宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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月面の軍備は原作通りですが、秋津島開発の頑張りによって兵站は強化されています。

追記
加筆しました


第二話 月面戦争

「我が社のMMUは宇宙軍への納入も行われた高性能機であることは確かに誇りに思っています、ですが社長」

 

「どうした」

 

「純戦闘用のMMUを作れとはどういったことなんです?」

 

開発班と私で囲むテーブルには今までのMMUとは違い戦闘用として新規に設計された機体の完成予想図があった。低重力下で敵BETAと戦うため、現在月面で運用可能な範囲の性能で設計してある。

 

「武装は手持ち式の機関砲一門、固定式の機関銃一丁、ナイフ一つだ」

 

「…これで何をするってんです?」

 

「決まってるだろ、化け物を入植地から追い出すのさ」

 

サクロボスコ事件時に犠牲者のカメラで撮影されていた闘士級、火星探査機が通信途絶ギリギリに撮影していた戦車級の資料を取り出して開発班に見せた。

闘士級と戦車級は共に2〜3mほどの身長を持つことが周囲との比較で分かっている。

 

「人を襲う以上対抗策は必要だ。それにこれは宇宙軍から回って来た話でもある、向こうもなりふり構っていられないらしい」

 

未だ詳細が明らかになっていない以上大きく動くことは出来ない、そこで秘密裏に提案が回って来たのだ。杞憂で済めばいいのだが、まあ済まないだろう。

 

「この姿勢制御用の推進器を腰部に集約するアイデア、良さそうですね」

 

「…どれどれ」

 

異形の化け物を見せられて思うところがあったのか、技術者達は設計図に目を通し始めた。特に腰部に大型推進器を搭載することで、機体各所に装備せねばならなかった姿勢制御用のスラスターを大きく減らしたことが注目されたようだ。

 

「推進剤タンクも分散しなくて済む、それに大型MMUを月面で飛ばすならある程度の推力が必要だしな」

 

「スーパーカーボンと新素材の併用で重量をもっと軽く出来ませんかね?」

 

「機体のセンサ配置は確かに合理的だが、もう少し調整出来そうだな」

 

試作機を作るのにそう時間は要らない、ラグランジュポイントの造船ドックに運び込まれた3Dプリンターで部品が次々と製造されていく。

 

「取り敢えず設計図通りの試作機が完成するのはドックのプリンターを全力稼働させて5日後ですね」

 

「ここで全て作るのはコストが掛かりすぎる、地球で生産して宇宙で組み上げるのが理想だな」

 

この直ぐ後に米国が始めたNCAF-X計画に秋津島開発は参加、対BETA用大型MMUの開発製造を担っていくことになる。

 

 

「…相当不味いな」

 

「やはり戦況はよろしくないようですね」

 

各国が躍起になって整えた宇宙環境だが、それでもBETAの物量に勝ることは出来ていない。

様々な試作兵器が投入され、未だ戦い方を模索している最中だ。

 

「ですが我が社のMMU、彗星の評判は良いみたいですね」

 

「NCAF-X計画の試作機はまだ投入出来てないが、我が社単独で生産ラインを既に整えてある彗星は30機が戦地に入ってるからな」

 

 

【挿絵表示】

 

 

BETAに対して有効な三次元戦闘を行える上に20mm機関砲という人間には扱えない大口径砲を持つ彗星は圧倒的なキルレシオを叩き出しているらしい。

 

「それでも機数は足りないようですね、次の納入はいつだとせっつかれてますよ」

 

「彼らは人類の盾だ、出来る限りの支援は必ず送る」

 

そこに社員の一人が書類の束を持って現れた、紙には要望書と書かれている。

 

「社長、月面からの要望が届きました」

 

「…本気だな、なりふり構っていられないのは何処も同じか」

 

我が社が製造していた月面用の多脚重機に兵器を搭載して戦力化する提案、地上で多用されている榴弾砲の砲弾をそのまま使用可能な自走砲の要求、彗星により高火力な砲を搭載し突撃級や要撃級への打撃力を増す案などがあった。

 

「やっぱり火力が足りないか、月面の低重力が足を引っ張るとはな」

 

月への兵站は原作と比べて2倍ほどの輸送能力を持つが、地上から打ち上げられるのはマスドライバーを用いたカーゴが殆どであり、その規格では大型の戦闘車両は輸送できなかったのだ。

 

「20mm弾では威力不足だと言われてますよ」

 

「これ以上大口径化すれば反動で転ぶぞ、デカいのを載せりゃいいって話じゃあない」

 

早くも問題が浮上していた、低重力下で20mm砲を運用している時点で相当無理をしているためこれ以上は機体側が持たない。

そもそも三次元戦闘が可能なラインギリギリで重武装化を行っているのだ、射撃性能で言えば固定用のスパイクを持ち、20mmよりも反動が少ない17mm機関砲を採用したNCAF-Xの試作機の方が良いほどだ。

 

「大型化した無反動砲あたりを投入するしかなさそうですね」

 

「自走砲の方も中々難題だな、正直あの多脚重機じゃ反動を何度も受けきれん」

 

開発班にも既に同様の書類が渡されているらしい、今はNCAF-X計画の方とも擦り合わせを行いつつ戦力の拡充と戦線の構築を行っていくしかなさそうだ。

 

「装甲駆逐艦の月往来能力が条約で禁止されていなければ…」

 

「無いものねだりをしても仕方ない、それは米国の開発チームが追加装備でなんとかしようとしているようだが何年かかるか分からん」

 

BETAは月面であろうとパフォーマンスを落とさない、圧倒的な物量差を相手にして僅か30機の彗星では大局を変えることは出来ないだろう。しかし2年前倒しで投入されたパワードスーツの系譜を継ぐハーディマンは大きな戦果を上げつつあり、今すぐ撤退を強いられるような状況では無いことは確かだった。

 

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