と言うわけで、挿絵の供給が絶たれた上に打ち慣れたキーボードとも暫しの別れとなってしまいました。
今後どうなるかは不明ですが、場合によっては閑話辺りを挟んで時間を稼ぎます。
欧州の最前線では崩壊した橋頭堡の近くに新たな拠点が設営されていた、どうにか押し上げることに成功した防衛線は維持出来ているらしい。
その間オスカー中隊は超電磁砲の実戦投入を間に合わせるため、少し後方の国連軍基地の一角にていつも通り試験を行なっていた。
「…まさか試作機が3機も来るとは」
「俺達を処罰する気はないらしい、これで秋津島から送られて来た機体は壊れる寸前まで使って良いことが分かったな」
「冗談じゃ済みませんよそれ」
一週間前に軌道上から降って来たのは三機の戦術機で、先の戦闘で損傷し送り返した試製四号の先行量産機らしい。部品を交換することによって様々な局面に対応するという謳い文句通り、三機はそれぞれ違う装備を身につけていた。
「まず中央の1番機は汎用型で、背部に短砲身タイプの超電磁砲が装備されています」
「短いのか」
「近接戦、射撃戦において既存の120mm砲と同じ運用がなされることを想定しているそうです」
試製四号と比べて半分ほどの砲身を持ち、肩部装甲やナイフシースは癖のないシンプルなものが装備されていて使い勝手は良さそうだ。資料を見れば延長砲身もオプションとして選択可能であり、試製四号と同じ運用も出来そうなのもいい。
「右の二番機は強襲掃討型、肩部のサブアームが特徴で扱える火器の数が増えています」
「超電磁砲が無いが」
「背部兵装担架を用いてですね、なんと突撃砲六門同時射撃をやるそうです」
とんでもない機体が入って来た、超電磁砲よりも不思議度で言えば上になるだろう。何故腕を肩から生やしたのか、秋津島の考えることはよく分からない。
資料を見ると超電磁砲を搭載することによる通常火力の減少を補うための機体であり、超電磁砲の威力が過剰になるような相手を一手に引き受けるらしい。
「左の三番機は凄いですね、連射可能な超電磁砲搭載型ですよ」
「連射、続けて撃てるのか」
「発射速度は遅いですが、それでも十分ですよ!」
腰部の予備弾倉入れは丸ごと超電磁砲用の弾倉となっており、肩部も射撃時に超電磁砲を保持するためのアームが生えている。こんな機体が居るならば二番機が頑張らなくてはいけない理由も分かってきた、中々にぶっ飛んでいる。
「で、コイツらの試験をすればいいのか」
「ですね、実戦投入も行なって欲しいと書いてあります」
「…上手く行くといいんだがな、毎回毎回勝てるわけじゃあないぞ」
ある指示を整備班に出そうとすると、ニヤニヤしながら部下が着いてくる。
「で、機体は秋津島カラーに塗るんですか?」
「塗る、白とオレンジで試製四号と同じようにな」
ー
「…なんつう機体だァ!?」
「スロットルに気をつけて下さい、すっ飛びますよ!」
熟練の衛士達は隼とは全く違う操作感の疾風に振り回されていた。
見た目に反して軽い機体重量、隼よりも推力が高い新型跳躍ユニット、下に寄った重心など要因は幾つもあった。
『下手に足を振るとバランスを崩して失速しやがる!』
『whoop whoop!pull up!pull up!』
『安心しろ、堕ちやしないって!』
AIがいつもであれば出さないような警告音声を発している、ガタガタに崩れた機体バランスを察知してのものだろう。低空飛行を行っており、地面との距離が近いのも訓練モードに入ったAIが警戒する理由の一つだった。
「今までとは違うんですよ、動かし過ぎなんです」
AIによる補助に必要な操縦データの蓄積が出来ていないというのも彼らが上手く乗りこなせない原因だ、AIも既存の機体と全く違う重量バランスを持つ疾風の姿勢制御など経験したことがない。
「空力を気にする必要はありません、それよりノズルの向きに気を配って!」
「指定チェックポイント通過ァ、目標タイムからプラス6秒」
『曲がれっての!』
隼とは勝手が違う、暫くの間は飛行訓練を続ける必要があるだろう。
部隊員の様子を見るに見かねて試験飛行ルートにまでやって来たのは試製四号に乗っていた後衛の中隊員だ。
「酷いもんですね」
彼は相棒のAIを小脇に抱えながら現れた、背中にはAIを動作させるためのバッテリーを背負っている。現状彼が欧州で唯一疾風を乗りこなせる衛士だと言っていい状況だ。
「そりゃそうでしょう、全く新しい機体なんですから」
「アイツを振り回すには足っていう二本の重りを上手く振り回す必要があるんですよ、こう…くるっとね」
手で人を作り、人差し指と中指を足に見立てる。
激しい方向転換が必要なら足を大きく回せば、回転によって生まれたひねりが上半身の向きを即座に変える。
「アイツは超電磁砲の搭載が前提なのもありますから、反動に耐えるために下半身を重くしてあるんです」
「…よく試製四号で撃ちながら飛びましたね」
「はは、まあ重心移動に慣れてしまえば楽ですよ」
『言われて出来るかッ!』
機体を振り回し過ぎたことで大きく傾き、足先が地面と擦れる。
どうにか立て直すも、チェックポイントを示すポールはまだ遠かった。
「指定チェックポイント通過、目標タイムからプラス12秒だ」
『あ゛あ゛』
『Too low!』
『低いってなんだよ、高度を上げればレーザーが来るだろうがッ!』
操縦席でAIと衛士が喧嘩すると言うのも見慣れた光景だ、あの衛士が多少感情的になりやすいということもあるが。
『Beeeep!』
『絶対に今文句言っただろテメー!表でろや!』
「…まーた始めましたよ、次の機体準備して下さーい」
呆れながら次の機体を出発させる、3機しかないとはいえ乗り慣れるためには飛行時間を重ねるしかない。
『外骨格起動、背部格納庫に近づかないで下さい』
『ちょっ、それはズルいだろ!』
『…中止します』
仲が良さそうで何よりだ、見ていた衛士達は毎度毎度飽きないなと笑いながら次の機体に視線を向けた。
ー
ひとまず3機の特性はある程度把握出来た。
無論弱点なども見つかったが、ひとまず1番機から纏めていこう。
「無難だな、試製四号の正当な進化系といったところか」
「操縦特性に関しては衛士とAIが乗り慣れればなんとかなると思いますが、隊長は何か見つけました?」
「超電磁砲を撃った時のノイズがどうなるか気になってたが、もう気にもならない程度に軽減されてたからな…言うところ無しだ」
超電磁砲という他には無いアドバンテージを保持しつつ、高い機体性能を持ち戦闘において隙はない。問題は状況によって武器を持ち替えられないことだが、補給機に手渡して貰えば万事解決だ。
「次は二番機です」
「あんまりにも機体を振り回すと肩のサブアームがブレる、あと全長が短い新型突撃砲の使用が前提に設計されてるもんで従来型を使うと更にブレる」
「ですがBETA相手にばら撒くには問題ない程度のブレですよね」
「遠距離狙撃をやるわけじゃあないならな、大抵敵との距離も近い」
ナイフは振れるが長刀は流石に厳しい、というより機体全てを使って振るう長刀は身体の一部だけが動くサブアームとは相性が悪い。
「コイツが居れば戦車級はまとめて挽肉だな、火力を集中させる方向を指定すればAIが勝手に狙ってくれるのも楽で良い」
従来機も自動で狙いを付けられたが、臨機応変さが違う。
120mmの使い所、36mmでの弱点狙い、どれも熟練衛士レベルだ。
「試しに両腕は自分で、肩と背中の四門はAIに任せて動かしてみましたが腕に突撃砲がぶつかったことはありませんでした」
知る限りの機動を試したが、全て避けられた。
射線に腕が重なりやすい長刀などとの併用も行ったが、全く問題無かった。
「…どういう制御してんだ、それ」
「昔でも避けてくれましたが、今回は腕が二本増えたんですけどねぇ」
突撃砲六門の使い勝手は思いの外良かった、それに超電磁砲を搭載していないのでサブアームを差し引いても機体は軽く機動性は1番機以上だ。
「三番機は、なんというか潔いよな」
「ですね、超電磁砲以外武器が乗ってませんからね」
超電磁砲と干渉するパーツを外したがために腕部のナイフシースまで無くなっており、ナイフは膝の中に格納する方式に変更された。
「折りたたみ式の砲身を展開、機関部と弾倉を接続して弾頭を装填、磁力を発生させて発射するまでに大体8秒だそうです」
「早えよ」
「発射速度は3秒に1発、発電装置の負荷を度外視するか追加の冷却装置がある場合であれば1秒に1発だそうです」
「威力は?」
「…ほぼ据え置きです、数値で見ると微々たる差ですね」
正直三番機は前線に持って来てほしくないほどの機体だ、これが量産された暁にはBETAなど的でしかなくなる。それが出来ないから本国の連中は困っているのだと思うが、連射可能な超電磁砲など来れば強奪しようとする輩も一層増えてしまう。
「本当にここに落として良かったのかよ、コイツは」
「だから護衛が増えたんじゃないですか、彼らと先行量産機を合わせてオスカー大隊を名乗りません?」
「定員割れして消滅すると思ってた中隊が大隊に化けるとは、昔の俺じゃ想像できないね」
デスクトップPCが、欲しい!
切実な問題であります、安定した状況で絵を描きながら小説を書きたぁーい!
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