宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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またしばらくお待たせすることになると思います、またプロットが死んで次回以降の四話ほどを書き直す必要がありそうでして…
そのせいで別の二次創作に逃げてました、そっちも近いうちに第一部を丸ごと投稿すると思います。


第二十五話 連合軍進軍ス

海王星作戦の第一段階である防衛線の維持を達成した欧州連合は、第二段階へと作戦を進めることにした。ハイヴ攻略の橋頭堡を確保するべく前線を押し上げつつ、ハイヴ内のBETAを釣り出し数を減らす突入準備が第二段階の内容だ。

 

第二段階のために用意された戦力は次々と基地に集結している、慣らし運転を兼ねて飛んでくる機体も少なくない。基地に編隊飛行した戦術機達が集う様子は士気高揚には打ってつけだと言えるだろう。

 

「大隊規模の隼ですよ、圧巻ですね…」

 

「欧州連合の部隊か、ここまでの数が前に出されるとは意外だな」

 

ハイヴ突入部隊用に温存するかと思ったが、日本帝国からの輸出分が思いの外多かったのか別で用意することが出来たらしい。

数が多いF-5系が今回の攻勢における主力となり、F-4改修型である中隊支援火器搭載型が戦術機に追随して支援を行う新戦術を試す気とのことだ。

その際に予備戦力としてこの隼が投入され、オスカー中隊のように空いた穴を塞ぐように運用されるとか。

 

「我々は防衛線にて新兵器の実戦テストを継続、隼の改修機を何処まで使い熟せるかですね」

 

「ハイヴ突入用ってヤツか、中国の方と話があったとは聞いたがな」

 

 

【挿絵表示】

 

 

爆発反応装甲に身を包んだ隼が中隊には配備されており、内部も長期戦を見越して消費電力が少ない電装品に換装してあるらしい。

 

「我々も日本帝国軍に戻ったか、なんというか不思議な気分だな」

 

灰色の塗装、赤い日の丸、少し前まで着ていた軍服。

どれも懐かしく感じるもので、それほどにここ数年の戦闘は激しく記憶に残るものだった。

 

「秋津島警備所属と呼ばれ過ぎましたね、我々も長いですから」

 

世話になった整備員も皆が昔と同じだ。

変わったのは身につける制服が目立つオレンジ色の秋津島警備のものではなく、地味な日本帝国軍のものになったという程度である。

 

「秋津島は我々に対しての支援を続けて下さるそうですが、試作機などは秋津島警備所属扱いになるそうです」

 

「…だからアレはオレンジ色なわけか」

 

急遽運び込まれた新型機は帝国軍と同じ灰色の塗装に、秋津島警備のパーソナルカラーであるオレンジ色が合わせて使用されている。背負った新型兵器に帝国軍は相当御執心らしく、以前使っていた秋津島警備仕様の隼がそのまま護衛として配置されている。

 

「護衛には隼の小隊が着きます、帝国軍からの新人ですね」

 

「初陣が護衛か、矢面に立たせるよりは余程マシだな」

 

作戦開始時刻まではまだ少し時間がある、格納庫に増えた新顔を見て回るのも悪く無いだろう。

 

「こっちが無人機か、よくもまあこの短時間で新型をポンポンと作るもんだよ」

 

「これは、とっても可愛らしいですね」

 

「弱そ…え?」

 

無人機として開発され、コンテナを背負う機体は思いの外好印象で迎えられた。毎度毎度宇宙から補給コンテナを投下していた秋津島警備部隊だが、帝国軍がその補給にかかる金額を見て腰を抜かしたので即座に投入されたという経緯がある。

毎回補給艦隊が戦場の上空に必ず一隻は居るように軌道を周回しているというのは、はっきり言って異常なのだ。

 

「いつでも補給を受けられるのはいいな、速力は?」

 

「我々より少し劣る程度ですね、そこまで遅れをとることはないかと」

 

大量の武器弾薬を搭載し、戦術機に追従可能な補給機の存在は既に欧州連合にも知られている。ハイヴ突入部隊の補給に頭を悩ませていたが、ここに来て解決策が突然現れたのだから無理もない。

 

「この攻勢で問題が無ければ向こうも使いたいそうです、秋津島開発がせっせと作っているらしいですが…」

 

「大変だな、需要が全然満たせていないってことなんだろうが」

 

そうこうしている間に機内待機時間となってしまった。

二人は用意された機体に乗り込み、愛機から載せ替えたAIの存在に安堵しながら操縦桿を握った。

 

「よお相棒、今回は中々デカい作戦だぜ」

 

 

攻勢を行うとは言うが、全軍で前に出るわけではない。

BETAはこちらに真っ直ぐ突っ込んでくるという生態を利用し、あらかじめ布陣した部隊へと誘因して砲撃にてリスクを抑えたまま撃破するというのが今回の作戦だ。

 

『陽動部隊がBETA群の誘因に成功した、二個師団規模のBETAがこちらに向かい進行中だ』

 

「我々の任務は?」

 

『試作機の護衛だ、全機で指定のポイントを維持しつつ各試験項目を完済せよ』

 

護衛と共に予定していた座標に布陣した日本帝国及び秋津島警備の混成部隊は、新兵器を搭載した試作機を守るように展開している。

護衛の四機は囲むように陣形を組み、帝国軍機は正面を抑えるように分厚く機体を配置していた。

 

「データリンク正常、試作機はどうか?」

 

「機体に問題なし、現在試験項目の5件目を実行中」

 

試験機に乗るのはオスカー中隊で後衛を務めていた衛士であり、その射撃の腕を買われて試作機のテストパイロットに抜擢された。

その冷静さは確かなもので、問題がいつ発生するか分からない試作機に乗る人材としては最適解に近いだろう。

 

「…接敵まであと30分、この時間だけはどうにも慣れませんね」

 

「事前に散布された地雷と砲撃で数は減っていると思うが、どうだかな」

 

「今回の攻勢に軌道艦隊は参加しないんですか?」

 

いつもの盛大な爆撃音は今回響いていないし、軌道艦隊からの通信はない。

ブリーフィングでも軌道艦隊の支援は特にないと言われていたが、何故なのか彼には分からなかった。

 

「次がハイヴ攻略だろ、そのために今は爆弾を温存してんだよ」

 

「よくよく考えると建設の遅延を狙って延々と爆撃してましたね、少しは準備の時間が必要ですか」

 

軌道艦隊は現在全艦隊の爆装を進めている。

ハイヴ攻略の前段階として爆撃を行うためというのもあるが、この攻勢が失敗した際の撤退支援を行うために待機を続けているという兵士には知らされない理由も関わっていた。

 

「まあ気負うな、今まで以上の砲撃密度が俺達を守ってくれる」

 

「超電磁砲の起動完了、発射準備体制に移行します」

 

「…もう待機中の試験項目が終わったのか、後は実戦で消化しないとな」

 

「隊長殿、くれぐれもコイツの射線上に立たないで下さいよ」

 

試作機が展開した超電磁砲は機体全長に迫る長さであり、地平線の向こうに居るであろうBETAを今か今かと待ち構えていた。人類反撃に大きく貢献するであろうと上層部から太鼓判を押されたソレが、この世界線の歴史に名を刻む瞬間は近い。

 


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