捨て死神を拾った話   作:コンポタ61号

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死神ってめちゃくちゃブラックなんですよ

「えーっと……どういう状況?」

「拾ってくれぇ……」

 

☆☆☆

 

 一回状況を整理しよう。俺の名前は荒川政宗あらかわまさむね。そこら辺にいるただの高校生。今日もいつも通り学校から帰っていた。

 

 ようやく家に着いたと思ったら、家の前にこ・れ・が置いてあった。

 

 それはネットショッピングをした時や、スーパーで貰えるようなどこにでもある普遍的なダンボール。

 だが中身がおかしいのだ。

 

 このダンボールの表面には『拾って下さい』と書いてある。通常こんな事が書いてあるダンボールにはペットなどの愛玩動物が入ってる事が多いと思う。だがこれは違う。

 

 人だ。人が入っているのだ。ざっと目算百五十センチくらいの、小柄な女の子だ。

 

 しばらく眺めていると、この子も俺に気がついたようで、目が合うと

「拾ってくれぇ……」

 と涙声で語りかけてきた。心做しか少し目が潤んでるように見える。

 

 これはどんな状況なんだ……?とりあえず、このまま放って置くわけにもいくまい。

 

「えーと、君が良かったら少しウチに上がってってよ、色々話聞きたいし」

 

 しまった。これでは完全に誘拐犯かなんかじゃないか。最初の一言からやらかしてしまった……不審者と思われて通報とかされないだろうな……?

 

「!いいのか?」

 

 どうやら思われなかったようだ。それどころかやけに目が輝いている。さっきまで目が潤んでいたからか余計に。

 というかチョロそうだな……いや、決して邪な考えとかはなくてただチョロそうで心配だなってだけだよいやほんと。

 

「まあ拾うかは別としてなら……」

 というか拾うとは何なのだろう。この子は自分を捨て猫かなんかだと思っているのか?

 

 ☆☆☆

 とりあえず家に入れたが、なんか社会の目が刺さるような感覚に襲われるなぁ……。

 というか女の子を家に入れたことなんて一度もないから、少し緊張するな……。

 

 

「じゃ、そこのイスに座ってくれ」

 

 俺が促すと、ストン、という擬音が似合いそうな座り方で座った。やはり身長が足りないのか、少し足がぷらぷらしている。

 俺も対面に座り、語り始めた。

 

「えー……まぁなんだ、こういう時は自己紹介から、でいいのか?」

 

「いいと思うぞ。多分」

 

 こんな状況になるのは人生で最初で最後だろうと思う。というかこんな状況が何回もあってたまるか。

 

 そんな事を考えていると、対面に座っている子が口を開いた。

 

「私の名前は咲。白菫しろすみれ咲さきだ。職業……は、元死神だ。リストラされて路頭に迷っている」

 

「……ん?今、死神って……」

「死神だ」

「本当に?」

「本当だ」

 

 厨二病か……?

 

「君、厨二病か?とか思っていないだろうな?」

「い、イヤー、思ってません、よ……?」

 

「言っておくが私はれっきとした死神だ。まぁクビになってしまったが……

現世では死神が不吉とか思われていると聞いたことがあるが、死神はただの地獄界にいる人間たちの職業に過ぎん。こ・っ・ち・でいう公務員と似たような感じだ」

 

「そんな話信じられるか、証拠とかあるのか?」

 

「証拠と言われれば難しいな……あぁそうそう、一応こんなのもあるぞ」

 

 と言って、対面の子……咲と言ったか、咲さんが手を横伸ばし、やがて

「お、あった」

 何も無いところから、三メートル程のかなり巨大な鎌を、どこからか手にした。

 

「ど、どっから出したんだそれ!?」

「これか?これは【空間収納】だ。さすがにこれ程でかい鎌を持っていると目立つからな、そこら辺の空間に保管できるようにしてるのだ」

 

「なるほど分からん。つまりどういうことだってばよ?」

 

「いつでもどこでもこれが取ったり入れたり出来る、という事だ」

 

「大体分かった。いや、理解はしてないけどさ。まぁ、死神ってのは、ちょっとだけ信じてやるよ……」

 

 というかこんな事が人間にできてたまるか。相当疑り深い人間以外はスグに信じるだろう、まぁあれだけデカい鎌を持った相手に下手な事を言わない方がいい、という思いの方が強いが……。

 

「では次はあなたの番だな」

 

 番、というのは流れからして自己紹介の事だろう。正直あまり自己紹介は得意じゃないんだが、まぁ軽く済ましておこう。

 

「俺の名前は荒川政宗。湖西こせい高校の一年生。部活は帰宅部、好きな食べ物は寿司とそばだ」

 

「寿司と蕎麦とはなんだ!?」

 

 自己紹介の内容、これでいいかなと思っていると、咲さんが食い気味に聞いてきた。

 

「寿司とそばだぞ?知らないのか?」

 

「申し訳ないが知らないな。あっち……地獄界には食べ物がないんだ、あっちの世界の住民は食べなくても生きていけるからな」

 

「そういえば地獄界出身って言ってたな、どういう所なんだ?」

 

 俺が疑問を口に出すと、咲さんはしっかりと答えてくれた。

 

「地獄界というのは、ココとは少し離れた次元、仮に2.9次元としておくか。そこにある世界だ。少し組成がこの世界と違うのでもちろん常識もこっちとは異なる。さっき言った『食べなくても生きていける』というのもそのひとつだな」

 

 噛み砕くと、【別次元の存在】って事か。

 

「常識が異なるので、当然職業事情も変わってくる。こっちには無い仕事があっちにはあったり、その逆も然りだ。そしてそういう仕事のひとつが、私の元の職業である『死神』だったりするのだ」

 

「ほー、まぁ、地球だって地域によって風習が違ったりするし、そういう事があっても不思議じゃないな」

 

「背景の説明は終わりにして、本題に入らせてもらおう……」

 

「やけに重々しいが、どうぞ」

 

「私は半月ほど前から死神として働き始めたのだが、今日の朝、出勤したところで閻魔……会社で言う代表取締役に、呼び出されたのだ。

 閻魔殿は厳しい方だったので、何か粗相をしてしまったのでは……と、内心怖がりながらも社長室に向かった。そして閻魔殿は私に対してこういったのだ『君、ちょっといい子すぎてこんな職業やらせるの申し訳なくなってきたから、クビね』と……!」

 

「どんな理由だよ」

 

 リストラにしては軽すぎるだろう。もしかしたら一人の人間(死神?)が路頭に迷うことになるかもしれないのに。

 

「そして、どうせ仕事を辞めるなら、と思いこっちに来たわけです」

 

「まだ少し飲み込めないところはあるが、大体の事情は把握した。それで、家に置いて欲しい、ということか」

 

「私に出来ることなら何でもする……!だから居候させてくれ!」

 

 ん?今何でもっt

 

「あ、い、いや、何でもと言っても貞操観念はしっかりして欲しいぞ!?」

 

 邪な考えは右から左に、流しそうめんのように流れていった。

 

「俺に女の子を襲う勇気なんてないよ、安心してくれ」

 

 だって彼女いない歴=年齢だからなぁ!そもそも女子と話すこと自体珍しいんだよこちとらぁ!!

 

「さて、居候だったな?今うちに家族はいないし、部屋も無駄に余ってる。本当なら親に許可を取った方がいいんだろうが、まぁ事情が事情だ、とりあえずうちに住むといい」

 

 うちの両親は俺が小さい頃に離婚して、今は親父ひとりで俺を育ててくれてる。ただその分仕事は忙しいらしく中々家に帰ってこない。だが、俺のために頑張ってくれてるのだから感謝こそすれ文句なのない。

 

 ただ家が無駄に広いので、俺一人で寂しくないと言えば嘘になる。なので同居人が増えるなら全然OKだ。

 

「では、今日からよろしくお願いする……!」

 

 こうして、俺の家にすこし変わった同居人が入ることになった。




ヒロインの描写忘れてた(TRPG好きとしての意地)
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