宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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何やら怪しい動き…


第二十話 隼の性能 

秋津島開発の傘下企業である秋津島警備は、戦術機を用いて軍事施設などの防衛を行う民間軍事企業だ。実態は国外に小規模な部隊を派遣し、機体の実戦テストを行うという軍とズブズブな関係の組織だが…そこは置いておこう。

 

「これは?」

 

「新しい盾だ、重量は二割増しになったが強度はかなり増したぞ」

 

「二割り増しって…飛ぶのキツイぞ」

 

「だがこの大きさでだ、中々良さそうじゃないか?」

 

秋津島警備専用の格納庫には最新鋭兵器が次々と搬入されてくる、中隊の跳躍ユニットが丸ごと更新されたことすらあったほど補給は潤沢だ。

 

「盾があるからって慢心するなよ、戦場で撃たれるとなるとあっという間だぞ」

 

「分かってるよ、アイツらは本当に出鱈目だからな…」

 

初めての戦闘から数回の防衛戦を経て、衛士達は成長していた。

残念ながら中隊機が失われる事態になったこともあったが、要撃級の一撃でも潰されなかったコックピットのお陰で衛士は一命を取り留めていた。

他にもレーザーで焼かれたり、足をやられて跳躍ユニットが燃料ごと吹っ飛んだりもしたが操縦席周りはとことん頑丈だった。

 

「見ろよあの凹み様を、肝が冷えたってもんじゃない」

 

「国連軍のF-4の方が全身カチカチなのに、わざわざ隼で庇った馬鹿が良く言うな」

 

「…それはそうだが」

 

早くも隼の性能を見せつけたオスカー中隊は一目置かれるようになっていたが、その優遇されているのが一目で分かる新型機と補給体制が問題を生むこともあった。

だがまあ、彼らには彼らの苦労があるのだ。

 

「戦術機用の80mm砲って、何に使うんだよ」

 

「120mmで充分だし、砲身が長すぎて使い難いんだよな…」

 

大量に送りつけられる試験武装のテスト、改修された機体のテスト、実戦で感じたことのレポートなど課せられた仕事は膨大だ。その上PMCとして国連に雇われて来ているという建前上、基地内の警備も業務として行う必要がある。

 

「交代だ!」

 

「俺達の番が来たか、行くぞー」

 

格納庫内で待機していた二人は愛機に乗り込み、機体のシステムを立ち上げた。機体のOSと補助AIは問題なく稼働しており、自己診断でも問題は報告されていない。

 

「警備も楽じゃあないな…」

 

格納庫に帰って来た2機と入れ替わりで外に出る、機体が地面を踏み締める感覚は確かに身につけた装備を通じて伝わって来ていた。

 

 

「アレですか、極東の最新鋭機とは」

 

「派手なオレンジ色だ、アイツが間違える心配が無いのは助かったよ」

 

戦闘によって損傷した機体を一時保管しておくための格納庫にて、作業服姿の二人が何やら話しているようだ。この格納庫密集地帯に取り付けられたカメラの映像か何かを見ているのが分かる。

 

「機体は見繕ったか?」

 

「どれも跳躍ユニットが取り外されていましたが、最も状態が良いものを選びました」

 

彼らが簡易的に整備を行なったのは一機のF-4系戦術機、ソ連製のMiG-21バラライカだった。跳躍ユニットの損傷によりこの場所へと運び込まれていたため、機体自体の損傷は皆無に近い。

 

「遮蔽が多い基地内であればユニット無しでも充分暴れられるでしょう」

 

「そうだな、では始めようか」

 

バラライカのコックピットハッチが閉じ、センサー部が発光した。

話をしていた二人が退散する中、バラライカはどう言うわけか装備されていた実弾入りの突撃砲を壁に向けてぶっ放した。

 

 

「緊急だ!戦術機が暴れてる!」

 

「分かってる、場所は?」

 

格納庫の壁越しに放たれた36mm弾は隣の格納庫にまで簡単に到達し、駐機されていた戦術機を蜂の巣にした。分厚いF-4の装甲とはいえ、対衝撃性を重視したそれは砲弾を止めることはできなかった。

 

「基地内で撃つなんて、薬で錯乱したのか?」

 

「詳細不明だ、兎に角止めないと被害が拡大するぞ!」

 

燃料補給中だった戦術機が燃料ごと爆散、格納庫の一つが吹っ飛んだ。屋根の残骸がそこら中に降り注ぎ、黒煙を噴き出している。

 

「ロケット燃料がジェット燃料ごと吹き飛びやがった!?」

 

「近い、この辺りに居るぞ」

 

二人の機体構成は前衛仕様と後衛仕様だ、盾を持った前衛が先行し後衛が突撃砲で鎮圧するという戦術を想定している。

しかし格納庫が大量に立ち並んでいて視界はすこぶる悪い、不意の遭遇で機体を失うようなことは避けなければならない。

 

『聞こえるか、こちら格納庫』

 

「中隊長!」

 

『雇い主から通達だ、生け捕りにしろとさ』

 

ここまでの被害が出ているのだ、規定に従うのならば射殺が行われる状況下なのだが…

しかし雇い主である国連軍の言葉には従わなければならない、どうやって安全に機体を無力化すれば良いのだろうか。その瞬間、前衛機の衛士が何かを閃いた。

 

「80mmって使えるか?」

 

「はぁ?」

 

「あの砲の仕様書を読んだ、アレなら全部上手くいく…かもしれない」

 

後衛仕様の衛士は一瞬固まっていたが、直ぐに理解したのか跳躍ユニットを吹かして格納庫へと戻った。無線でやり取りをしつつ、作戦は一瞬で決められた。

 

 

「…レーザーが怖いな、ここは」

 

戦術機用の格納庫地帯と化したここは、本来航空機用の場所だった。そのために今は使われていない管制塔のような背の高い建物が幾つかある。

そこに陣取り、試作品だが射撃試験の結果は良かった80mm砲を構える。

 

 

【挿絵表示】

 

 

その姿はさながら人間の狙撃手だが、今回やることを考えるとあながち間違いではない。

 

「頼んだぞ、俺達の強襲前衛」

 

「任された」

 

作戦開始だ、後衛機が狙撃ポイントに着くまで牽制を行っていた前衛が勝負に出る。盾を斜めに構え、跳弾を狙いつつ追い込みを始める。

 

「そのまま直進、右手に煙を吹く倉庫が見えると思うがそれよりも奥だ」

 

「他に目標は?!」

 

「あー、ポイントのすぐ近くに建設途中の倉庫がある!」

 

後衛機に搭載された大型の光学センサはそれなりの距離があったとしても、肉眼と大差ないと感じるほどの解像度を衛士に提供する。

 

「了解だッ」

 

120mm砲を発射したバラライカを見て、脊髄反射の領域に至るまで身体に染みついた緊急回避機動を行う。その際手に持っていた盾を離し、射線上の障害物としてそのまま残した。

結果、自由落下する盾に徹甲榴弾が命中した。射線の向こう側にある建物への被害を最小限に抑えたのだ。

 

「120mmまでぶっ放しやがった…」

 

「そのまま追い込め、この距離なら拡散範囲は2〜3m内に収まるんだからな」

 

「分かってるよ!」

 

何処に突撃砲を向けても射線上に建物がある、ならば銃など使えない。

突撃砲を捨て、何も持たない両手を徐に近づけてナイフシースを展開する。

引き抜かれたのは戦術機用の短刀、スーパーカーボン製であり戦術機の装甲など簡単に両断できる。

 

「行くぞ弦楽器野郎、コックピットから引き摺り出してやる」

 

跳躍ユニットを地面と水平に向けて一気に加速、そして敵機を思い切り蹴り飛ばす。近接格闘用に強化された関節は、この程度やってのけて当然である。

短刀での攻撃に身構えていた敵機は予想外の攻撃を防ぐことは出来ず、モロに喰らうことになる。

 

「移動させたぞ、見えたか?」

 

「見えたが向きが悪い、こちらに正面を向かせられるか?」

 

「注文が多いな、任せろ!」

 

跳躍ユニットがなければ急な制動も難しいらしい、それに相手衛士の反応もどこか鈍いように感じる。

 

「さあいい子だ、こっち向いてくれ」

 

跳躍ユニットで跳躍し倉庫を飛び越え、後衛機が居る場所を背にして再度壁に隠れた。敵機がゆっくりと体勢を立て直し、両手の突撃砲をこちらに向けた瞬間に左腕が吹っ飛んだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「命中」

 

「そのまま撃て、まだ片腕残ってるぞ!」

 

「知ってる!」

 

80mm砲が放ったのは通常弾ではなく、比較的貫通力の低いフレシェット弾だった。それは細い矢のような弾頭をばら撒く散弾の親戚のようなもので、F-4系の正面装甲を貫通することは出来なくとも関節部の破壊ならば可能だった。

つまり衛士は殺さずに、駆動系だけを破壊出来る。

 

「両腕吹っ飛ばしたからな、もう抵抗は出来ないぞ」

 

短刀を構えたまま、穴だらけとなった暴走機体へと近づく。

相手はバランスを崩しながらも歩いており、こちらへと自ら向かって来ていた。

 

「おいおい、まだやる気かよ…」

 

「跳躍ユニットが無いからな、自爆は出来ない筈だが」

 

「自爆までするってお前、爆薬でもコックピットに積んでないとそんなことには」

 

低く、その上くぐもった爆発音を機体の音響センサーが拾う。

まるでコックピットの中で何か爆発でも起きたかのような…

 

 

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