オスカー大隊は迫り来る大量のBETAの集団を超電磁砲の火力で後続ごと肉片にする。それでも全てを倒し切れるわけではないが、敵集団の中に道が出来たのは間違いない。
「突撃、突撃!」
「全てを相手にする必要はない、間を抜けるぞ」
出来た道を塞ごうとするBETAを突撃砲で蹴散らし、飛びかかって来た戦車級を盾で殴り飛ばす。宙に舞った戦車級を僚機が数発の射撃で絶命させ、その血が後続の戦術機にかかる。
「何処を見てもBETA!修羅場ですなぁ!」
「無駄弾を撃つなよ、なにせ的は幾らでもあるからな」
「違いありません、このまま抜けますよ!」
前衛機の操縦データは蓄積と最適化を繰り返したがために、その動きは戦術機だとは思えないほどだ。長刀はBETAの体組織を斬るというより間を通すと言った方が良いような抵抗の無さで振るわれ、厄介な要撃級を全く速度を緩めずに両断していく。
「そろそろ次の広間です、前衛が横坑を抜けるまで15!」
ハイヴは広間と呼ばれる大きな空間と、それを繋ぐ横坑で大部分が構成されている。広間には大量のBETAが集まっており、それを如何に避けつつ最奥へ辿り着けるかが
「中衛からの射線警戒、雷神のお通りだ!」
「IFFに反応なし、撃ちます!」
正面の広間に味方は居ない、それを確認した疾風は即座に超電磁砲を放つ。広間に配置されていたBETAは突如飛来した超高速の弾頭により幾らか吹っ飛んだが、角度が悪かったためにあまり巻き込めなかった。
「このまま突撃、疾風を広間に入れて薙ぎ払う!」
「「了解!」」
放たれた120mmがBETAに食い込んでから爆ぜ、要撃級の中央部がごっそりと消し飛び体液が宙を舞う。そんなことは気にせず突っ込んだ前衛機が長刀で戦車級を切り捨てていくが、いかんせん数が多い。
「突っ込みます」
「無理はするなよ、援護を!」
僅かに前衛がBETA群を押し込んだその瞬間、疾風が横坑から飛び出て広間に入った。足元の小型種を踏み潰し、更に迫る戦車級を刃が施された膝で押し切る。
「撃てます」
「前衛全機、上に飛べ!」
前衛機は射線を開けるために飛び上がることで回避する、本来であれば光線級の餌食となるがハイヴ内では照射が行われないことを利用したのだ。
「発射!」
たった数発の射撃で直線上に連なる何百というBETAが粉微塵になり、厄介な要塞級には個別で砲弾をお見舞いすると血を吹いて倒れた。圧倒的な火力は従来のハイヴ攻略戦術を変えた、我々は他の部隊よりも迅速に最奥へと向かえている。
「道が出来た、行くぞ!」
「こんなに忙しいのは久しぶりですよ、滅茶苦茶だ」
「そうですなぁ!」
こうして広間を突破したオスカー大隊は一機も撃墜されてはいなかったが、確実に損耗はしていた。それが表面化する前に作戦を終えなければならない、しかし先はまだ長いのだ。
ー
オスカー大隊とは違う道を進む白い塗装の戦術機、それは欧州連合の大隊だった。
欧州の部隊は超電磁砲を持たなかったが、中隊支援砲という大火力を運用することで広間の突破に成功していた。BETA群が最も突出するオスカー大隊に誘引されているということもあり、被害は少なく抑えられている。
「このまま進むぞ、無人機は無事か?」
「一機損傷、ですが片腕が飛んだだけです」
「飛べるならかまわん、先を…」
地中掘削音を感知したと計器が叫び、視界にBETAの出現地点が表示される。それは自分達が今居る場所であり、足元からBETAが現れるということに他ならない。
「次の横坑へ急げ、敵を一点に集めて迎撃する!」
「駄目です、もう掘削音が近くなり過ぎて…」
欧州連合の大隊は突如現れたBETAにより前後に分断される、新たな横坑を掘り進めていた集団と衝突してしまったのだ。それがただ単に運の悪さが引き起こしたものなのか、BETAの外敵排除行動なのかは分からなかった。
「後衛が!」
「補給機を失うわけにはいかん、全機反転だ!」
「駄目です、横坑から新たなBETA群!」
彼らのセンサーで捉えられる個体数を超えたBETA群が眼前に迫る、だが背後には這い出て来たばかりのBETAが次々と数を増していた。
「…挟撃とは、してやられたか」
「隊長!」
「反転して突撃だと言っている、後衛と合流しなければならない」
隊長と呼ばれた人物は途切れ途切れのデータリンクを見て、この窮地に陥ったのは自分達だけであることを認識して少し笑みを浮かべた。何故ならこの中で最も作戦を成功させる可能性が高いであろうオスカー大隊を差し置いて、自分達をBETAの大群が襲ったからだ。
「御生憎様だな、タコ野郎共」
狙う相手を間違えたなと部下に聞こえないように呟き、欧州仕様の長刀を引き抜いた。オスカー大隊が最奥に到達するなら本望、超電磁砲の借りはまだ返していないのだ。
「囮冥利に尽きるってな、相手になろうか!」
欧州仕込みの長刀…いや、長剣捌きを御覧じろ。