ジム廃業して飛んでパルデア 作:あさいかくり
技術の授業、第二回がはっじまっるよー。
「それでは授業を始めます。スマホをしまって席についてください」
騒がしい生徒たちが俺の声がけで口を閉じる。人数の都合上、学年関係無しのごった煮クラス編成だから静かな人もいるが元気なやつらも多い。
技術室は満員、囁き声でも積もり重なれば授業の妨げになるのでな。ちゃんと話は聞いてね?
「えー、前回はモンスターボールを作りましたね。想像以上の反響をいただいて先生は困惑しています。とはいえクラフトが皆さんの一助になれば教師冥利に尽きるというものです。さて……今回は冒険の必需品、キズぐすりを作ってみたいと思います。事前に公開した動画は見ていただけたでしょうか?」
うん。反応はまちまちだな。
時短のために予習用の動画を配信したのだが、視聴せずに参加した生徒はそれなりにいるようだ。分かってた、面倒だよね。どうせ授業で同じことやるものな。
「まあよろしい。改めて、簡単に説明しましょう。今回使う材料はオレンの実、それとクスリソウです。どちらも野外で見かける植物ですね。ただし無闇矢鱈と集めるのは厳禁です、あくまで必要な分だけ採取するように」
この世界はゲームと違って一日経過で採取スポットがリポップしたりはしない。環境破壊はNGだ。生態系が崩れると飢えたポケモンが他所に移動したりするからな。
「手順は、これら二つの材料をすり潰して混ぜ合わせるだけです。簡単でしょう?」
そして完成品を瓶詰めしたものがこちらになります。
「コツはすり潰す段階で繊維をしっかりとほぐすこと。それとむらができないように混ぜることです。この工程を疎かにすると市販のキズぐすりよりも効果が低下してしまいます。反対に、丁寧に製作すれば薬効は既製品よりも高まりますね」
最前列に座った生徒がメモを取っている。彼はたしか文科系コースの……不登校気味らしいと聞いていたが、なかなかどうして真剣じゃないか。感心感心。
「ここからは応用になりますが、このキズぐすりにピーピーグサを加えるといいキズぐすりに、そこからさらにゲンキノツボミを足すとすごいキズぐすりが作れます。……少し珍しい材料なので参考程度に。普段使いであれば無印のキズぐすりで十分でしょう」
「先生、質問いいか?」
「どうぞペパーさん」
「これ、実際どのくらい効果があるんだ?」
「そうですね……既製品よりと言いましたが、あくまでキズぐすりの域は超えません。酷い怪我や病気は、きちんとポケモンセンターで診てもらうべきでしょう」
俺の答えを聞いたペパーはわずかに落胆した様子を見せた。どうやら期待に添えなかったらしい。すまんな。クラフトには限界があるんだ。
「では早速クラフトに移りたいと思いますが、その前にネモさん。……僕の話を聞いていましたか?」
「はい!」
「では質問です、キズぐすりのクラフトに必要な材料はオレンの実と、もう一つは何ですか? 聞いていたなら当然答えられますね?」
「クスリソウです! ポケモン勝負しましょう!」
「ご名答です。顔を洗って頭を冷やしてきなさい。話は授業が終わってから聞きます」
マジで授業中に何を考えてんだ。ただ、きちんと正解はしているから怒りの矛先が見つからない。
「チャイムが鳴ったので、今日の授業はここまで。キズぐすりの出来を確認したい方は、完成品を小分けにして提出してください。次の授業までに僕が採点します。成績の評価には含めませんのでご安心を」
どうやら生徒の大半はチェック希望のようだ。
山積みのキズぐすり。これ誰が誰のか分からなくなりそうだな? しかもまだ他のクラスも残ってるときた。
め、めんどくせ〜……!