ジム廃業して飛んでパルデア 作:あさいかくり
技術の授業も早いもので第三回を迎えた。
これで前期は終了だ、あとは中間テストが待っている。問題作るの面倒くさいなあ……真面目に勉強してる生徒は全員合格でいいと思うのだが。
「……であるからして、ゲンキノツボミとクスリソウを調合するとげんきのかけらが作れます。また、ヒメリの実とピーピーグサの組み合わせはピーピーリカバーの材料になりますね。ここはテストに出すので復習しておくといいでしょう。聞こえましたか、テストに出しますからね」
わざわざ二回言ったからな。後になって、こんなの聞いてないとは言わせないぞ。
「先生、できましたー」
「アオイさんですか。早いですね。どれ」
今日のクラフト課題は二種類、げんきのかけらかピーピーリカバーのうちどちらかを選択してもらった。彼女が作ったのは……おい待てや。
「……両方作れとは言っていないのですが?」
「だって時間があったんだもーん」
「しかもこれ、げんきのかたまりとピーピーマックスじゃないですか」
「拾った葉っぱを入れたらこうなりました! 私、もしかして才能ありますか? どやや!」
「ええ……僕を困らせる才能は一級品です」
「いぇーい褒められたー」
これっぽっちも褒めてねえ。アレンジするなとは言わんさ、ただ頼むから授業中はレシピ通りに作ってくれ。
アオイが加えた葉っぱというのは、おそらくキングリーフに違いない。俺が探しても見つけられなかった材料を、彼女は宝探しのついでに拾っていたというのか……? これは幸運か、はたまた才能か。どちらにせよ侮れん。
「……その葉っぱ、何枚か分けてもらえませんか」
「全然いいですよ? あと見つけた場所も教えてあげますね。えっと、こことここと」
素直でいい子だわ、グリフィンドールに十点。
植生の情報はマジで助かる。そうか……パルデアだとこの時期の平野でも咲くのか。勉強になった。
とかやってる間に、他の生徒も作業を終えたようだな。この短期間でかなり手際が良くなった。
「さて皆さん、お疲れ様でした。これで前期の授業は終了となります。……が、時間が余ったのでもう少しだけお付き合いいただけると嬉しいです」
俺はモンスターボールを取り出す。透明なカプセルに覆われたそれを、生徒に見えるようにな。
「これは授業とは関係無いお遊びのようなものですが……出てきてください、クロバット」
ボールからクロバットが飛び出す、同時に紙吹雪と花びらの幻影が舞った。
「これはボールデコといいます。シールを貼ったカプセルをボールに装着することで、ポケモンが登場する際のエフェクトを自分好みにカスタマイズする機能です」
ハルト以外にも見た目を重視する生徒がいると、聞き取り調査で判明したのでな。せっかくなのでご紹介だ。
ネックはカプセル本体とシールだった。なにせパルデアでは生産されていない。流石にこれは手作りするわけにもいかず、生徒に普及する場合はシンオウ地方からの輸入に頼らざるを得ないが、そこは校長とオモダカ女史に交渉してちょちょいのちょいよ。
若者には必ずウケると力説してみたら案外あっさりと諸般の雑務を引き受けてくれた。
「購買部でカプセルとシールは販売中です。まだ数と種類が少ないですが、皆さんの需要に応じて今後品揃えを増やしてくださるそうですよ」
そしてダイレクトマーケティングを敢行したのは何も純粋な善意百パーセントではない。ボールデコに生徒の関心が向けば、少しは技術とクラフトに対する熱が冷めるんじゃないか? と俺の灰色の脳細胞は導き出した。もちろんクラフトで生徒のQOLと生存率が向上するなら願ったりだが、それはそれとしてちょっと疲れたんよ。
後期は……少しでも仕事を減らすんだい……!
幸いにしてボールデコは好感触だ。流行れ流行れ、そして俺のことなど忘れてしまえ。