宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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感想1000件突破、感謝感激です。
よく見ると評価してくれた方もいつの間にか300人を超えていたり、総合評価は一万を超えていたりとびっくり…

完結まで突っ走りますので、これからもよろしくお願いします!


第五十話 交差

オスカー大隊に欧州連合の部隊が包囲を受けたという連絡が届くが、救援に向かうことは出来ない。こちらも被害が拡大しており、余裕も時間も無いのだ。

 

「…隊長」

 

「我々の目的は目標の破壊だ、救援に向かうことは出来ない」

 

それに地上ではより多くの兵士が命を落としているだろう、全体を見れば我々が先に進む以外の道はない。それに移動し続けているためにデータリンクは途切れ途切れであり、現在地が不明な味方との合流は難しい。

 

「それに欧州連合の部隊は少し遠い、我々にはこれ以上余分な燃料も弾薬も無いんだ」

 

「ワルシャワの部隊もこれまた遠いですからなぁ…」

 

大隊長の無情だが冷静な判断に従う彼らだが、ただ隊長が冷たいだけではないことは重々承知だ。

 

「行き道は変えられなくとも、帰り道なら変えられる」

 

「それは」

 

「最速で目標に到達し、その後折り返して欧州連合の救援に向かう」

 

帰り道はどの方向から帰ろうとも問題ない、全てのBETAを倒して進んでいるわけではないからだ。どの道を通ろうともBETAと遭遇するのならば、味方と合流できる道を通るのはごく自然な判断だ。

 

「良いか、帰り道で俺はお前達の命を最優先に考えるからな」

 

「…はは、分かっていますとも」

 

あと一つ広間を抜ければ恐らく最奥、目標地点だ。

まだ若いハイヴでこの激戦とは、成長し切ったハイヴの攻略など考えたくもない。

 

「それよりだ、救助はどうなってる」

 

「四機やられました、そのうち二人は無事ですが一人は負傷しています」

 

ここまでの激戦を潜り抜けて被害が四機というのは明らかに少なく見えるが、欧州の戦線で生き残った猛者が簡単に散るような場所だと考えると途端に恐ろしく感じるだろうか。

 

「…もう一人は残念ながら、S-11は回収しました」

 

爆発反応装甲は優秀だが、何も攻撃を無効化出来るわけではない。要撃級の一撃を受け隊列から落伍し、そのまま突撃級に轢かれてしまったようだ。

 

「あの倒れ方、恐らくは操縦席ではなくS-11を庇って」

 

「分かった、無駄にはしない」

 

欧州連合からの連絡でハイヴ内であっても地中掘削による奇襲は発生すると知ることが出来た、同じ手は通じないと宇宙生物共に教えてやらねばならないだろう。

 

「三番機はあと何回撃てる?」

 

「想定以上に発電装置周りの負荷が嵩んでます、手持ちの弾薬を撃ち切れたら奇跡かと」

 

「一度全力で射撃出来る余力だけは残しておけ」

 

もうどの機体も何かしらの損傷を受けているのではないかという状態で、前衛機には腕を失った機体すら居る。後衛と入れ替わり陣形を維持しては居るが、疾風を守りきれなくなるかもしれない。

 

「悪いがこの先守り切れる自信がない、自衛の準備はしておいてくれ」

 

「二番機の突撃砲が健在な内は心配御無用ですよ」

 

補給機が運ぶ武器弾薬も事前の想定よりも損耗が早く、これ以上時間をかけるわけにもいかなくなって来た。

 

「広間を抜けた先は恐らく主縦坑、最奥から地上まで伸びる吹き抜けに通じている筈だ」

 

「そこから目標へ向かうというわけですか」

 

「ああ」

 

こう話している間にも2000発入りの弾倉が次々と空になる、36mmの劣化ウラン弾は一体どれだけの数がこのハイヴ内にばら撒かれたのだろうか。

 

「帰りの分の弾薬が残るか、不安になって来ましたよ!」

 

「その時は短刀抜いて地上まで凱旋だ!」

 

疾風がすり抜けて来た戦車級を蹴るがバランスは崩さず、そのまま超電磁砲を放つ。一番機が放ったそれは広間の底面と平行に飛び、巻き込めるBETAの理論値を叩き出したかのような弾道で飛翔した。

 

「良い射撃だ、このまま飛べ!」

 

この短時間でどうにか隊員もハイヴ内という極限状態に適応しつつある、疲労により集中力が切れる前に脱出出来るといいのだが…

 

 

「…やられたな」

 

白い欧州連合軍塗装の隼はそこら中に損傷を負っていたが、辛うじて四肢は動いた。手に持つ西洋剣は突撃級の甲殻を半ばまで切り裂いたが、幾度もぶつけられた過剰な負荷により半ばから折れていた。

 

「隊長殿、無事ですか」

 

「無事なわけあるか、この通りだ」

 

半分ほどの長さになってしまった剣を放り投げ、部下へと向き直る。

 

「剣に無理をさせ過ぎた、訓練不足だな」

 

「剣以外にもですよ、機体も物資も欠けていないものはなくなりました」

 

欧州連合の部隊はどうにか敵を潜り抜けて後衛と合流したが、命綱同然の補給機への被害は甚大だった。後衛もズタズタにされ、マトモに飛べる機体は少ない。

 

「だがまだ動ける、そうだな」

 

「ええ」

 

部下が破壊された補給機のコンテナから引っ張り出した新品の剣をこちらに投げ渡し、それを受け取って武装する。そして破壊されて機能を果たせなくなった肩部装甲を切り離し、戦い続ける決意を固めた。

 

「我々が出来ることはもう少ない、であれば…」

 

「何をなさるおつもりで」

 

「オスカー大隊が通った道を使わせて貰う、今居る道を通るよりは良い筈だ」

 

超電磁砲でBETAを減らして進んでいる彼らが通った道ならばBETAの数は少ない筈、それに先へ進む大隊にBETAが誘引されているならば更に密度は下がるだろう。現状の戦力では攻略も撤退も不可能ならば、合流を目指すまでだ。

 

「それは」

 

「何、合流して操縦席を間借りさせてもらうだけだ」

 

撤退時には損傷した機体を放棄して彼らの機体に相乗りさせてもらう、恐らくこれが最も生存者が多くなる選択だ。

 

「そのためにも残ったS-11を送り届け、絶対にハイヴ攻略を成功させる」

 

「それが、最良の選択だと」

 

「そうだ」

 

飛べない機体の衛士を回収し、まだ飛べる機体へと移乗させる。破壊された補給機からありったけの物資を掻き集め、帝国軍の後を追うのだ。

 

「高度差がある広間同士を繋ぐ縦坑を使い、一気に道順を短縮する」

 

「急降下になりますよ!?」

 

「このまま大群とやり合えばそれこそ大損害だ、賭けにはなるがな」

 

戦術機による急降下、まずそのような動作を実戦で行うことがない彼らにとって難易度は高いだろう。それに抜けた先で各個撃破されてしまう危険性もある、リスクは高い。

 

「壁面にはBETAが張り付いている、壁には近づくな」

 

「…ええい、やってやりましょうとも!」

 

こうして欧州連合の意地を見せるべく、彼らは決死の覚悟を決めたのであった。

 




感想500件の時のようにお祝いイラストを用意しますかね…
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