宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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第六十五話 責任の所在は

先日の軌道上で起きた事故、駆逐艦暴走事件にて発生した被害はかなりのものである。軌道艦隊の大部分を擁する宇宙港、食料事情を支える合成食料プラント、BETAの侵攻を警戒する地上監視衛星…そのどれもがズタズタだ。

 

「種子島のマスドライバーから既に復旧用の物資は打ち上げられ、問題となっていた電力系の損害は1週間以内に最低限の復旧が可能です」

 

現状を報告するのは宇宙港の管理を担当する秋津島開発の社員であり、それを聞くのは国連宇宙軍の上層部だ。誰もが真剣な表情であり、兵士の家でもある宇宙港が停電中ともなれば場の空気も張り詰めたものになっていた。

 

「最低限となると、完全復旧はどれほどかかるのですかな」

 

話を切り出したのは国連宇宙軍の者であり、社員は事前に用意していた資料を手にしつつ簡潔に説明した。

 

「最短で二ヶ月、長ければ六ヶ月です」

 

度重なる拡張工事により本来であれば良好な整備性は損なわれており、MMUを用いようとも施設内の工事となると人の手で行う必要がある。

 

「軌道爆撃は可能かな?」

 

「不可能ではありません、ハイヴ攻略戦並の規模となると難しいですが」

 

「なるほど」

 

小規模な爆撃であれば可能となれば、今まで通りのBETA封じ込めはどうにか行える。それを聞いた司令官と思わしき人物は何度か頷き、周囲に目配せをした。

 

「…であれば我々は何も追求することはない。此度の事件解決に動いて下さったこと、誠に感謝する」

 

「いえ、成すべきことでしたから」

 

「煩い者共にはこちらから灸を据えておく、すまなかった」

 

つまり現上層部は秋津島開発の擁護に回るということだ、ここまで明言されるとは思わず社員も面食らう。

 

「よ、良いのですか?」

 

「何、権力争いに関心がない訳ではないが…恥知らずではないつもりでね」

 

この後国連宇宙軍は調査の末に事件への対応は妥当かつ迅速なものであり、BETAの蹂躙から人類を守ったとする声明が発表された。

 

 

「吐いたわ」

 

「休んで下さい」

 

秋津島開発の核弾頭迎撃に対して様々な意見が飛び交う中、社長が会見中に吐いたので大変なことになっていた。社長を働かせ過ぎだろうと会社にまで批判が集まっており、そんなこともあってか混乱は収束していない。

いつも通り執務室に二人で居るわけだが、社長は明らかに疲れ気味だ。

 

「トップが出なければいけない場もあったとはいえ、スケジュールを組んだ私の責任です」

 

「良いんだって、俺が無理して出るって言ったのもあるしさ」

 

BETAの侵略によって悪化した食料事情へ追い打ちをかけた今回の事件、特に前線国からの注目が集まるのも無理はないだろう。前線での核爆発を避けるためだったというのは周知されつつあるが、多くの人々にとっては明日の食事という方がある意味現実的な問題なのだ。

 

「俺達の影響力は前線からの支持あってのこと、説明責任は果たさないとな」

 

「政府と国連に任せて下さいって」

 

「それで全員が納得するかよ、核を爆発させたのは紛れもなく俺達なんだ」

 

それに米国への批判はこれの比ではないだろう。向こうさんも事実の究明に全力を尽くしているとはいえ、そもそもの原因を作り幾つもの衛星を破壊したのは彼らのHSSTなのだから。

 

「ハイヴ攻略戦のすぐ後にこれとは、BETAの大攻勢を前にして大混乱なんざ冗談じゃあないぞ?」

 

「食料に関しては日本が備蓄を出してくれるそうです、どうにか鎮静化出来ませんかね」

 

「後方国なら支援なんざ出すのが当たり前、飯の次は兵隊を送れと言われて揉めるぜ」

 

オスカー大隊は伝説となったが、その被害により中隊へと逆戻りだ。今は隼の機種転換訓練に励む666中隊と共に補充で入って来た衛士の訓練中であり、暫くは動けない。

帰国した衛士達は治療と練兵に務めるそうだが、ハイヴという環境に当てられて引退を選んだ者も多い。そんな彼らの内の半分ほどは秋津島開発のMMU操縦士として再雇用が決まっているが、精神状態は芳しくないだろう。

 

「有名になり過ぎたよなぁ、敵も作り過ぎたかもしれん」

 

「宇宙開発で他社を潰した時と、戦術機を使って米国の面子を潰した時と、3Dプリンタで産業の一つを丸ごと焦土にした時と…」

 

「笑えねぇな」

 

だがまあ、その分味方も多い。日本政府を筆頭にEU各国とその企業とは親密で、今回の事件においても我々を責めるようなことはなかった。これから仲良くすべき組織の見極めが出来たと思っておくべきだろう、不安にさせた社員達も労っておかなければ。

 

「貰った感謝状やらなんやらはしっかり周知しておきますね、明日のニュースはこれにしますか」

 

「頼む、俺は暫く休むよ」

 

そう言って立ち上がるもふらつく彼を秘書は支え、部屋の外まで肩を貸す。人生も後半戦に入ったというのに彼の身体は異様に若々しかったが、同時に外見に見合わない細さも併せ持っていた。ふとした瞬間に折れてしまいそうな怖さがある、そんな肉体だ。

 

「本当にそうして下さい」

 

「痩せちまったしな、暫くはしっかり食べるさ」

 

「ですね、でも炭水化物ばかり食べるのは駄目ですよ?」

 

疲労困憊と言った社長だが、休みの間に秋津島放送のアカウントで人工音声を使ったゲーム実況動画を投稿して嫁と秘書に怒られたのは内緒だ。実況するゲームすら未熟な世界であるため、そのゲームすら何処からか用意して秋津島放送の衛星ネットワークでばら撒いたのは黙っておくつもりらしい。




志摩スペイン村に行って来ます、勝利確定BGMを聴くために。
その後も色々と予定があるので更新頻度が落ちます。

それとアーテミシーズ及びシャドウは全て原作の設定ですので、あしからず。
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