宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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秋津島開発は兵器の実地試験を行いたいようです


第十七話 北欧と宇宙

宇宙港ではなにやら大きな工事が連日行われていた、物騒な警告文が書かれたコンテナが大量に地上から打ち上げられているのもその関係だ。

 

「コレ全部核ミサイルだってよ…」

 

「月からのBETA迎撃用に使うんだからいいだろ、サッサと運ぶぞ」

 

月から飛来するBETAを迎撃するため、軌道上では核戦力の使用を前提とした迎撃プラットホームの建設が急がれていた。秋津島開発などの宇宙開発系企業が衛星を作り、国連軍が武装を施し、地球の衛星軌道へと投入する。

 

既に米国系の企業が作った武装衛星は運用が始められていたが、大量に配備するのであれば秋津島開発に話が来ない訳がない。衛星本体の製造を依頼された瞬間に地上の製造設備と宇宙港の組み立てラインが稼働を開始した。

 

「地球落下軌道をとる物体を迎撃する核武装衛星、物騒な世の中だな」

 

「BETAがいる間はいいが、戦後まで残ると厄介な火種になりそうだ」

 

 

BETA戦の最前線、北欧付近の国連軍駐屯地にて。

秋津島開発のロゴが入った輸送車輌が幾つも到着し、物によっては軌道上から補給コンテナによって投入されていた。内容物はどれも戦術機関連のものであり、予備の部品なども納められている。

 

「なーんでこんな所にまで来る必要があったんですか…」

 

「こういう場所じゃないと試験できないものもあるってことだ」

 

実地試験を行いたいというのは我が社と日本がもとより考えていたことだった。なぜなら隼は性能を見れば優秀かもしれないが、F-4と違い実戦を経験していないからだ。

 

「中国とソ連は政治的問題がある、中東諸国は宗教的な壁がある、ならもうヨーロッパ方面に来るしかないだろ」

 

個人的には近い中国方面に派兵して貰いたかったが、小規模かつ戦術機の実戦テストとなると行える場所は限られた。

 

パレオロゴス作戦の大敗後、BETAはここフィンランド領内へと向かい攻勢を続けていた。原作においては防衛戦に失敗しハイヴ建設を許してしまっていたが、この世界においては未だ睨み合いが続いている。

ヨーロッパ方面はかなり良い方向に未来を変えられただろう、パレオロゴス作戦の被害を抑えられたのが要因だろうか。

 

「それはそうなんですが、何故国連軍に混ざって我々が参戦するんです?」

 

今回は日本帝国軍としての参加ではなく、秋津島開発傘下企業として設立されたPMCとしての参加だ。帝国内で配備が始まったものの、練兵や運用体制は完全に整ったとはいえない状態で派兵することに対しては意見が割れたらしい。

現在は1981年、原作において大陸への派兵が行われるのは10年後の1991年であることを考えると無理もない。

 

「名目上は欧州連合に納品予定の戦術機を実地にてテストすることと、物資輸送や後方の警備って感じだな」

 

「よくもまあ認められましたよね、最近兵器産業の方と繋がりが出来たばっかりなのに」

 

「後退が続く戦線を見てなりふり構ってられないのかもな、BETAが湧き出るハイヴを攻略出来ていない以上はどうしようもないんだが…」

 

派遣する際に選定された機体は勿論隼だが、データリンクシステムの試作品を搭載した最新型だ。内部に留まらず外部にまで改造が行われている機体もあり、その用途は様々だ。

今回用意された部隊は中隊規模であり、支援車輌などを含めるとそれなりの数となった。しかし戦車や榴弾砲といった補助戦力は持ち込んでおらず、国連軍に任せる形となっている。

 

「志願してくれた衛士達が生きて帰れるよう全力を尽くさなきゃあならん、だから俺たちも現地に居るってわけだ」

 

「護衛の人達の手間になりますから、各所に挨拶したら帰りますよ」

 

「分かってる、分かってるって」

 

格納庫へと移される隼達はどれも肩や胸などに目立つオレンジ色の塗装がなされている。国連軍の機体が水色に塗られているのに対し、派手なカラーリングの秋津島PMC所属機は異彩を放っていた。

 

「欧州連合に隼の完成品を納入するって話も納入が近いからな、調整のためにヨーロッパを転々としなきゃならん」

 

秋津島PMCの中隊はオスカーと名が割り当てられた、今後の活躍を期待しよう。

 

 

【挿絵表示】

 

 

挨拶がわりに大量の武器弾薬、そしてセットで持ってきた嗜好品をばら撒いてひとまずは退散した。

 

 

オスカー中隊は帝国軍から抽出された衛士と最新鋭機である隼で構成された部隊であり、この北欧戦線では予備戦力として一時待機を命じられていた。

BETAを順当に処理出来たことは殆どなく、突破された防衛線を抑えるのには速力に優れる隼が適当だと考えられたためだ。

 

「…あれがA-10か」

 

防衛線をすり抜けてきたBETAを掃討するためか、比較的後方にも戦術機が配置されていた。中隊の衛士は日本には存在しない無骨な戦術機を見て、この火力を持ってしてもBETAを止めることは出来ないのかと少し恐ろしく思ったようだった。

 

「防衛線にBETAが到達したようですが、これは…」

 

「あれだけの砲撃を持ってしても、ここまでの数がすり抜けて来るのか」

 

シミュレーションでは何度も見た状況だ、光線級により砲弾は次々と迎撃されている。

 

『オスカー中隊、砲撃によって重金属雲が発生しているが強風により効果はまばらだ、対レーザーを意識して行動しろ』

 

「了解だ」

 

『一部防衛線にて既に被害が拡大し始めている、急行の準備を』

 

「聞いたな、各機最終確認だ」

 

オレンジ色の機体達は武装を確認し、四肢や兵装担架を稼働させたりして最低限の動作確認を行う。今回のために用意された試作武装も存在するため、トラブルが起こった際に対応出来るよう機体状態の把握に努めなければならない。

 

『オスカー中隊、指定ポイントまで前進し当該地区に配置されている部隊の支援に当たれ』

 

「了解!」

 

初の実戦だが、機体の飛行にブレはない。ありがとうなと一言溢すと、AIが正常に動作していることを示すビープ音が返答のように鳴らされた。

 

 




マブラヴ公式でもPMCは出る予定らしいので二次創作で出しても大丈夫。
ヨーロッパ君はまだ息をしてるようです。

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