ジム廃業して飛んでパルデア   作:あさいかくり

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 騙されてポケモンリーグ。

 この状況を説明する言葉としてこれほど簡潔で的を射たものはないだろう。校長から話があると言われ、場所を変えようと提案された時点で怪しむべきだった。

 

「ようこそウズ先生。お待ちしておりました」

 

 オモダカ女史と、その後ろに強そうな四人が並ぶ。

 おのれ校長……謀ったな……? というか一人は美術のハッサク先生じゃないか。こんなところで何を、

 

「ご紹介しましょう。パルデアポケモンリーグの四天王の皆さんです」

 

 ファッ!?

 

「こちらの女性が、じめん使いのチリさん」

 

「まいど〜。チリちゃんやで。なんやおもろい先生がいるっちゅうから楽しみやったわ」

 

 男装の麗人、しかもこてこてのコガネ弁だと……いたいけな少年少女の情緒をめちゃくちゃにするつもりか、この初恋泥棒性癖破壊マルマイン。

 

「そして、はがね使いのポピーさん」

 

「よろしくですの! ウズのおじちゃん!」

 

 あどけない顔してはがねタイプ使いか。俺の直感が告げている、この幼子に逆らってはいけない。ところで、俺はまだお兄さんで通る年齢なのだよポピーちゃん。

 

「彼はアオキ。チャンプルタウンのジムリーダーも兼任しています」

 

「……どうも」

 

 この人には親近感。でもどうしてかな。向こうは俺を「キャラ濃そうなやつだな」みたいな視線で眺めているのですけど。チガウ、オレ、ナカーマ。

 

「ハッサクさんは既にご存知ですね」

 

「どうもですよ。小生、ドラゴンタイプ専門としてリーグ四天王を兼任しています」

 

「これはご丁寧に……あの、それでなぜ僕はここに連れてこられたのでしょう?」

 

「それについては私から説明しましょう」

 

 クラベル校長。できれば事前に説明がほしかったです。心の準備というか、逃げ出す余裕というかね。

 

「ウズ先生はテラスタルという現象をご存知ですか?」

 

「ああ、あのポケモンが結晶化する……」

 

 ナンジャモ戦で一杯食わされたやつな。扱いとしてはカロスのメガシンカや、ガラルのダイマックスに似ている。Z技? 俺アローラの文化とか知らないのよね。

 

「パルデア地方固有のものとお見受けしますが」

 

「ええ。そしてこれがテラスタルを可能にするテラスタルオーブです。認定を受けたトレーナーのみ使用を許可されているのですが、ウズ先生ならば問題ないでしょう」

 

 俺はテラスタルオーブをもらった。ありがたいが、こんな簡単に渡していいのか?

 

「ありがとうございます校長先生。さて、本題はここからです。ウズ先生はテラスタルに不慣れです。そこで我々から提案があります」

 

 げ、嫌な予感。

 

「四天王の皆さんもウズ先生に興味がおありのようですので、ここはテラスタルの授業を兼ねた交流戦でもしてはどうかと。もちろん私も参加します」

 

 ちくしょう最初からそれが目的かオモダカ女史。交流戦ってのも建前で、外堀埋めてなしくずしにポケモンリーグに所属させようとしてるんじゃないだろうな。

 

 

 

 

 

 ボロクソに負けました。ただでさえ地力で上を行かれているのに、四天王全員の専門タイプが等倍以上で一貫取られてるからな。特にポピーさん先輩が鬼門だった。策を弄しても勝てる気がしない。

 

「お疲れ様です。いい勝負でした」

 

 自販機でおいしいみずを購入し、一本をこちらに差し出すオモダカ女史。ありがたいが、ありがたいがね。

 

「なぜ私があなたを勧誘するか、不思議ですか?」

 

「疑問がないと言えば嘘になりますね。僕レベルのトレーナーなら他にもいます」

 

「見解の相違ですね。風の噂では、先代ガラルチャンプを苦戦させたと聞きましたよ」

 

「その話には前提が欠けています。あの時、ダンデさんはリザードン一匹しか使わなかったんです」

 

 ハンデもらって六タテされたからな。カレー作ってたら勝負挑まれたんだけどさ。あまりに熱心なものだから無茶な条件突きつけたんだけど即答されてね。

 

「話は変わりますが、パルデア最強のポケモントレーナーは誰だと思いますか」

 

「? オモダカさんでは」

 

 トップチャンピオンとしてリーグ委員長を務めている。だから彼女が一番強いのだろう。そう思って俺は答えたのだが、オモダカ女史は首を横に振った。

 

「断言しましょう。パルデア最強を一人選ぶなら、私はチャンピオン・ネモの名前を挙げます」

 

 意外でもあり、納得でもあった。彼女の精神性はバトルに傾倒している。生まれついた資質と人並外れた努力によって研磨された、ポケモン勝負の才能。バトルの申し子と言い換えてもいい。

 

「強者に孤独はつきものです。彼女は強さを獲得すると同時に、周囲との隔たりを感じるようになった。故に己と真に競い合える仲間を求め、その言動がさらに他者との溝を深めてしまう」

 

「悪循環ですね」

 

「ですが、最近はようやくライバルと呼べる存在と出会えたようで。嬉しそうに話をしていました」

 

 この話、俺関係ないよね?

 ライバルというのはハルトかアオイだろうし。

 

「私としては、彼女と競い合えるトレーナーがもっと増えることを望んでいます。在野に眠る若き才能を萌芽させるには、優秀な指導者と、困難として立ちはだかる高い壁が必要です。両者はいればいるだけいい。若者は切磋琢磨し、結果としてパルデアのトレーナー全体の質を底上げすることに繋がる」

 

 なるほど……言いたい事は分かった。

 

「私に力を貸していただけますか?」

 

「僕は、僕にできる事しかできませんよ」

 

「そのお返事だけでも十分です。今後、無理にポケモンリーグに所属しろとは言いません。……もし可能なら、先生の隠し技を我々にご教授願いたいものですが。今日は一度も使われませんでしたね?」

 

「ははは……」

 

 やっぱり目をつけられてら。ドラピオンに待てしてよかったわ、お披露目したら質問責めにあってたぞ。

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