どうにか毎日更新が継続出来ていましたが流石にそろそろ間を開け、今後の展開を練っていこうと思います。挿絵の作業も並行して進め、この作品をしっかりと完結させられるよう精進します。
ここまで多くの感想と評価をもらえるとは思っていなかったので少々驚きましたが、慢心せず頑張って行きますので!
追記 表紙追加しました、読了報告などでTwitterにリンクを貼ると見ることが出来るそうです。なんじゃコイツ!?ってなると思うので是非。
海王星作戦が開始される少し前のこと。
宇宙港あかつきがいつも通りに搬入作業を行なっていると、普段とは違うものが運び込まれた。それは爆撃に使用するカーゴにギリギリ納まる大きさの戦術機であり、見るものが見れば米国製のF-14だと断定出来るだろう。
国連軍仕様の塗装が施されたその機体は大量の搬入予定が組まれていた。
「ミサイルまで運び込んでやがる、フル装備だな」
「ハイヴ攻略支援を行う予定の軌道降下部隊だとよ、これから試験場目掛けて降下訓練だ」
F-14の高い機体性能、大柄な機体が持つ積載量、搭載兵器として開発されたフェニックスミサイルの持つ大火力。数回の降下試験をクリアしたこの機体は国連軍軌道艦隊への配備が進められている。
試験降下中にミサイルが誤作動を起こし機体が吹っ飛ぶという事件もあったが、修正された今となっては頼れる兵器だ。隼もミサイルを搭載可能だが、既存のミサイルを改造したものでしかなく火力には不満が残る代物だった。
「秋津島開発も色々と改修には関わったんだって?」
「米国とは昔のゴタゴタで仲が悪かったんだが、最近は目立たないところで接触を繰り返してるらしい」
秋津島開発は国内三社と共に近年戦術機に関する技術交流を行っているらしく、曙計画にて作ったコネを有効活用しているとか。
F-14より小型な隼を降下兵団に採用する動きもあったが、隼で培われた装甲の一体成形技術を利用した場合に大きなコスト低減と内部容積の余剰が生まれることが分かったのだ。降下兵団用の改装を行うのならば都合が良く、隼の新規生産分は欧州連合が全て買い付けていたため使える機体が無かったのも大きかった。
F-14に使用される新型装甲材を自由自在に成形し、コスト増大の理由となっていた独自規格のパーツの使用箇所を減らすことに成功した。ミサイル運用のために複座式だった管制ユニットは補助AIの搭載により、一人での操縦が可能になっている。
「接触した結果向こうに渡ったのは製造と操縦の基幹技術じゃねぇか」
「AIは搭載しただけらしい、中身までは教えてないとかなんとか」
流石に渡す所と渡さない所は弁えているらしい。
「米国で隼の製造を行わせるってな、絶対他にも裏で取り決めはしてるだろうがな」
秋津島が代わりに得たものとはなんなのだろうか、それは中々深い事情まで把握する二人を持ってしても知ることが出来ない領域だった。
「連隊規模にまで拡張予定の降下部隊は全部F-14で構成されるってよ、あかつきも流石に抱えきれない数らしい」
米国の最新鋭機であるF-14を国連軍で運用するというのは政治的なハードルが大きかったが、衛士や整備士を米国関係者で固めることで合意に至った。これによりあかつきには大量の米国軍人が移籍することになり、拡張したばかりの居住区画はまたも満員となってしまった。
「だから二つ目の宇宙港を作るって話になってるのか、搭載量の多い巡洋艦が一気に増えたのもこのためか?」
「かもな、爆撃用の艦隊を縮小するのは地上から猛反対されたらしい」
軌道爆撃がパレオロゴス作戦後に敗走する部隊をどれだけ救ったか、それは筆舌に尽くし難いものだ。神格化されてしまった彼らは過剰とも言える戦力にまで拡張される予定であり、更にはその体制を維持することを迫られてしまっていた。
「秋津島は頭抱えてますよ、打ち上げ施設が幾らあっても足りないって」
「だろうな」
ー
最近激務が続く秋津島開発の社長だが、一息入れようといつもの執務室に戻ってきていた。護衛の方々が視界の端に映っても気にしなくなりつつある自分の適応力に驚きつつ、駆け寄って来た秘書の話に耳を傾けた。
「種子島のマスドライバーが一基ぶっ壊れました、復旧に一ヶ月かかります」
大事件である。
「…マジか、まあ無理させてたのは確かなんだが」
米国の打ち上げ施設も軌道降下部隊向けの戦術機を連日打ち上げ続けており、各国の宇宙関連施設には過負荷状態が続いていると言っていいだろう。
より強力な打ち上げ能力を持つ施設の建造、開発は行っているとはいえ間に合っていないのは確かである。
「巡洋艦の配備で艦船の数を圧縮出来るかと思ったんだがなぁ」
「アレは打ち上げられるのが我々の最新型マスドライバーだけなのがネックですよ、宇宙で建造出来るのは良いんですが地上で数を作れないのは痛かったです」
何もかも上手くいく、というわけにはいかないようだ。
今回の故障によって輸送量は少し落ちてしまうが、建造中の新たなマスドライバーが稼働すれば一気にプラスだ。今は我慢すべき時、余裕を持って運営できるように努力を続けなければ。
「種子島はもう埋め立てが進みすぎて、島の原型がもうないレベルになってるんだよな」
「次の用地確保も課題の一つですね」
まだまだ安定するには時間がかかるようだ、もっともBETAにそれを大人しく待つ義理などないのだが。
「それより返礼品の受け入れはどうだ?」
「あんな馬鹿でかい上に作りかけの実験機、どうするんですか…」
大型輸送船がコンテナではなく、何かの部品を大量に載せて港に到着したのだ。表向き隼の量産に関する話をしに米国に飛んだとしていたが、本当の目的は計画の停滞が深刻化していたある計画について手を出すことだった。
「対価は中々だったが、コイツは世界を変えるポテンシャルがあるからな」
「…テストパイロットをまとめて事故死させたような機体がですか?」
「確かに事故は起きたがな、それはメインコンピュータがヘボだったからだ!」
宇宙港の特殊実験棟で作り上げた超高性能コンピュータがあれば実験機は動くだろう、まあ戦闘が可能かと言われるとまだ無理と言わざるを得ないが。
「まあ確かにあのデカブツはそこまで大事じゃあない、参考にする程度だから安心しろ」
実験機からは荷電粒子砲と頭部センサーが丸ごと取り外され、場所によっては装甲も剥がされフレームが剥き出しになっている。機密保持の名目で動力炉以外をあらかた持って行かれた影響で、到底起動できる状態ではない。
秘書はぼったくられたのではと項垂れたが、社長が取り出した大容量の記録媒体とその資料を見て目の色を変えた。米国により極秘と書かれた紙束が添えられたそれは、今や秋津島開発の手の中にあったのだ。
「して、これはなんだと思う?」
「…これって、まさか機体制御系のマスターコピー?!」
そう、この機体を動かすためのソフトウェアだ。ハードウェアは幾らでもこちらで作れるが、ソフトウェアばかりは難航が予想されていた。
しかしスクラップの名目で売却される実験機の状態に口を出さない代わりに、ソフトに関してはどうにか手に入れたのだ。
「見てろよ、ハイヴというハイヴは文字通り消し飛ばしてくれるわ」
原作における最終決戦兵器、その雛形は紆余曲折を経て日本へと辿り着いたのであった。
秋津島に来たのは初期も初期の実験機