宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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第二十三話 海王星作戦に向けて

隼が急ピッチで生産されているのは日本と欧州だけではない、オーストラリアやオセアニアといった国でも工場建設は行われていた。

機材を運び込みさえすれば習熟した作業員が数人居ればある程度の生産能力を発揮出来る自動工場は大いに役に立ったと言えるだろう。

 

「上からの連絡です、隼のライセンス生産を欧州連合に限り許可すると…」

 

「やっとか!」

 

海王星作戦と銘打たれたハイヴ攻略作戦に向け、戦術機の生産機数は多ければ多いほどいい。特に隼はAI補助のお陰で衛士も習熟が早いのも喜ばれた、しっかり練成しろよとは思うが時間は無いのだ。

 

 

予定されている海王星作戦のため、北欧から欧州に戦線を移したオスカー中隊の隊員はある程度の入れ替えが行われていた。

元々中隊規模以上をPMC名義で送るのは無理があるため(現状でも相当だが)、数少ない機体の回転率を上げるため衛士は機体よりも多く送り込まれていた。

そのため教導に向くと判断された隊員が後方に下り、残った隊員が中隊の衛士として今も戦っていた。

 

「我々の任務はいつも通り空いた穴を塞ぐことだ、BETA共に戦術機の強さと言うものを知らしめてやれ!」

 

「「了解!」」

 

結局のところBETAは欧州への攻勢を続けており、ハイヴ攻略作戦実行のためにはこれらの攻勢を退け続ける必要がある。これ以上の戦線後退は突入部隊の行動半径をより縮めることになり、最悪ハイヴ内で燃料切れになる可能性もある。

つまるところこの防衛戦も海王星作戦の前段階であり、参加を表明した東ドイツとも協同してBETA群の殲滅を図っている。東側に対してはリターンとして欧州で配備が進む新型データリンクシステムに関する技術が提供されることになった。

シェアが拡大するなら秋津島と帝国が拒否する理由はないが、共に戦う以上は規格を合わせたいというのが実情だろう。

 

「光線級、重光線級共に確認されているようですね」

 

「それには専門家が向かう、突入ルートが近ければ援護させて貰いたいがどうなるか…」

 

ひとまず派手に動いてBETAを引き寄せなければならない、自分達が呼ばれたと言うことは防衛線の一部が危ないということなのだから。

 

「一時的に戦線を押し上げて時間を稼ぐぞ、このまま前進!」

 

この手の戦場に慣れ切ったオスカー中隊機は次々とBETAを撃破していく。戦車級と要撃級がわらわらと集まってきたのを見て、想定通りだと言わんばかりに中衛機が砲撃で敵を沈めている。

 

「無理に仕掛けるな、撃って倒せる距離なら構わず撃て!」

 

前衛機も最低限の近接戦に留め、突撃砲による攻撃を行なっている。機体自体の損耗を抑えつつ、ひとまずはBETAの数を減らす算段だ。

 

「後方から友軍機、光線級吶喊部隊です」

 

「後衛機は肩部ミサイル斉射、道を開けてやれ!」

 

「了解」

 

左右に三つずつ装備された対地ミサイルを後衛機が放ち、前方の敵を減らそうとした時だった。高度を上げたミサイルがレーザーにより迎撃され、BETAも射線を通すために散らばり始めた。

 

「前方に光線級です!総数不明!」

 

「盾持ちは前に出るんだ、彼らを撃たせるな!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

レーザーを盾で受けることで光線級の位置を逆探知、それを確認した他の機体が曳光弾を装填しその方向を撃った。

何故曳光弾を撃つかというと、共に戦列を組む彼ら東ドイツの戦術機には未だ新型戦術データリンクが実装されていないからだ。重金属雲に阻まれる可能性を視野に入れ、無線と弾道で最低限の情報を伝えておかなければならない。

この防衛戦が終わった後には前線の戦術機に通信機材と、ブラックボックスだらけのAIブロックが配備され始める予定らしい。

 

「前方に光線級!」

 

隼が前に出たのは単純に囮となるためだが、オスカー中隊の面々は実戦を繰り返す内に自分達が乗る隼がBETAに最も狙われるということを理解していた。

そのため、レーザー照射のリスクが大きい光線級吶喊部隊の損耗を避けるために盾を構えて前に出ることは彼らにとってよくあることだ。

 

『了解した、支援感謝する』

 

「いつも通りに頼む」

 

後衛機が彼らの進行方向に居るBETAを撃ち殺し、最後の支援を行う。

オスカー中隊の任務は防衛線を保つことであり、突入部隊に追従して支援を行うことではないからだ。彼らは明らかに中隊の定数である12機を満たしていなかったが、それでもここ数回の戦闘において毎度光線級を撃滅してきたという確かな信頼はあった。

 

「…さっきの部隊、長刀を担いだ機体が混ざってたな」

 

「東にも長刀使いが居るのか、世界は広い」

 

負けられないなと弾切れになった突撃砲を捨て、長刀にて要撃級を斬り伏せる。AIによる動作の最適化、繰り返し行われた戦闘によるデータの蓄積によりその一撃は切り裂く際に全く抵抗を受けていないようにも見えた。

 

「光線級さえ居なくなればこちらの物だ、今はここを死守する」

 

「要塞級が接近して来ていますが」

 

「3匹程度問題ない、まずは雑魚を蹴散らすぞ」

 

この後光線級吶喊は成功、砲撃と爆撃によりBETA群の攻勢は終わった。

突入した部隊は無事だったのかは分からないが、彼らはこの戦場で死なないだろうという何か確信じみたものがあった。

 

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