ジム廃業して飛んでパルデア 作:あさいかくり
素材が見つからない。
希少な薬草なのであまり期待はしていなかったが、生徒の分はともかく、せめて見本用にいくつか確保しておきたかった。仕方ないから次の授業は応用編なしだな。
険しい崖から見下ろすと、木陰で寝そべるコライドンを発見した。ということは……ああ、やはり。
「どうもハルトさん」
「わあっ!? 危ないですよ先生! コルサさんみたいな登場の仕方はやめてください!」
へえ、風車から飛び降りてバトルコートに着地? いや普通に出てくればいいじゃん。パルデアのジムリーダーって個性的よな。それとも芸術家だから?
「僕は材料集めをしていたのですが、ハルトさんはこんなところで何を?」
「ちょっとポケモンと特訓を……あ、アオイには内緒にしてください! からかわれるから!」
「ご安心を。口は固い方なので」
ハルトの手持ちはニャローテ、イーブイ、コイキング、ガバイト。なかなか鍛えられている。ジムバッジ三つ相当の実力はありそうだ。コイキングがまだ進化していないのはあえてと見た。ギャラドスはね……大人のトレーナーでも持て余すからね……。
「そうだ、ガンテツさんとお話しましたよ。ボールは断られちゃいました……」
「あまり気落ちしないでください。あの方が電話に応じただけでも相当ですから」
「でも、もっと腕を磨いたら考えてもいいって!」
マジか。ガンテツさんのトレーナーを見る目は確かだ。そのお眼鏡にかなうハルトは逸材なのでは。
「まずはアオイに勝てるくらい強くならないと」
「お二人は仲がよろしいですね」
「幼なじみですから。親同士もすごい仲良しで……一緒に引越しするくらい。だから今でもお隣さんなんです」
それ仲良しのレベルを越えてない? 先生としては君の家庭環境が少し心配になりますよ。
「昔からアオイは何でもできて、みんなの憧れで。僕はその後をついていくばかりだった。そんな自分を変えたくて、ジムに挑戦してるんですけど……」
「上手くいかないと」
真面目に努力を積み重ねているのは分かる。ハルトだって才能がないわけじゃない。ただ真っ当な手段で天才に追いつけるかと問われたら……ネモのように好戦的な性格というわけでもないようだからな。
「だから、まずは形から入ろうと思うんです!」
おい流れ変わったぞ。
「チャンピオンやジムリーダーってみんなとっても個性的ですよね? 使うボールに投球フォーム、ポケモンの技の出し方、あと決めポーズまでこだわるのが強さの秘訣かなって……先生はどう思いますか?」
俺の感想はひとつです。シリアスくん仕事して。
いや真面目な努力家が頑張りの方向性を間違えるとこうもトンチキな結論に至るのか、末恐ろしいわ。
「たしかに強いトレーナーは特定の動作をルーティン化することが多々ありますが、別にそれ自体がバトルの強さに直結するわけではありませんよ? 没個性なジムリーダーだっていますからね、現役時代の僕のような」
「ウズ先生は十分に個性派だと思いますけど……」
「は?」
「……え?」
いやいや。ちょいと身体能力が高めで、時に厳しく時に優しく挑戦者に接する、毒舌キャラを演じてるだけの普通のジムリーダーでしたからね。俺だって仕事で煙幕とか近接素手捕獲法とかは使わないから。
「とにかく。見た目を磨くことは自信に繋がりますが、勝負の技術を疎かにしてはいけませんよ」
「はーい」
「それはそれとして、もし自分の個性を出したいのであればボールカプセルを使ってみるのも手ですね」
「何ですかそれ?」
「ご存じありませんか。シールで飾り付けをするとボールのエフェクトが変化するというものなのですが」
でもそうか、よその地方だと見かけないな。たまにポケモンコンテストでは使われているが。ボールカプセルとシールはシンオウ独自の文化なのかもしれない。
ふむ……。