ジム廃業して飛んでパルデア 作:あさいかくり
ナンジャモとの公開バトル(配信中)。
衆目監視の中で手札を晒すことに忌避感を覚えるのは俺だけではないはず。まあいい、三匹目はこいつだ。
「君の番です、ドクロッグ」
雨に打たれて喉袋を膨らませるドクロッグ。相手のレントラーを見てケヒッと真意の読めない笑い声(?)を上げた。ほんとマジで何なんこいつ。だが……バトルの実力は折り紙つきなんだよな。
「レントラー! かみくだく!」
「ねこだまし」
大口を開けたレントラーを奇襲で怯ませた後、
「ならワイルドボルト!」
「みがわりで流してください」
電光纏う突進の猛攻をドクロッグはHPを削って生み出した分身を用いて回避していく。同じような攻防が三度、繰り返されて。
みがわりは体力の四分の一を消費する、四回目はもう打てない。追い詰められたドクロッグ目掛けてレントラーは渾身の大技を放とうと、
「騙されないぞよ! 雨で回復してる、こおりのキバで牽制!」
「チッ……ドレインパンチ」
みがわりで流すと読み切られたのをあえて逆手に取りカウンター、無防備な顔面に綺麗に入ったドレパンがレントラーの体力を削り、消耗していたドクロッグの傷をある程度だが回復する。
「ドレインパンチで押し切ってください」
「サイコファングで迎え撃て!」
うわ性格悪い。どく・かくとう複合に四倍弱点のエスパー技を今の今まで隠してやがった。だがダメージレースはドレパンの吸収とかんそうはだのとくせいで回復できるこちらが有利だ。それにレントラーには反撃する体力が残ってないだろうよ。ほら倒れた。これで一匹落としたぞ。
「ありがとうレントラー。……どくびしにまきびし。さっきのロズレイドだね」
「搦手で相手を翻弄するのがどくタイプの本領ですので。いつになったら気がつくかと思っていましたが、質問するまでもありませんでしたね。流石です」
どくびし二回、まきびし三回。しっかりバトルコートに撒かせてもらった。これでナンジャモのポケモンは登場した瞬間にもうどくとダメージを食らう事になる。ポケモン交代に負荷をかけていこう。
雨で視界を制限しつつ、まきびしが水溜りに沈んだら少しは時間稼ぎになるかとも思ったが……実際はそう上手い事いかないわな。トレーナー戦だと。
「飛んでいるなら撒き技に意味はない! タイカイデン! ぼうふうだ!」
「ふいうちで叩き落としなさい」
飛び出した先発の鳥ポケことタイカイデンが技を放つ直前に、ドクロッグは不意をついて地面に引きずり落とす。あとはみがわりで耐久しつつドレパンでタコ殴りするだけの簡単なお仕事です。やられる前にやれば弱点技なんざ怖くねえのよ。
「お、おいかぜ!」
最後に追い風を呼ぶ仕事をさせてしまったか。
だが、これでイーブン。まだ勝負の行方は分からない。
「2タテとか映えを分かってんじゃんウズ氏」
「お望みなら全抜きして差し上げても構いませんよ」
「できるものなら見せてよね! ムウマージ!」
は? おい待てやこら。
お前でんきタイプのジムリーダーじゃねーの?
そして折悪く雨が上がる。雨での回復手段を失い、ドレパンを無効化されるゴーストタイプ、ドクロッグを続投するメリットは薄い。というか交代が安牌だ。
え、何でそんなにやる気なのお前。
……仕方ねえ、やったらあ!
「ドクロッグ、ふいうちです」
「マジカルフレイム!」
はいバーーーーカ! 案の定ひんしだよ!?
とくせいかんそうはだのポケモンは水で回復できるが、強い日差しや火に弱いのだ。ほのおタイプ技なんて受けた日にゃ、こうかばつぐんとまではいかずとも致命傷。
「戻りなさいドクロッグ」
まあ多少体力を削ってくれたのでよしとする。しかし、ムウマージのとくせいはふゆうだったか? どくびしまきびしが通用しないじゃん。なら四匹目は、
「お願いします、ゲンガー」
「っと、それなら〜皆の者お待ちかね! 出でよひらめき豆電球ー! 暗闇払うテラスタル!」
「は?」
なにそれ知らない。ムウマージが結晶化して頭に豆電球生やしたんですけど。
「いえ、派手なだけの虚仮威し。やる事は変わりません。あやしいひかりで惑わしなさい」
「それはどうかなー? チャージビーム!」
ムウマージの放った雷撃はとてもサブウェポンの威力ではなかった、ゲンガーはどうにか回避するが……そうか。仕組みは不明だがタイプが変化してやがるな? だからでんき技をタイプ一致で撃てると。
じゃあゴースト技で弱点つけないじゃん。
「接近しておにび」
「全方位にチャージビーム!」
ゲンガーは影に潜伏して距離を詰める。チャージビームを連発するムウマージの背後に回り込み、青い炎をなすりつけてやけどを負わせることに成功した。
「そのまま畳みかけます、たたりめです」
「シャドーボールで返り討ちだ!」
状態異常の相手に威力が倍増するたたりめと、チャージビームの追加効果で上昇したとくこうから放たれるシャドーボール。両者は衝突して……結果、どちらのポケモンも戦闘不能になる。これで残りは2対3か。
「いけマルマイン!」
「正直不安ですが……ドククラゲ」
でんき使いにみずタイプ出したくねー。だがやってもらうしかない、頼むぞドククラゲ。いやほんとに。観客に触手振ってる場合じゃないのよ?
「マルマイン、エレキフィールド!」
「ドククラゲ、ベノムトラップ」
両者の技で足元に電気が駆け巡り、毒液が飛散する。トレーナーの足までビリっとくるなこれ。
「先手必勝。ベノムショック」
特殊な毒液が動きの鈍いマルマインに降り注ぐ。ドククラゲが使った技はどちらも相手がどく状態の時に最大の効果を発揮する。どくびしでもうどくに、ベノムトラップでこうげき・とくこう・すばやさを下げ、どくを受けた相手に二倍のダメージを与えるベノムショック。マルマインがいかに高速のでんきタイプだろうと流石にここまでやれば勝てる。残り二匹もこのまま……
「まだまだいくよー、ジバコイル!」
は が ね ふ く ご う。
どく技が効かない……だと……!?
「でんじは、からのロックオン!」
「まずい……うずしおで身を隠しなさい!」
しまった、一瞬だが指示を出すのが遅れた。俺の動揺が伝わったのか、ドククラゲは硬直。微弱な電流で全身を痺れさせてしまう。しかもジバコイルの構え、あれは。
「ビビビと薙ぎ払うのだ! でんじほうッ!」
雷光一閃。ドククラゲは迸る電流に飲み込まれる。というかこの立ち位置だと俺も巻き込まれるんですが?
ええい、前転回避っ。
かろうじて無傷で流れ弾のでんじほうを回避した俺が見たものはバトルコートに走る焦げた直線。でんじはで動きを止め、命中率をロックオンで補ったでんじほう……しかもエレキフィールドの威力補正込み。
これは無理か……いや、おいおい嘘だろ。
立ってる! ドククラゲが立っているー!?
何これどうなってんの、襷とか持たせてないのに。だがこのチャンスを逃したらジバコイルは落とせない。
「お返しです。ミラーコート」
倍返しの致命ダメージがジバコイルに届いた。そうして両者同時にノックアウト。相打ちだ。
これでお互いに最後の一匹。
「出でよボクの相棒! ハラバリー!」
「暴れてきなさい、ドラピオン」
また知らないポケモンだ。緑のカエルのような見た目はでんきよりみずタイプっぽい。足は遅そうだが、さて。
「ドラピオン、シザークロス」
「ハラバリー、リフレクターからのひやみず!」
ドラピオンの爪が壁を張られて受け止められた。そして頭から浴びせられた水で気勢を削がれる……この様子だとこうげきが下がっているな。
そして想像以上にタフで硬いぞハラバリー。もしかして能力が防御寄りなのか?
「そ・し・て〜? 受けた攻撃をでんきにかえる! ハラバリー、お返しのほうでんだー!」
何それ。言葉通り受け取るなら、こちらの攻撃でじゅうでんするというとくせいか。二重の意味で洒落にならん。向こうは完全に物理メタ構築だ。ドラピオンが攻めあぐねている間に強化されたほうでんで倒されかねない。
「おっと、どくが怖いね。なまけるでちょい休憩ー」
しかも回復すんのかよ……いやだが、時間をかければもうどくが回って勝てるか?
ここまで結構頑張ったよな俺。たぶん動画の反応もそれなり、視聴者に受けているはず。ここで負けても、あるいは逃げに徹して勝っても、目的は達成される。
「…………」
それを許すお前じゃないか、ドラピオン。
他の手持ちなら納得せずとも理解してくれるんだが。
「分かりましたよ。やればいいんでしょう」
唇を読まれないように口元を手拭いで隠す。
使うのは一瞬だけ、誰にも悟られるな。これは素手捕獲とは比べ物にならない秘中の口伝なのだから。
「ドラピオン――――『■■』」
バトルは終わった。
結果? ああ、なんとか勝ったよ。でもしばらく勝負はしたくないわー。