宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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第七十話 試作機と支援車輌と

「未来だなんだと言ってましたが、あの件は」

 

「まだ確証が無い、後で話すよ」

 

現実逃避をするように仕事に戻った社長と秘書は、帝国軍の工廠へと足を運んでいた。そこには見慣れない装備に身を包んだ隼改が何機か鎮座しており、今回視察に来た理由である機体は1番奥のハンガーに居るようだ。

 

「隼改、あれは装備の実験機か」

 

「はい、我々が提供した機体ですが…かなり改造されたようですね」

 

新型機が搭載する装備の試験台として酷使された隼改は所々塗装が剥げ、不時着したと思わしき汚れも残ったままだ。周囲の慌ただしさを見るに、恐らくハンガーに戻って来たばかりなことが伺える。

 

「次期主力戦術機開発、耀光計画の機体は形になりつつあるようです」

 

「早いな、基礎設計が遅れていたと聞いたが」

 

「機体の大型化による余剰容積の確保が決め手となり設計が完成、その分増えた重量は新型装甲材の全面採用による軽量化で手を打ったようです」

 

「…道理で一回り大きい訳だな、20.2mとはかなりの巨体だぞ」

 

何を隠そう、目的の機体は原作において不知火と呼ばれた傑作機だ。

帝国軍が米国に対抗して開発を続けていた新型戦術機であり、このまま完成させることが出来れば世界初の第三世代機となるだろう。

 

「F-15に装備されていたような肩部補助推進器もオプションとして用意しているようですね、ロケットモーター式ですので小回りは利きませんが」

 

「信頼性と瞬間的な推力では実用レベル、中々考えてるな」

 

その大型化した機体は不知火を更に改良した弐型と似ていたが、試作機ということもあってか頭部は吹雪と酷似しているように思えた。

 

「あの頭部は?」

 

「一つ前の試作機を流用しているようです、空力特性は悪くなかったそうですがセンサが載せきれないという話でして」

 

資料を見ると、現在急ピッチで製作中らしい。その顔は不知火そのものであり、少しだけ翼の形状が違う以外は見慣れたものだ。

 

「なるほどねぇ」

 

不知火は本来であれば機体全高は19.7m、改良された弐型でも19.8mだ。それがここまで大型化したのは様々な要因があるが、その理由の一つには心当たりがあった。

 

「国内での運用以外も視野に入れたか、もう対岸の火事は収まる気配が無いしなぁ」

 

「各国の新型機や改修機にも航続距離の向上は求められる要素となりつつあります、謂わば戦術機開発におけるトレンドですね」

 

そう、ユーラシア大陸の奪還においては脚の長い戦術機が求められているのだ。避けられないハイヴ攻略に関しても、攻略部隊に機動の邪魔になる増槽を装備させたくないという観点から、燃料搭載量の増加を後押ししている。

 

「しっかしここまで大型化させる必要は無かったように思えるが」

 

「資料によりますと、まず一つ目は将来的な武装の大型化を見越しての采配のようです」

 

「ふーむ、レールガンの小型化辺りを想定してるのか」

 

実際問題、秋津島開発の超電磁砲開発班は新型砲の研究を続けている。将来的に超電磁砲を運用するための砲撃機という区分は無くなり、突撃砲を電磁兵器が代替するという考えは当たっているだろう。

 

「二つ目は空力特性によるもので、揚力の高い翼を搭載するためには大型化が必要だったとか」

 

「…確かに燃料消費は他の機体と比べて少ないな、直近のシミュレーション結果じゃあ隼改なんて目じゃないぞ?」

 

新型装甲材の軽量さもあるのだろうが、これだけの大型機で燃費をよく出来るとは恐れ入る。この機体に熟練者が搭乗した場合、カタログスペック以上の働きを見せるかもしれない。

 

「機体各所に設けられた翼によりごく僅かな電力消費での姿勢制御を可能とする新設計とありますが」

 

「滅茶苦茶ピーキーな仕上がりになりそうだな」

 

そこは光ファイバーによる機体制御と新型補助AIユニットの搭載でどうとでもなるらしい、半導体の性能向上も相まってかソフト面の進歩は目を見張るものがある。

 

「大体分かった、軍が御執心の格闘戦能力はどうなってる?」

 

「疾風は言うまでもなく、隼改の数段上ですね」

 

74式長刀との相性が非常に良く、高い運動能力から繰り出される斬撃の威力は従来機を超えるだろう。海外への輸出と汎用性の高さを求められた隼シリーズとは違い、帝国軍の要求が色濃く出ている。

 

「弾薬が欠乏しても尚継戦可能な戦術機とは、社長はどう思われます?」

 

「必要だろうさ、特にアジア戦線を押し上げるのならな」

 

中国戦線の補給体制は劣悪で、上層部は陸路で運ぶよりも戦場へのコンテナ投下のほうが内容物の損害が少ないと踏んだ程だ。補給機を使うことで人の手を介さないコンテナ輸送を大真面目に検討するなど、中々考えているようだ。

 

「超電磁砲の配備が進んだことで欧州戦線は安定しつつある、次の主戦場はこっちになるさ」

 

1986年に統一中華戦線が誕生し、中国の共産党政府と台湾は対BETAへの共闘を誓った。しかし第二世代機が量産され、第三世代や砲撃機など次世代の兵器が誕生する中でも彼らの主力は第一世代機だ。

 

「統一中華戦線が運用する戦術機はMig-21を改修した殲撃8型、国連軍も出張って来てるとはいえ戦力が不足している以上旧式機が目立つ」

 

「その戦場で戦うためには高性能機が必要というわけですか」

 

「まあ整備も補給も大変だが、新型の護衛があれば疾風も出れる」

 

「なるほど」

 

鹵獲や機密漏洩を恐れたため、超電磁砲を運用出来ているのは帝国軍と欧州連合軍のみだ。勢力が入り乱れた国連軍も少し怖いものがあり、共産主義陣営に関しては言わずとも伝わるだろう。

 

「我々の仕事はセンサ類と新型装甲材、あとはAIくらいですか」

 

「戦術機に関してはな、面白い仕事だったぜ」

 

そう言っている内に試験場へと自らの脚でやって来たのは、秋津島開発が作り上げた支援車両だった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「機密の塊を盗まれるのは困る、なら戦場のど真ん中でも機体を回収出来る車輌が必要だよな」

 

「大き過ぎて整備計画に準じて整備された国内インフラを利用できない、所謂欠陥品ですけどね」

 

人命救助に使える機体とあれば開発班の熱も入るというもの、開拓用の多脚車両シリーズからまたも転用された代物があっという間に完成した。

 

「従来の運搬車輌と違って背部兵装担架と跳躍ユニットを取り外さなくても搭載が可能、戦術機も起動したままで良いから即応性は段違いさ」

 

「従来品と比べると運用コストも高いし整備性も悪いんです、あんまり大量生産とはいかないでしょうがね」

 

「浪漫があるだろ」

 

「前線に適応した支援車輌ってことは分かりますけどね、なんでもかんでも足を生やすのはやめてくださいよ!」

 





【挿絵表示】

図解です。

それとですね、秋津島開発が独自に開発する無人機の情報を手に入れたので最新の活動報告に貼り付けておきました。
今後にご期待ください、投稿期間は暫く空いたままですが…
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