宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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新型戦術機の前に別の新型をお披露目です。

なんかランキングに舞い戻ってる…!
マブラヴの二次創作増えてくれ、投稿始めたとか教えてくれたら支援絵とか毎日描いちゃうから!


第三十三話 衛士の戦友

AIが戦術機に搭載され始めてからある程度の時間が経ち、秋津島開発はそれに関する新たな製品を完成させていた。

 

「AI用の外骨格だ、戦術機の背中あたりにスペースを作る必要があったが搭載は可能だな」

 

「…えぇ?」

 

 

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それは以前見たロボットとは大違いであり、体格も人とはかけ離れていた。

格納状態では四角く折り畳まれ、コンパクトな状態になるのも異形感を増す要因となっている。

 

「何に使うんですか、これ」

 

「衛士が脱出せずに自爆するか自殺するからな、引っ張り出すためだ」

 

BETAからの打撃を受けて緊急脱出が不可能になった際は強化外骨格を身に纏い内側から戦術機をぶっ壊して外に出る必要がある。この時点で中々ハードルの高いことを言っているのだが、大抵戦術機で脱出したとしても外に居るのは自分と比べて何倍もの大きさがあるBETAだ。

 

「まあ逃げる気も失せるよな、戦場で大破した戦術機から人が生還する確率ってのはかなり低い」

 

「AI用の外骨格を搭載したとして、生きて帰れないなら意味ないのでは?」

 

「脱出の際の支援もコイツの役割だがな、遠隔操作も出来るようになってるんだよ」

 

試験用の戦術機には外骨格用の格納庫が背中に増設されており、その箇所だけ分かりやすいようにオレンジ色で塗装されている。

社長が担当の社員に合図を送ると、機体は試験場に向けて走り出した。

 

「試験場にテストの用意をしてある、ひとまず行こうか」

 

「お乗りください、運転は私が」

 

護衛さんが乗って来てくれたのは以前製作した多脚戦車であり、武装を廃して頑丈な護送車両へと姿を変えていた。歩行と走行を切り替えられ、地雷を踏んでも機内に被害が及ばないという利点から護送車両として少数だが運用されているらしい。

 

「…久しぶりに見ましたね、この子」

 

「今は俺らの管轄じゃないんでな、国内三社が弄ってる」

 

開発チームも縮小されたが一応参加している、次期主力戦車ということで国内三社は本気だ。サイズの問題からして超電磁砲の搭載には至らなかったが、戦術機に搭載されているAIを用いての省人化、無人化に関しては相当研究が進んでいる。

 

「あの時の揺れが嘘みたいですね、これは」

 

改良されたことで安定性は増し、乗っていても揺れは乗用車と変わらないかそれ以下だ。だだっ広い試験場には様々な状況を再現するため、多種多様な障害物が配置されている。市街地、都市、田園…よくもまあ再現したものだ。

 

「そろそろ見えて来たぞ、あそこだ」

 

「…別の戦術機がぶっ倒れてますけど」

 

「救助訓練用のダミーだ、まあ見てな」

 

狭いハッチから2人で身を乗り出して双眼鏡を覗く、試験用の機体は突撃砲を構えて周囲を警戒しているようだ。突撃砲を様々な方向に向けたかと思えば、空砲をバカスカと撃ち始めた。

 

「あれは?」

 

「仮想訓練だよ、操縦してる衛士の視界にはコンピュータ上で合成されたBETAが投影されてる」

 

本来であればコックピットから降りて危険な戦場を走り、救助対象のコックピットハッチにまで辿り着かなければならないが今回は違う。背中のハッチが開いて外骨格が展開され、垂らされたワイヤーを伝って地面に降りていく。

 

「衛士は戦闘だけに集中出来るし、AIは大破した機体側のAIとも連絡し合うことで最適な救助活動が可能と言うわけだ」

 

「おお!」

 

機体の破損状況や倒れた向き、前と後のどちらから救出するのかなどはAI同士の情報共有で最適な行動が選択出来るようになっている。危険な状況に衛士を晒さなくとも救助が行えるというのは本来なら最も早期に開発したかったものだ。

 

「AIがやっとここまでの判断を行えるようになったからな、研究を続けていた甲斐があったよ」

 

「あっ、衛士を救助しましたよ!」

 

衛士と書かれた黄色い人形を外骨格は掴み、大破した戦術機から母機へと帰還する。コックピットハッチを開けて要救助者を内部に格納し、自分は背中の格納庫へと戻っていく。

 

「本来であれば援護する機体も存在するが、単機でも救助が可能な点を確かめたくてな」

 

「素晴らしい製品じゃあないですか!」

 

「戦友を見殺しには出来ないがせざるを得ない、そんな状況を無くすのが全自動救助ってな」

 

試験の成功に歓声を上げる現地の社員と軍関係者を尻目に格納庫へと戻り、多脚戦車もとい多脚護送車両から降りる。次に向かうのは屋内試験場であり、拠点内に侵入したBETAとの戦闘を想定して設計されている場所だ。

 

「これは?」

 

「歩兵用の外骨格にAIを搭載して試験してんの、流石に全員を無人機に変えられないから司令役として人間は必要だがな」

 

彼らの視点を見ることが出来るディスプレイには、迫り来る小型BETAが映っていた。無人機はしっかりと戦闘を行えているように見えたが、複数の無人機が上手く協力出来ていないように見えた。

 

「データリンクは上手くいってる筈なんだがなぁ、やっぱり無人化には更なる最適化が必要だな」

 

「でもここまで出来るようになったのなら相当やれることは広がりましたよね」

 

「ああ、目指せ犠牲ゼロだ」

 

 

後日、また別の試験場に来ていた。

屋内試験場の一室に用意されたのは秋津島開発製の管制ユニットであり、所謂コックピットだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「秋津島開発製と米国製の違いは何か」

 

「最初からAI搭載を想定していたか否か、それと」

 

「それと?」

 

「無重力空間での運用が可能か、ですよね」

 

秋津島開発製の管制ユニットは密閉型であり、米国製と比べて僅かに耐熱性が高い。機体が変形した際の脱出や救助は米国よりも困難だが、外装がシーリング材としての役割を果たすために破損した際に飛び散る金属片から衛士が守られるという違いがある。救助のし易さをとるか、負傷のしにくさをとるかは議論が別れているところだ。

 

「そうだ、宇宙での緊急脱出を可能にするために密閉型になってるってわけだな」

 

可動式のアームに接続されたモニタとボタンがコントロールパネルとしての役割を持ち、米国と比べて可動するため操作の簡便さや見やすさにおいて勝るが破損の危険性と耐久性で劣る。

 

「このモニタアーム、宇宙ステーションで使っていたものと同じじゃあありません?」

 

「そりゃあそうだ、このコックピットは元々建設作業用のMMUに使う予定だった奴だからな」

 

戦争が始まってからは内部が戦闘用に改められたが、装備に関してはある程度踏襲されていたのだ。

 

「コイツは超電磁砲の発する電磁波対策を施し、AIとの相性を底上げし、更には自動救助に対応した最新版だ」

 

「…見た目もサイズも変わりませんが」

 

「変わったら戦術機に入らなくなるだろ!」

 

 




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お礼を言うのが少し遅れてしまいましたが、本当にありがとうございます!

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感想以外にもUA、お気に入り登録、しおりなど伸び続けていて驚いています。最近はここすき機能でハイライトされた小説内の文字を見てニヤニヤしてます、これからも秋津島開発をよろしくお願いします!

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