宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

21 / 188
最新鋭機は伊達じゃないぜ



第十八話 Oscar中隊奮戦ス

度重なるBETAの襲来によってか障害物もなにもない平坦な地形を低く飛び、戦場へと急行する。前衛を担当する機体は盾をしっかりと前に向けて構え、頭部のセンサーを頼りに周囲の索敵を続けていた。

重金属雲が風によって流れ、まばらになっているとはいえ過酷な環境下でも動作し続けるセンサーに衛士は安堵したことだろう。

 

「防衛線は機能しているみたいだな、もし移動開始時に瓦解していたのなら接敵する筈だ」

 

「だが雲のせいで通信環境は劣悪だ、想定外の場所にまで流れちまってる」

 

しかし今は前進する他ない、国連軍や欧州連合軍の機体シグナルを捉えられる場所まで行かなければ。

 

「通信可能距離にまで近づけました、国連のF-4です!」

 

「索敵を怠るな、状況の把握に努めろ」

 

次々と機体のシグナルが検知され、データリンクシステムによって中隊機全てに伝達される。交戦していると思わしき機体が殆どで、通信が途絶した機体もある。

 

「部隊配置が滅茶苦茶です、これじゃあ防衛線がもう持ちません!」

 

「それをどうにかしに来たんだろうが!手始めに前方の小隊を支援するぞ!」

 

「了解!」

 

近づくと一気にBETAを示す光点が機体前方を埋め尽くし、光学センサから得た視界の情報には大量のBETAが存在するという警告表示が表示される。

 

「戦車級及び要撃級多数!」

 

「出し惜しみはするな、弾なら社長さんが幾らでも落としてくれる!」

 

戦域周辺の衛星軌道には専属のコンテナ投下艦隊が待機しているため、採算度外視で迅速かつ正確な補給を受け続けることが出来るのだ。

 

訓練通りに陣形を固め、突撃砲の36mmと120mmを使い分けて敵を倒していく。前衛も長刀は抜かず、今は射撃戦に終始していた。リスクが高い近接戦闘を初陣で行うことを避けたかった中隊長の意向だ。

 

「あ、明らかに他の機体と戦っていたBETAが、こちらに引き寄せられています!」

 

「これだけ派手にやれば寄ってもくる、撃て撃て!」

 

砲身を延長した支援突撃砲の試作型を手にする後衛機が次々と戦車級を始末し、動きやすくなった前衛が要撃級を危なげなく倒していく。中衛は前後を支援しつつ、このまま円滑に掃討が進められるよう指揮と周辺の把握に努めていた。

 

「た、助かった!」

 

「後退して部隊を再編して下さい、我々が受け持ちます」

 

AIの支援もあるのだろう、必要最低限の弾薬消費でBETAを倒し続けている。

外殻が大きな突撃級などの死骸が邪魔になれば即座に場所を移し、不利にならないように心掛けているのがよく分かる。

 

「何故部隊はここまで散り散りに?」

 

「二つの小隊が突撃級の処理に失敗して喰われた、それからはもう火力が足らなくてこの様だよ」

 

つまり接敵と同時に8機も失われたというわけだ、穴を開けられるのも無理はない。

 

「…レーダーに巨大な影、恐らく要塞級が接近して来ています!」

 

「数は?」

 

「恐らく三体、詳しい距離は不明ですが」

 

BETAは移動速度に差があるため、人類に向かって前進する際に自ずと種類毎に分かれていくことになる。要塞級は足が遅い部類に入るため、それが居るとなれば…

 

「レーザー!」

 

同じく足の遅い光線級も居るということだ。

初期照射警報が前衛の一人のコックピットで鳴り響き、中隊の機体にそれが伝達される。照射を許すまいと放たれた後衛の36mm弾は、重金属雲内という環境下でも光線級に命中した。

 

「け、警報、解除…」

 

訓練通り盾を構えて光線級撃破を待っていた前衛の衛士は、死の一歩手前にいたことを実感しながらも再度動き始めた。見るに見かねて中衛機が一機支援に向かっている。

 

「流石に全てを相手するのは厳しいな。防衛部隊の再編が終わり次第下がるぞ、それまでは気張れ!」

 

「了解!」

 

光線級が居ると思われる場所、要塞級周辺に向けて120mm砲を指向する。装填したのはキャニスター弾、所謂散弾だ。

 

「この距離なら自慢の迎撃も間に合わんだろう」

 

雲が視界を遮るため着弾した結果は分からないが、場所が割れたなら撃っておくのも良いだろう。AIによる敵移動予測地点に向けて、中隊機がそれぞれ3発ほど撃ち込んだ。

 

「ソナーはどうだ?」

 

「駄目ですね、砲撃と要塞級の音で掻き消されてます」

 

「(初陣にしては上手くいっている、機体性能に助けられているのはあるが多少の危うさはあるな…)」

 

中隊長は先ほどのレーザー照射から動きが悪くなった前衛を見て危機感を感じていた、AIが補正しきれないようで機体が持つ長刀が震えていたのだ。

 

「隊長、防衛隊の機体が再集結を終えたようです」

 

「よし、引くぞ!」

 

中隊が反転し、逃げようとした最中だった。

左翼の中隊機が救難信号をキャッチしたのだ、恐らく撃破され救助もされなかった機体だろう。

 

「…救難信号です、隊長」

 

無論中隊全てに伝達された、信号を発信する機体はそう遠くはないだろう。

 

「助けるぞ、機体を抱えてでも離脱する!」

 

「了解!」

 

防衛に従事していた機体が居なくなったことにより進行してきていたBETAを避け、或いは倒しながら先へ進む。飛行中でも正確な射撃が行えるため、移動中であっても火力が下がることはない。

ある程度進むと突撃砲の射撃音が聞こえてきた、もうすぐ近くだ。

 

「こちらオスカー中隊!助けに来た!」

 

「お、オスカー?」

 

救難信号を発していた機体は跳躍ユニットが破損しており、駆動系が死んでいるのか片足を引き摺っている。

 

「災難でしたね、さあ捕まって下さい」

 

「もう光線級が来てます、離脱しますよ」

 

二機の隼に左右から支えられ、機体ごと離脱することにしたようだ。

 

 

立て直しに成功した戦術機部隊は防衛線の再構築に成功、Oscar中隊の支援もあってBETA群の殲滅に成功した。しかし中隊機のうち一機が再度レーザー照射を受けてしまい、盾による防御と後衛の砲撃によって一命を取り留める事態になった。機体ハンガーには胸の装甲が少し焦げた隼と、レーザー照射によって大きく穴が空いた盾があった。盾は調査のため後方に送られる予定だ。

 

「…機体の性能に助けられたな」

 

中隊は機体を失うことなく実戦を生き延びた、それは紛れもない事実だが運が良かっただけだと中隊長は考えていた。

あのレーザー照射の時に後衛が二度も光線級を撃ち抜けたのは重金属雲下でも敵を捕捉出来たセンサーあってのもので、自分達が乗っていたのが周囲と同じF-4やF-5であれば死んでいたと感じたからだ。

盾を信用し過ぎるのも良くない、改善すべき事は大量にある。

 

「あの、Oscar中隊の方ですか?」

 

「その中隊長だが、何か?」

 

「伝言です」

 

機体損傷時に受けた傷を治療するため医務室送りになったが、問題なくまた飛べそうだと助けた衛士から短い手紙が送られてきたようだ。

部隊員に見せてやろうと思い、お礼を言って宿舎へと向かった。

 

初の大陸派兵、出来れば中隊全員で生きて帰りたいと願うばかりだ。




国内でひたすら訓練を受けていても、やはり実戦の空気というのは侮れないようです。

マブラヴはモブ兵士がカッコいいんですよね、須く死ぬけど。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。