宇宙開発企業なんですけど!?   作:明田川

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第七十一話 東南アジアと帝国

秋津島開発の建設部門は今日も大忙しであるが、いつもより休憩所として設置されているプレハブには人が多かった。何故なら作業機械の無人化が進み、休憩時間をより多く取ることが出来たからだ。

 

「1人居れば五機は管制可能ですからね、革命ですよ」

 

「そりゃ良いんだが、こうも出張が多いと有り難みも薄れるってもんだぜ?」

 

MMUオペレーターの男性は本国から持ち込んだ清涼飲料水を飲み干し、空になった缶をゴミ箱に放り捨てる。二人は休憩の間、世間話で暇を潰すつもりらしい。

 

「完成するまでの辛抱ですよ」

 

日本は軍需品の製造拠点を海外に移転させることを決め、段階的にインフラが整えられつつあった。特に東南アジアは赤道に近く、マスドライバーの一大拠点として開発が進められている。建設部門が滞在しているのもそのためであり、多数のMMUが作業を続けている。

 

「帝国は東南アジアに対する影響力確保に躍起になっててな、この忙しさもそれに後押しされてに違いない」

 

「ああ、石油ですか」

 

「戦術機は油をバカみたいに食うからな、製造拠点にも政府肝入りで資本が投入されてる」

 

元々中華戦線の物資供給を行うため資金は投入されて来たが、大陸の補給線はBETA以外の影響もあり芳しくない状況だ。将来的なアジア派兵において脆弱な補給を頼りにして貴重な正面戦力を失いたくはない帝国軍は、自前で更なる物資を確保しようとしていた。

 

「石油といえば中東アジアが危ないと聞いていますが」

 

「砂漠じゃ振動センサーも多脚戦車も役に立たん、戦術機も砂を吸って駄目になっちまうから稼働率も悪い」

 

その上舞い上がる砂は跳躍ユニットや関節部へ大きなダメージを与え、人類の石油事情を支えてきた中東アジアは欧州以上に危険な状況と言える。

 

「超電磁砲も放熱機構が合わなくてマトモに動かんらしい、今はまだ持ってるがどうなるか…」

 

「だからこその東南アジア資源開発という訳ですか」

 

「前の事件で種子島が吹っ飛びかけたんだ、予備も要るって判断もあるだろうがな」

 

第二の宇宙港建造が既に始まりつつある中、BETAに対して使用する兵器の輸送量を減らす訳にはいかないので打ち上げのキャパシティ自体を上げてしまおうという話だ。

 

「米国からはたんまり金を貰ったからな、こうしてまた増やせるってわけだ」

 

「また新型のマスドライバーなんですよね、前と比べて倍の輸送効率だとかで」

 

種子島のマスドライバーも建て替えが進むが、それでも一気に取り壊しという訳にはいかないため更新作業はゆっくりとしたものだ。常に需要が増え続ける打ち上げ施設は幾らあっても困らない、社長が推し進める拿捕作戦のためにも秋津島が使える輸送量も増やしたいのだろう。

 

「何処からアイデアが湧き出てくるのか分からんが、ウチの設計部門は心底頼りになるぜ」

 

そう言う彼らが端末に目をやると、今日のニュースが放送されていた。再生ボタンを押して視聴すると、タンカーを改造した戦術機母艦が東南アジアへと出発する様子が映し出された。

 

「今日のニュースはなんです?」

 

「東南アジアへの戦術機輸出だな、防衛力を底上げする腹積りか」

 

疾風や隼改の配備が進められ、今まで運用されていた旧隼は様々な国へと買われていった。特に戦術機不足に嘆く欧州はお得意様だったが、今回の放出分は東南アジアへと渡ったらしい。

 

「ここに色々と集中してますねぇ、調査してた海底資源は採掘しないんですかね?」

 

「採算が合わんそうだ、余程大きなものが見つからない限りはな」

 

海底ともなると調査にも莫大な資金が必要になるため、その手の資源探査は開発にまで辿り着くことは殆どないのが現状だ。

 

「…まあ戦争が終われば他の星に出張さ、地球での仕事が恋しくなるかもしれないぞ?」

 

「確かに、そう思えば苦でもないですかね」

 

帝国は本格的にアジア派兵を考えている、お得意様の帝国陸軍にも大きな損害が出るだろう。秋津島開発の社員となれば軍人から敬礼すらされるもので、そんな彼らが過酷な戦地に赴くのには思うところがあった。

 

「俺達がここで施設を完成させれば、その分前線は楽になる」

 

「ですね」

 

「この調子で人類を勝利に導こうぜ、そうすりゃ老後も英雄扱いさ」

 

「ハハ、縁の下の力持ちが性に合ってるでしょうに」

 

MMUの集中運用により沿岸部の防衛施設も並行して配備され、東南アジア諸国の防衛体制は飛躍的に向上することとなる。旧式化したと言うこともありライセンス生産が広く許可されつつある旧隼は独自の改修がなされ、長い間主力を務めることになるのだが、それはまた後ほど語ることとする。

 

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