宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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斯衛は新たな鎧を手に入れたようです

皆さんはロボットとパイロットの友情モノで何が好きですか?
僕はエクストルーパーズのギンギラとブレンの一か八かです、異論は認める。



第十六話 軍備拡張

1980年、日本帝国政府は徴兵制の復活を宣言した。対BETAの最前線では見間違いかと思うような損耗率が報告されており、帝国軍も抜本的な軍の再整備を行っているらしい。主力兵器として大量生産が続けられる戦術機だが、それに乗る衛士に適性が求められるというのも広く人を集めなければならなかった理由の一つだろう。

 

「隼の補助AI、役に立ってるみたいですね」

 

「コストを考えると割に合わないが、まあ将来性はあるからな」

 

将来的に無人化するには優れたAIが必要だが、戦術機を機械だけで動かすとなると相当難しい。今は戦術機に乗る新人衛士を助け、熟練衛士の邪魔にならない範囲のサポートを行えるレベルを目標に調整を続けている。

 

「なんか斯衛の衛士は前のバージョンの鋭敏さが欲しいって言ってますけど」

 

「知るかァ!斯衛でも使い熟せる衛士そうそう居ないだろ!」

 

「前々回くらいのアップデートにより任意で思考制御感度を調整出来るようになってるって教えたら、嬉しそうにして帰っていきました」

 

斯衛仕様の撃震と隼は今年に配備が始まるため、倉庫では大量の戦術機が運ばれるのを待っていた。納入先が納入先のため、擦り傷一つ付かないようにと厳重な保護が行われている。

 

「斯衛仕様の撃震、瑞鶴って名前に決まったそうですね」

 

「ああ、似合ってる」

 

「そして我々の隼は…鐘馗と呼ばれるそうです」

 

我が社の機体は陸軍のレシプロ機にあやかる傾向があるのだろうか、まあ名前負けはしていないだろう。

隼斯衛仕様改め鐘馗はここ数年の試験運用にて様々な改良を施し、搭載した機器の性能を十二分に引き出せるほどになった。運用コストは相応に上がったが、同じ力量の衛士が隼と鐘馗に乗って戦えば鐘馗が勝つと言い切れるまでになったのは努力の賜物だろう。

高性能化した結果悪化するかと思われた操縦性だが、補助AIの搭載と度重なる更新により解決した。

 

「腕部の大型展開式ナイフシース、大好評ですね」

 

「帝国軍もアレ欲しいって言ってるが、部品点数やら強度やらを考えると作る側は気が気じゃないんだからな!」

 

隼に搭載しているものとは違い、片腕単体でナイフを保持できるのは斯衛だけでなく帝国軍でも話題になったそうだ。実験的に搭載した格闘戦想定の装備は好評で、帝国軍の次期主力機に盛り込まれる要素になったことは明らかだった。

 

「帝国軍か、軍といえば徴兵制を再開したらしいな」

 

「戦術機の乗り手になれるのは少数派ですからね、今は戦術機生産に全力を注いだお陰で補助戦力が足りないとか聞きましたよ」

 

三次元的な戦闘を常に行う必要があり、対BETA戦の矢面に立つことになる衛士達はそれ相応のエリートだ。100人集めて全員がなれるかと言われれば即座にNOと返せるだろう。

 

「対共産圏用に蓄えてた分じゃ足りないのか」

 

新たな戦車を作れるかと政府が言い出したのも補助戦力不足を考えてのことなのだろうか、確かに74式戦車では少し不安が残るかもしれない。

 

「弾薬は我々が卸せますからね、今は砲兵隊の拡充を急いでいるようですよ」

 

「レーザーに撃ち落とされるとはいえ、結局のところ勝負を決めるのは砲撃だからな…」

 

戦術機に全力投球した結果、少し他の部分が疎かになっていたようだ。国内企業も原作以上に撃震の製造と改良に力を注いでおり、今年に瑞鶴の配備が始まるともなれば他の事を始める余裕はないだろう。

 

「拡張した港でも戦術機用の母艦が起工されたらしいですね、海軍も揚陸作戦能力の確保に躍起になってますよ」

 

「艦艇を運用する人員も必要というわけか、ここまで急な軍拡だと持つものも持たなさそうだが…」

 

 

先のA-10モドキ開発や、瑞鶴の完成により国内三社の戦術機部門は束の間の休息に入っていた。後回しにしていた戦闘車輌を秋津島開発が一時的に受け持っているのも大きい、働き詰めで彼等もどうにかなりそうだったのだ。

 

「ひ、ひとまず、瑞鶴の配備開始…おめでとうございます」

 

まばらな拍手、腕を上げる力が残っている者は少数派だ。

原作を超える速度で実用化されたのはいいが、三社の疲弊は相当なものだった。

 

「戦術機以外も進めなければなりませんからね、仕事は山積みです」

 

小銃、弾薬、車輌、その他諸々…大企業である彼らがこれからのために用意しなければならないものも多い。多数の戦術機が稼働し始めたことにより、それ専用の補給体制も見直さなければならない。

二種の燃料を使うエンジンと18mの巨人を維持するのは生半可な体制では不可能だったのだ。

 

「隼用の消耗品は秋津島開発さんからOK貰えたか?」

 

「貰えたぞ、宇宙で作ったのと遜色ないって褒めちぎられたわ」

 

この手の産業で長く戦ってきただけはあり、秋津島開発単体では部品供給に不安があった状態の解消にもしっかり動いていた。

 

「今は足場を固めないと、張子の虎にするつもりはないからな」

 

「休みが明けたら対レーザー装甲の研究も進めるぞ、秋津島にやられっぱなしじゃあ格好がつかん」

 

 

 




国内企業の辛いところ、戦術機を作れと言われるが戦術機以外も全部用意しなければいけないこと。
過労でぶっ倒れそうになるものの、確実に成果は出始めているようです。

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