままだったよな?」

 

「何処に降ろしても問題になりそうなので、宇宙港に係留したままですが」

 

「使用許可を取り付けよう。月の攻略作戦自体は国連軍で承認されてるんだ、目下最大の脅威を消し飛ばそうじゃあないか」

 

 戦術機だけで作戦を進められるようにはしたかったが、思っていたよりも時間が無さそうだ。宇宙で放置されているのは強力かつ最新のG元素利用兵器、更にはオリジナルハイヴ制圧の実績付きだ、使わない手はない。

 

「宇宙港のどのヤードに係留してあるんだ、職員を派遣して状態を確認してもらわないとな」

 

「あー……それなんですが、少々問題が」

 

「どうした?」

 

「解体しちゃって、ますよね」

 

 肝心の凄乃皇だが、現在は殆どの武装を喪失している。秋津島開発のAIで制御されるこの化け物を、そのまま置いておくことが不安視されたのだ。……というのはまあ方便だが、何か起きた時の責任など誰も取りたくなかったのは事実だ。

 

 オーバーホールという名目で武装を取り外された最後の凄乃皇は、作戦参加時とは正反対の抜け殻のような姿をしていた。

 

「そうだ、バラしてたんだったァ!」

 

「もう一度組み上げますか?」

 

「地上ならまだしも、宇宙でやるんなら時間がかかりすぎるな……無重力状態時のマニュアルなんてないぞ」

 

 宇宙ゴミの掃除機として使うには燃料が貴重過ぎたため、運用されたのはデブリの数が多過ぎた最初だけだった。現在は通常動力の回収船で十分対応できるため、役目は存外早くに終わっていた。

 

「一応、部品はそのままあるんだよな?」

 

「はい。宇宙放射線で電子機器周りはかなり劣化していますが、それ以外は特に大きな変化は見受けられません」

 

「しまったな、あのまま残しておいても不味いことにしかならんとは思っていたが、使う時になるまで忘れていたか」

 

 武装も再度取り付けるにしても、オリジナルハイヴ攻略時に損耗したものは換えの部品が必要だ。地上から運ぶとなると、もうマスドライバーの打ち上げスケジュールはこれ以上変更できないところまで来ている。

 

「ML機関にだけ火を入れて降下するのはどうだ?」

 

「帝国がユーラシア大陸に派兵するこのタイミングでは、あまりに周辺諸国を刺激しすぎるかと。ML機関を有する兵器の中でも、凄乃皇は飛び抜けています」

 

 それに凄乃皇が直接帝国へ取りに行くというのも、国際的な緊張が高まっている今では問題となるだろう。

 

「ええと、もしかしてだが」

 

「はい、このままスクラップになる可能性が」

 

「最強の兵器がそんな!それだけは避けたいんだがなぁ!」

 

「最強故に、扱いが難し過ぎたんですね」

 

「言ってる場合か」

 

 凄乃皇の荷電粒子砲は欲しい、大気のない月ならば威力が減衰することなくハイヴの地上部分を吹っ飛ばせるだろう。そのままメインシャフトから真っ直ぐ中枢を撃ち抜けば、それで試合終了だ。

 

「機能を制限して、どうにか稼働状態にまで持っていかないと今後も困る。ひとまず引っ剥がした部品を、武装を除いて出来る限り元に戻すよう命じてみようか」

 

「地上からロケットで部品の打ち上げを行いますか?」

 

「いや、丁度いい機体がある。試験ついでに、宇宙まで持っていってもらおうじゃないか」

 

ーーー

ーー

 

 ユーコン基地から飛び立ったのは、異形の戦術機達だった。第四世代戦術機として設計され、0G環境下への対応に加え、限定的なML機関の運用能力も持つ。

 試作機故に名は無いが、腰に接続されたML機関付きの跳躍ユニットによって、そのシルエットは馬かケンタウルスかに例えられるような形状と化していた。

 

「……ま、パフォーマンスには丁度良し」

 

「背負っているのは飛燕のML機関と宇宙用の推進器、そして大量の燃料と、目新しさは皆無ですね」

 

「既存技術の結晶さ、試験済みの装備で固めるしかない」

 

 彼らは専用のコンテナに詰め込まれた凄乃皇のパーツを重力制御によって浮かせ、そのまま共に宇宙へと昇っていく。打ち上げのスケジュールが埋まっていても、自前で大質量を持って行けるなら割り込める。

 

「我が社で使えるG元素も無限ではないんだが、な」

 

「凄乃皇の荷電粒子砲が使えれば、戦術機用の荷電粒子砲は無理をしてでも高出力にする必要はなくなりますね。それにアレもまだ、前回の作戦では使っていませんし」

 

「G弾か、効果範囲を限定した戦術型弾頭が手付かずで残っていたな」

 

「打つ手はあります、最悪の手段ですが」

 

「……そうだな」

 

 月へは行ける、やろうと思えばハイヴは消し飛ばせる。だが手段を選んでこその勝利だ、重力異常の残る地など開拓する余地がない。残された時間と欠けた部品で、凄乃皇は主砲を取り戻すことは出来るのだろうか。

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