宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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秋津島開発の隼は、早くも追いつかれたようです。



第十九話 米国製第二世代機と日本製第二世代機

米国においてF-14が配備され始めた。

既存の機体とは違う設計思想を具現化したその機体は、まさしく第二世代機という新たなステージに立ったことを宣言しているように見える。

 

そのことを受けて政府は秋津島開発の見解を聞きたがっていた。

社長と直属の部下は色々と仕事が多い中、その質問への回答を行わなければならなかった。

 

「隼との性能差?」

 

「はい」

 

隼は初期の初期に作ったということもあり、はっきり言ってこのままでは完全な第二世代機になることは出来ないだろう。原作における第二世代の傑作機、F-15のような機体になるには現時点では足りないものが多い。

 

「隼の機動性に関しては同等かそれ以上な筈、近接格闘戦であれば勝てる」

 

「砲撃戦では?」

 

「微妙だな、センサーの性能が追いつかれてなきゃ大丈夫だとは思うが」

 

隼は第二世代機相当の性能を持つと自信をもって言えるが、設計当時の技術不足もあって姿は第一世代機寄りだ。跳躍ユニットも米国製と大差ない、現時点で勝っていると確実に言えるのはAI補助周りだけではないだろうか。

 

「つまり最強の戦術機を持つという日本のアドバンテージは失われたと」

 

「まあ唯一無二ではなくなったわな、追いつかれるのは分かってたことだろ」

 

隼は既に大規模な配備が日本国内で行われており、また新型機を用意するというには開発スパンが短すぎる。それに隼も拡張性が無いわけではない、これから先は改修による性能向上を行っていくべきだろう。

 

「それにだ、並ばれたとはいえ負けたわけじゃあない」

 

隼の製造で培った技術、そして今も戦ってくれているオスカー部隊の衛士達から送られてくるデータによって秋津島開発は一つ上の段階へ進むことが出来るだろう。

 

「ひとまず帝国軍の兵器全てにデータリンクを実装する、半導体製造も軌道に乗ってきたからな」

 

「やはり急ぐべきだとお考えですか」

 

「オスカー部隊は光線級による被害を最小限に抑えられている、今人類に必要なのはこれだよ」

 

半導体製造と隼の戦果を交えて宣伝し、機体間のデータリンクの有効性は示した。高度なレーザー照射探知機を搭載しデータリンクに対応した機体であれば、味方と協同し光線級が最大照射に達する前に撃破可能である。これさえあれば戦術機同士との連携能力が大幅に向上し、光線級による損害を大きく抑えられるということだ。

 

「世界的に普及させるのに必要な量の高性能コンピュータ生産なんて夢物語だったが、今なら他の国を抱き込めば可能だ」

 

「コンピュータの量産なら最近やってますからね、操縦補助AIっていう名前の」

 

戦術機での使用に耐えうるコンピュータの量産体制は既に整っている、ラインを流用すれば問題なくデータリンク用の機材は揃うだろう。

 

「帝国軍のF-4系戦術機に実装するのは勿論だが、コイツは国連を通じてどうにかばら撒きたい」

 

「全戦術機に搭載する電子機器となると、莫大な利権になりますが」

 

「先ずは欧州連合、その次には米国に話を通す」

 

隼のデータリンクシステムが実戦で機能しているという事実がオスカー部隊によって証明されている、今ある機体に実装さえすれば生存性が大きく上昇するとなれば話は早いだろう。

 

「戦術機工場と共にデータリンクに必要な機材を作る工場を建てる」

 

「とんでもない額が動きますよソレ、隼の方もヨーロッパ各国の工業地帯周辺をぶち抜いて建てるって言うのに」

 

「日本国内の工場を拡張するだけじゃあ普及が遅くなる、国外も並行して一気に整備するんだ」

 

 

「…隼、以前の大戦ではOscarと呼んでいたか?」

 

「そうなるな、秋津島単独で戦術機を作ることは予想の範囲内だったが」

 

国連軍の敷地内に居るのは将校の服を着た男二人だった、普段使われていない部屋を貸し切り話をしている。

 

「F-4を上回るどころかF-14と同等の性能を持つというが、実際のところ本当の話なのか?」

 

「実戦に出たばかりで詳細な情報は無いが、国内で行われた演習の結果なら手に入れられた」

 

F-4Jと隼の交戦結果だ、衛士が機体を交換しても隼が勝利している。

10回戦って8回勝つというのは相当な差だ、特に近接格闘に持ち込まれた際には勝率が9割を超している。

 

「途中から差が大きく開いたな、これは?」

 

「操縦を補助するコンピュータを新たに積んだらしい、人工知能に関する技術が応用されていることが分かっている」

 

「…隼の操縦系統はF-4に劣っていると言われていたが、あっという間に修正してきたな」

 

彼らは既に隼に関する情報を幾つも得ていた、軍の内外問わずだ。

紛失したとされていた整備マニュアル、装甲の破片、螺子など隼に関するものなら全て掻き集めている。

 

「隼は今何処に?」

 

「北欧だ、パレオロゴスのしっぺ返しを受け止めにな」

 

「ふむ…より詳しい調査はそこで行うべきだな、身元が分からないような駒を用意しておいてくれ」

 

「了解だ」

 

二人は何事もなかったかのように部屋を立ち去り、国連軍の中に消えていった。

 




撃震で隼に勝った奴はオスカー中隊で前衛やってます。

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