ジム廃業して飛んでパルデア 作:あさいかくり
ポケットモンスター。ちぢめてポケモン。
この星の不思議な不思議な生き物。
空に、海に、森に、街に。
世界中の至る所でその姿を見ることができる。
そんなポケモンの世界に転生して早二十年余り。
初めは喜びに踊り狂ったものだが、長いこと暮らしていると人間は環境に慣れてしまうもので、今はポケモン達との生活が切っても切り離せない日常の一部になっている。
平和だ。こんな平和がずっと続けばいいのに。
「先生! ウズ先生!」
トレーナーズスクールで好物のヨウカンを頬張っていると、息も絶え絶えに若い少年が入ってきた。
「ジムリーダーの認定、受かりました!」
「そうですか。おめでとうございます、ヒョウタ君」
さて、この合格通知を握りしめた笑顔の青年。
ある程度シリーズを通してプレイ済みの方はご存知だろうが、彼はシンオウ地方でいわタイプのジムリーダーを務めるヒョウタその人だ。彼のズガイドスにずつかれた人は多いのではなかろうか。
が、しかし。目の前の彼はゲームより若干幼い。
原作での正確な年齢は不明だが、顔立ちからしておよそ数年前だろうか。十年以上は離れていないはずだ。
トレーナーズスクールで教師として働いていたら、原作ジムリを生徒として受け持つことになった俺の気持ちは余人に想像できるはずもない。
こちとらポケモンエンジョイ勢よ。前世じゃランクマとか手つかずだったのに、バトル強者の卵を育てろと? 失敗して後の流れに影響出たらどうするんですか。
幸い、トレーナーとしてのセンスがバリ高かったので基礎を教えたら勝手に成長してくれた。流石ですね。
「教え子がジムリーダーとは、鼻が高いです」
「欠員が出るまでは正式には違いますけどね……」
「それなら心配いりません。僕が引退しますから。ポケモンリーグには後任に君を推薦してあります」
「え!? まだお若いのに!」
聞いて驚け。何の因果か、つい昨日まで俺はコトブキシティのジムリーダーだったのである。
ちなみに他の面子は原作準拠で変化無し……あ、いやトバリは違ったかな? まあ察するに俺はヒョウタが就任するまでの穴埋めだ。ただでさえ荷が重いのに教師と二足の草鞋でくっっっっっっっそ大変だった。ようやく解放されて万々歳である。
「もう辞表は叩きつけてあるので無駄ですよ。ずっと前から決めていたことです」
ジムリーダーを原作通りにするためにな。
やっぱ最初のジムはいわタイプじゃないといかんよ。
「先生。いえ、ウズさん。一勝負お願いできますか」
「タイプ相性が不利なので嫌です。僕はバトルが苦手ですし、それに、引き止めるつもりでしょう?」
「当たり前です! だってこんなの……ッ!」
「その先は胸の内にしまっておいてほしいですね。これは、ただそうあるべきというだけの話です。それ以上でもそれ以下でもない」
うちのジム人気なかったからね。というかポケモンリーグとか他のジムリーダーからもあれこれ言われていたから、畳むのはちょうどいい頃合いなのだ。これ以上トレーナーズスクールの敷地と設備を間借りするのも正直気が引けるしなあ。いや違うのよ、別に施設費横領とかしてないからね。別の方面に予算回してたの。
「……分かりました。もう止めません。では、今後は教師のお仕事に専念されるんですか?」
「いいえ。旅をしようかと」
今まで仕事のせいで他の地方に行けなかったからな。夢にまで見たポケモンの世界、退職金パーっと使って世界一周するんだ俺は。もう働くのは嫌でござる。
「たまに手紙と、そうですね、ヒョウタ君の就任祝いに、旅先で珍しい化石を見つけたらお送りしますよ」
拝啓ヒョウタ様、父上母上、あと前世の父さん母さん。
私は今、行き倒れています。
ここどこ……? 助けt(続く文字は読み取れない)
コトブキシティ ポケモンジム
もとリーダー ウズ
どくぜつ かわかぬ でんしょうしゃ