宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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お年玉投稿、おやすみはまだ続くので次回投稿は未定です。


第二十四話 兵站問題と無人機

秋津島開発の戦車開発が行われ始めたのは最近のことだが、社長が書き上げた設計図をもとに試作機が完成していた。搭載された120mm砲の反動問題、装輪式故の走破性問題など改善すべき箇所は多々あったが、ひとまず実機が走るまでに至ったというのは大きな進歩だった。

 

「やっぱり整備された場所専用になるか、これじゃあ」

 

「ですね、無人化にはうってつけの兵器なんですが…」

 

いつもの社長と部下は試験中の多脚車輌を見ながら報告書に目を通していた。

月面用の四脚作業機械が原型であるためか、兵器としては失敗作であるのは間違いなかった。舗装された道路上であれば高速で移動でき、120mm砲も問題なく発射出来るのだが不整地となると…とことんダメだった。

しかしまあ、ここまでボロカスに言われようとも光るものもあったのは確かだ。

 

「フルパワー出せれば突撃級を振り切れるって話も嘘じゃない速度ですね」

 

「超伝導モーターは伊達じゃないぜ!」

 

軽すぎて機体が浮いてしまうという弱点はあるが、その快速性は確かだった。

やっとコイルがあったまってきたのによとBETAに悪態をつけるレベルであり、現時点でも時速120kmは容易に出せる。

車体が軽すぎるがまだ動けるのは、主砲がいい重りになってくれているからだろうか?

 

「着脱式の装甲を取り付けて、砲弾を乗せて、脚部の反動軽減機能を強化して、更に色々と装備を載せれば…」

 

「問題は解決しますか?」

 

「今度は重くなり過ぎる、どうしたもんかな」

 

砲塔は無人化され、必要な人員は一名のみだ。脚部は自動制御され、複数の関節部に使用された電磁収縮炭素帯(人工筋肉のようなもの)が動作と衝撃の吸収を担う。

 

「今のところ滅茶苦茶酔うらしいです、乗り心地は最悪だとも」

 

「姿勢制御が未熟も未熟だからな、むしろ良く乗せやがったなお前ら」

 

「AIでの試験動作も限界があるので、現状テストするなら優秀な方に乗ってもらうのが一番確実ですし手っ取り早いんですよね」

 

ひとまず実戦投入は不可能、改良を続けるべきとの判断が下された。

 

しかしあることを閃いた、まず戦わせなければ良いのでは?

現状問題になっているハイヴ攻略における兵站確保のため、無人化したこの車輌にコンテナでも乗せて投入すればいい。軽かろうと砲塔を外し、上にコンテナを乗せれば嫌でも重くなるだろう。

 

「無人化した上で補給車輌として攻略部隊に追従させる?」

 

「現状でも追従させるのなら可能だ、コイツの機動性なら多少の改造でハイヴ内の戦術機を追いかけられる」

 

「BETAに鉢合わせたらどうしようもないですよね、ソレ」

 

「…そういやそうか、自衛能力無いもんな」

 

あっさりと否定されてしまったが、ハイヴ攻略部隊に追従出来る補給機は研究を進めるべきなのかもしれない。

 

「改造するなら順当に開発中の超電磁砲を載せられるようにしたりした方がいいか」

 

「でしょうねぇ、試製四号がテストしてますが実用化出来そうですし」

 

「補給車輌案は無かったってことで、取り敢えず国内だけでも使えるように仕上げよう」

 

 

あれから数十日後のこと、社長が書き上げた設計図をもとに出来上がったある機体が格納庫へと移送された。

 

「なんですかコイツ」

 

「ああ、試しに出力してみた実験機だよ」

 

格納庫にて鎮座していたのは上半身がないという異形の戦術機だった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「脚部は簡略化、跳躍ユニットだけは隼と同レベルの物を載せてるから推力はある」

 

本来ならば戦術機の膝にはコの字に関節が配置されており、その数は膝パーツを稼働させる分も含めれば5個にもなる。

しかしこの機体は膝の関節を3つにまで減らし、逆関節にすることで簡略化しつつもある程度の性能を確保している。

 

「何に使うんです?」

 

「そりゃアレだよ、前言ってた戦術機に追従可能な補給機としてだ」

 

BETAに遭遇しても飛んで避けられる、戦術機と同様の機動力は待っているために追従することは可能だろう。AI同士のデータリンクに関しても研究は進んでおり、親となる有人機が子である無人機に対して常に指令を出し続けることで柔軟な対応を可能にするシステムが試作品ながらも実装されている。

 

「背中のコンテナは戦場に投下される補給コンテナよりは小さくなったが、それでも戦術機4機分の予備弾倉を載せても余りがある」

 

「あの、股に装着されてるのってまさか」

 

「S-11だな、コレは形だけのダミーだが」

 

小型戦術核並みの破壊力を持つ爆弾だ、ハイヴのコアを破壊するために搭載される。現時点では最奥に何かがあるはず…程度の認識しか無いのが問題だが。

パレオロゴス作戦以降、人類は地下茎構造が続いているということ以外ハイヴに対しての知識を持たないのだ。

 

「爆弾担いだ機体に乗って、その上ぶっつけ本番で何かするしかないですからね。打ち上げた惑星探査機は地上構造物の真下に何かあると示していますが…」

 

「あるとしたらそこだろうな、行ってみないことには何も分からない」

 

ハイヴ攻略のため出来ることはまだある筈だ、作戦決行までにあらゆる準備を整えておかなければならない。

 




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