宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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そろそろ戦闘回です。
アンケートで二位になった秋津島レポート海外編はひと段落した後になりそう。


1986年〜
第三十九話 新兵器展覧会


ハイヴ攻略の決行が遅れに遅れている欧州戦線だが、各国の戦力はどうにか再編が進められていた。橋頭堡となる前線基地は移動車両を中心に構成されており、母艦級への対策が行われていることが分かる。

 

「米国の新鋭、F-15の最新ブロックですよ!」

 

「へぇ、カッコイイじゃねぇの」

 

最初こそ様々な問題を抱えていたF-15だったが、更新が行われた今では隼を超える最強の戦術機だ。量産に向いていなかった隼と比べてF-15は製造過程が洗練されており、F-14の近代化改修で培った技術によってか芸術的とまで言える設計を可能にしていた。

 

「値段は多少張りますが、性能は隼を大きく超えるとかで」

 

「そりゃ凄いな」

 

将来的な大改修も視野に入れているらしく、拡張性は大きく担保されているそうだ。前線の要望に応えるためかある程度の格闘戦能力も追加装備によって得ることが可能で、腕部ナイフシースをオプションとして選択可能だそうだ。

 

「隼はいつまで前線を張るんだろうな、息は長そうに思えるが」

 

「改修項目が多すぎて昔の機体と今の機体じゃあ別物ですけどね」

 

隼は今も前線では最強の戦術機の座を維持しているが、彼らの配備が進んで行けば型落ちになるだろう。製造コストの高さや度重なる改修により、機体のランニングコストは膨れ上がっている。

 

「生産設備は整いましたし、暫くは隼がF-5と共に主力を務めるのでは?」

 

「かもな」

 

前線における死傷率の高さを鑑みて、自動救助に対応した最新型の隼を中心に編成された救命部隊が現れるなど未だに大きな影響力を持っていることは確かである。

 

「隼と試製四号が活躍してからまあ前線は新型の展覧会みたいになっちまってまあ…」

 

「戦力と資金が集中するのは悪いことではないんですがねぇ」

 

「隼は開発側からすれば手に余るらしいしな、新型が増えるのは良いことじゃないか」

 

秋津島開発目線では拡張性を残してあるが他社が弄ろうとすると超高難易度な設計パズルゲームと化すのが隼であり、完成され過ぎた設計は他人が触れないという予想外のデメリットを生じさせていたのだ。

 

「欧州は隼の改修が進まないって嘆いてましたしね」

 

「アレをこれ以上弄る余地ないだろ…」

 

「F-4とかは原型が無いくらいにされてますけど」

 

彼らの視界に映るのは中隊支援砲を装備したF-4であり、海王星作戦のハイヴ攻略において激しい戦闘を行う陽動部隊の火力支援を担う支援仕様機だ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

従来の装甲車両とは一線を画す機動力を持つ支援型は疾風の登場により砲撃機の第0.5世代とも呼ばれ、戦術機と同等の展開速度を持つ砲撃機は前線における戦闘の在り方を変えようとしていた。

 

「前回の戦闘で機動力のある戦術機が大型砲を運用するってのは試されていましたが、結果として師団規模のBETAの殲滅を行うことが出来ていたのは確かだったのでこうなるのも分かります」

 

「突撃砲を持ってないぞ」

 

「背中には支持アームと予備弾倉を装備しているだけだそうです、三番機と同じく潔い構成ですね」

 

F-5系戦術機と隼が主力を務めているため、F-4系は支援型に改修される機体が増えている。中隊支援砲は大陸への大規模な派兵を検討する日本や大陸で戦闘を続ける前線国向けに大規模な生産が続けられていて、急速な配備が始まっていた。

 

「どいつもこいつも馬鹿デカい大砲抱えやがってまあ…」

 

「スリムなF-15を見ると感覚がおかしくなりそうですよ」

 

彼らが運用する鐘馗はどちらかというと第一世代寄りの体型で、疾風は大きな下半身と背中に背負った超電磁砲によりどっしりとした印象を受ける。

 

「模擬戦の申し入れもありますが」

 

「…上は受けろと言うんだろう」

 

「はい、米国の第二世代機に砲撃機第一世代機で戦えとのことで」

 

「いやまあ、やれないことはないが」

 

今のところは前向きに検討するとあやふやな回答で誤魔化しつつ、米国からの派遣部隊を眺めながら移動する。移動式の車輌を中心とした設備が設営された橋頭堡では本格的な整備は行えないため、戦術機部隊は定期的に後方の基地の部隊と入れ替わる形で稼働率を維持している。

 

「ここじゃあ整備が難しいだろ、対戦術機機動なんざ行って機体を振り回した日には恐ろしいことになるぜ」

 

「疾風に予備機は有りませんからね」

 

「実戦投入が近いんだ、暫くは断らせてもらおうか」

 

戦術機の新型が話題になるばかりだが、我らが秋津島も色々と送りつけて来ている。コンテナに超電磁砲用の追加冷却装置を載せた補給機改め冷却機、それと以前から開発が進められていた多脚戦車だ。

 

「…脚を生やさないと駄目なんですかね?」

 

「BETAの死体を歩いて乗り越えられるのは良いって聞いたぞ、最近は迅速かつ柔軟な火力運用がどうたらって」

 

「どこもかしこも機動力ですか、大変な時代ですねぇ」

 

欧州の兵器メーカーと開発したという120mm滑腔砲はかなり強力だったが反動を始めとした諸々の問題から採用が見送られ、105mmライフル砲が採用されたそうだ。

 

「機関砲を搭載した車輌もあるみたいです、頼りになりそうですね」

 

「そうだと良いがな、虫みたいでどうにも…」

 

最前線の試験場として賑わう欧州戦線だったが、そのお陰で多くの戦力が集まり橋頭堡の維持に成功していると言えるだろう。海王星作戦は潰えていない、足踏みを続ける攻略部隊が投入されるのはいつになるのだろうか。


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