宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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第五十三話 帰還

ハイヴ攻略部隊が突入して暫く、S-11の同時爆発だと思われる振動が二度検出された。しかし地上の部隊がハイヴ攻略の成功を確信する中、突如BETAは戦闘をやめたのである。

 

「何が、何が起こってるんだ」

 

地上で陽動を担当していた部隊は自分達に全く興味を示さず、移動を続けるBETAに困惑していた。

 

「化け物共を逃すな、徹底的に追撃しろ!」

 

この戦域のBETAが一斉に撤退を開始、戦線から敵が離れたことでハイヴ近くに布陣していた陽動部隊以外が遊兵と化した。敵を追う形でハイヴへと接近する戦術機部隊だが、その巣からは無限に思えるほどのBETAが湧き出てくるのだ。

 

「間引きと軌道爆撃で減らした筈だろ、なんでこんなに出て来るんだ!?」

 

「想定していた個体数よりも、よっぽど多くが潜んでたってことだろうな」

 

「突入部隊は無事なのかよ、これじゃあ攻略は出来ても脱出は…」

 

事実、突入口となった門を防衛していた軌道降下部隊は敵の濁流に飲まれて確保の継続を断念した。多脚戦車は弾切れの車輌のみが後退、残りは最後まで奮戦したそうだ。

 

「追加の補給機を送ろうにも、敵が多過ぎてハイヴ内の補給線は破綻してたんだろ?」

 

「…ああ」

 

つまり最初から共に編成されていた補給機の物資のみであの数のBETAと戦ったということで、本来の想定であれば足りたかもしれないがあの個体数では密度が違った筈だ。

 

「上から連絡が来た、BETAの行き先についてだ」

 

「何処なんです、一体!」

 

「後方のハイヴだ」

 

部隊の空気が凍る、それは彼らの知るBETAの生態を紐解けば理解出来るだろう。ハイヴ内に存在出来るBETAの個体数は決まっており、それを超して飽和状態になると弾き出されるように攻勢が始まるのだ。

 

「ここで逃せば、逃した分だけ欧州に帰って来やがる…と」

 

「ハイヴの向こう側に逃げるんだぞ、火力を集中させようが無い!」

 

後方の部隊も戦線の後退に伴い、前に出て来ているが火力が足りないのは事実だ。

 

「…振動?」

 

「BETAの移動音に掻き消されない程の振動と、このパターンは!」

 

「S-11だ、S-11の爆発だ!」

 

遂に部隊が自爆を選択したのだと思ったが、どうにも様子がおかしい。振動音が断続的に続いているのだ、一定間隔で続いている。

 

「だ、段々近付いて来ています」

 

「総員、突撃の用意を!」

 

やることは決まった、この戦場で英雄を迎えに行く栄誉を得る機会があるというのは運がいい。

 

「帰りが遅い英雄殿の凱旋に参加する、いいな!」

 

「「了解!」」

 

同じことを考える部隊は多いようで、データリンクを見ると他の戦術機部隊も突入口に向かっている。日本帝国、欧州連合、ワルシャワ条約機構と三つの部隊で構成された攻略部隊であるためだろう。

 

「西も東も変わらずか、仲のいいことで」

 

 

オスカー大隊とワルシャワ条約機構軍は、合流した欧州連合軍の機転によって出口へと向かうことが出来ていた。

 

『S-11があって良かったな、ええ?』

 

「何を言ってる、滅茶苦茶だぞ!?」

 

爆破タイマーをたった数十秒に設定し、敵集団に放り込むことで纏めて撃破して道を作る。正気の沙汰では無いが、この密度のBETAを倒して先に進むには最も合理的な方法だ。

 

「欧州の奴ら、S-11を抱えて来た時は何かと思いましたが…」

 

「広間のBETAをまとめて吹っ飛ばしつつ合流するなんて」

 

欧州連合の部隊は大損害を負いつつも敵群を突破、こちらとの合流を果たしたのだ。大隊三つで108発のS-11があり、補給機の分を合わせれば数は更に増える。主縦坑と目標の破壊に使用した分は合わせて12発、数は十分だ。

 

「そろそろ地上との通信が復旧し…これは!」

 

「友軍の一部が突入口に突出、これであれば脱出可能です」

 

「どいつもこいつも馬鹿ばっかりだよ、本当にな」

 

陽動部隊決死の攻撃により突入口付近のBETA密度が低下し、脱出が叶う。久しぶりの陽光に部隊が歓喜に沸く中、周囲の部隊は追撃を続けていた。

 

「地平線の先まで、BETAで地表が埋め尽くされてるぞ」

 

『逃げる奴らは俺達に任せろ、アンタらは早く負傷者を!』

 

「そうさせてもらう、すまない」

 

『いや待て、軌道爆撃?!』

 

機体同士で庇いあってギリギリ飛行している攻略部隊だったが、空を見上げると宇宙艦隊の識別番号が表示される。軌道爆撃は出し切った筈ではと思ったが、宇宙には社長殿が居るのを思い出した。

 

「どんな奥の手を見せてくれるんですかね」

 

「さぁな、間近で見れるBETAが羨ましいぜ」

 

宇宙艦隊から投下されたコンテナはAL弾ではなく、大量の榴弾を地面にばら撒いた。軌道爆撃に求められるのは作戦開始と同時に重金属雲を展開すること、このような面制圧を行う弾頭をしっかり用意していたとは何を想定していたのだろうか。

 

「社長殿は未来でも見えるのかねぇ」

 

「7割もの数を投入した大爆撃の後だってのに、この数の艦隊が」

 

「AL弾からの換装にも時間がかかる筈…魔法でしょうか?」

 

人類の一大反攻、海王星作戦は見事成功した。

撤退するBETAを追撃することで数十万体のBETAを殲滅することにもなり、記録的な大勝利となったが損害も大きかった。損害を受けた戦術機は三個連隊規模に及び、それ以外の通常戦力も損耗が激しい。

 

欧州は眼前の脅威を排除することに成功し、原作における破滅を回避した。本来であれば蹂躙される欧州は今日も明日も人類の住まう土地である、その平穏が人の手によって脅かされようとも。

 




次の戦闘描写はかなり後になりますが、先に頑張れテオドールさんとだけ言っておきます。
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