暫くの間は不定期投稿になりそうです、ちょっとスランプ気味。
なんとか形になった疾風だったが、各所に取り付ける装備は未だ選定中だった。超電磁砲もあかつきの生産設備でしか現状製作できず、砲身は消耗品であるため配備には難がある。
「正式採用はもう少し後だってさ」
「そりゃあ採用したのに全然量産出来ませんなんて、日本の面子を考えたら言えるわけないじゃあないですか」
「…それもそうか」
正式採用のために進めなければならないのは機体の操縦性向上と、装備の製作だ。オスカー中隊に送りつけたのは試作品が中心であり、実はどれも完全に形が定まったというわけでは無かった。
「汎用型の肩部とナイフシースは帝国陸軍の試作品ですしね」
「隼のヤツを固定部だけ変えて載せてやろうと思ったが、まあ良いのがあるなら実証のためにも譲るのが吉だろ」
開発中の機体に搭載予定のものだったらしいが、こちらの機体の完成が予想以上に早かったため各種装備の接合部が疾風と同じものに規格化されたらしい。
「ですがアレは秋津島開発の戦術機です、疾風のことを一番理解している我々が装甲や装備の設計を行うべきです」
「そうだな、それは分かるんだが…」
目の前に広がるのは大量の設計案の写しであり、疾風が装備すべき装備とはなんぞやと問いかけてくるように思えた。
「候補が多いんだわ」
「…取り敢えず全部作って耐久試験を終わらせます?」
「その前に新型が出来ちまうよ」
シンプルな形状のもの、何かしらのギミックを持つもの、野心的過ぎるものと多種多様だ。疾風の肩部、腰部、腕部、膝部の中で肩部と腕部の設計案に絞ったというのに20はある。
「…なんで肩に推進器が乗ってるんですか?」
「時代の先を行き過ぎだろ、マジかよ」
肩部のロケット推進器により機体の機動力を大きく上げるという案があったが、被弾しやすい箇所にエンジンを積んでも大丈夫なのかと言われると不安が残る。というか安全性にこそ不安がある、被弾したら消火剤ぶち撒けながらパージするとか戦闘継続能力においても難ありだ。
「(原作の機体ってどう対策してたんだろうか、載せてたってことはこの問題は解決した訳だよな)」
恐らくはエンジンを破壊されても肩部装甲としては使い続けられるような設計になっているのだろう、我々はその段階に立てていないが。
「スーパーカーボン製の刃を付けて近接格闘戦への適性を得る、大丈夫ですかコレ」
「上半身を傾けやすい第二世代機ならまだしも疾風はそこら辺鈍いぞ、コイツでどうやってBETAを斬るんだよ」
「まあそうなりますか、別の機体であれば活躍出来る気はするんですが」
後世のソ連軍機は肩にブレードを装備するようになるため、思いの外使える武装なのかもしれない。機体の動作をそのまま斬撃に転換するという戦法を取る彼らの戦闘は少し興味深く感じるが、残念ながら対立関係にあるという関係上深く知ることは出来ないだろう。
「やっぱりシンプルな形が一番良いんですかねぇ」
「下半身を重くしてあるからな、肩にデカいの載せて重心が高くなりましたじゃあ問題ありだ」
何故戦術機の肩部が大きくなるかというと、最も被弾が多い箇所だからだ。分厚い装甲は機体の重要部を守る盾として機能し、可動式になっているために角度や向きは自由自在に変えられる。
「重要な装甲部だとは思うんですが、そもそも肩で攻撃を受けるって咄嗟に可能なんですか?」
「可能だぞ、結構前の話になるが人間の反射を操縦に組み込んだ時があったろ」
「ああ、ありましたね」
「人間が咄嗟に取る防御姿勢は大抵重要部を守ろうとする形になる、腕で守ろうとしたり背中を向けたりな」
その際にAIが動作を補助し、重要部を守るように肩部も同時に稼働させる。
そうすることで最も装甲が分厚い箇所でレーザーや打撃を受けることが出来る上、独立しているために被害は機体本体へ伝播しにくい。
「咄嗟の防御に相乗りする形で肩を動かすというわけですか」
「そういうことだな」
盾として動かしやすく、普段の動作を阻害しない範囲で最大の防御力を持たせる。言葉にするのは簡単だが、実際に設計するとなると難しい。
「社長の設計案はどれなんです?」
「社員のと被ったから無かったことにした、かなり近かったのがコイツだな」
それは小さな盾を貼り付けましたと言わんばかりの見た目であり、超電磁砲を搭載する以上は重量の増加を抑えたい疾風に持ってこいの装甲だった。
「…えっと、これは?」
「手で待つ追加装甲あるだろ、アレと同じ装甲板を小さくして載せたヤツ」
「じゃあこれ凄く分厚いってことですよね」
「一部だけだが、これならレーザーも打撃もある程度安心出来る」
「ピンポイントで防御しろってことになりますよね!?」
今までの機体と比べてあまりに小さく、そして局所的な分厚さを持った肩部装甲は途轍もなく扱いにくそうに思えるだろう。しかし前述した技術があれば話しは変わってくる。
「攻撃を喰らう時に肩を敵に向けるだけでいい、さっき言っただろ」
「…なるほど、AIの自動防御をここで」
「そういうことだ、人の操縦技術に頼るより常に一定のパフォーマンスを出せる機械がそこら辺を代替すりゃあいい」
「それが出来るなら戦術機の肩部装甲はみんな小さくても良いじゃないですか」
しかしそうはいかない事情があるのだ。
「なわけあるか、コイツは一回限りの身代わりみたいなもんだぞ」
「えっ?」
「大きいと潰れたり変形したりして衝撃を吸収出来るし、体積が大きいから熱にもより長く耐えられるが…小さいとそうはいかない」
上半身の重量を増やしたくない疾風と違い第二世代機は増やしても問題ない。
長い間近距離での戦闘を継続する戦術機が攻撃を受ける箇所であるため、生存性を高めるためには大きい方がいいのだ。
「戦術機と砲撃機の運用思想の差ってとこかな」
最小の重量で最高の防御力、その理想を体現したかのような肩部装甲は社長と開発班の合意によって試作が始められたのだった。特殊な事情を抱えた疾風のシルエットは後世の戦術機から見ても異様な形となっていくのだが、それはまた後程語ることにする。