ジム廃業して飛んでパルデア   作:あさいかくり

2 / 86
002

 遭難しました。

 ソーナノ? ソーナンスッ(裏声)!

 

「って、やってる場合じゃないんですよ……」

 

 旅に出てから数年は順調だった。

 カントー、ジョウト、ホウエンはシンオウと同じで前世の日本に近い雰囲気だから気負わずに済んだ。

 

 イッシュで山男と観覧車に相乗りさせられたあたりから雲行きが怪しくなり始め。

 

 アローラ行きの船に乗ろうと思ったら財布を落とし。

 

 やむを得ずバイトで稼いでいたらガラルじゃ迷子のリザードン使いに絡まれてフルボッコにされ。

 

 カロスはお洒落〜でキラキラ〜な雰囲気が肌に合わなかったので早々に退散。

 

 結果、素寒貧の遭難者ができあがりだ。

 いやカロスの物価よ。どこの地方もそんな変わらんと考えていたが、値段とグレードがあからさまに直結してやがった(注:個人の感想です)。

 

 せめて誰か、人に道を聞ければどうにかなる、

 

「ねえ、そこのお兄さん!」

 

救世主(メシヤ)……?」

 

 へえ、救い主って学生服の女の子なんだ。

 しらなかったなー。ああそうか、幻覚だ。

 

 こんな人里離れた森の奥でそう簡単に現地民と遭遇できるはずがない。そういえばポケモンって毎回ホラー要素入れてくるよなと考えたあたりで思考を止めた。ゴーストタイプならお迎えじゃあないですか。

 

「何を言っているのか分からないけど、ここにはわたしとあなたしかいないよ。ね、今からわたしとヤらない?」

 

「何を言われているのか分からないんですが」

 

 なんだこいつ頭ラブカスか?

 

「またまた! トレーナー同士が出会ったらポケモン勝負! でしょう!?」

 

 ああ、その『()る』ね。あまりに現状と乖離してて連想できなかったわ。

 これが普段であればバトルを連想していいんだけどね、いかんせん、今の俺ってきのみで空腹を誤魔化してる半分野生ポケモンみたいな存在だからね。控えめに見積もっても蛮族だね。むしろ彼女はよく俺をトレーナーだと見抜けたものだよ。

 

「お兄さん強そうだからね! さあ勝負しよっ!」

 

「すみません、今は僕もポケモンも疲れ切っていてそれどころではないと言いますか……」

 

「そうなの? なら近くのポケモンセンターまで案内してあげる! ついて来て!」

 

 願ってもない申し出だ。どうやら助かったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へえー! ウズさんシンオウの人なんだ!」

 

「驚くことではないと思いますよ。僕としては、ネモさんがチャンピオンという方がよほど」

 

「チャンピオンクラスの一人ね。でもそっか、他の地方のポケモン……うー! 早く戦ってみたーい!」

 

 道中の会話では有益な情報交換ができた。

 現在地はパルデア地方、北一番エリア。

 女の子の名前はネモ。トレーナーで少々……いや、かなりのバトルジャンキーのようだ。

 この若さでチャンピオンならば相当な凄腕だなと考えるが、同時に、ゲームの主人公と比べたならむしろ遅いくらいだと思う自分が度し難い。

 

 パルデアに来たのは初めてだがポケモンセンターがやけに開放的だ。雨風を凌ぐには心許ないが、人間の食事と飲料が売っているのでプラス十億点。

 地元にもできないものかな、こういうスタンド形式のポケセン。街以外にもあったら絶対便利だって。今まさに俺が実感してます。

 

「ウズさんはどんなポケモンを使うの?」

 

「今の手持ちですか。そうですね」

 

「あ、待って言わないで! 今のなし! 勝負の時に見せて! ウズさんパルデアのポケモン知らないでしょ、そしたらフェアじゃないからね!」

 

 と言いつつも話を聞きたい欲が隠せていないティーンエイジャーがここに一人。あとフェア云々より初見のポケモン相手にどう戦うか戦略練ってるようにしか見えませんよお嬢さん。

 

「フルバトルでもなし。一、二体ご覧になりますか」

 

「えっ……」

 

 それは『いいんですか』の意味だよな?

 六対六のフルバトルじゃないことにがっかりした声ではないよね?

 

 ちょうど回復が終わったようで、ジョーイさんからボールを受け取る。手間取らせてしまったか。

 

 ベルトに六つ、懐に二つ。手持ちの数に縛りがないのはゲームではないこの世界の魅力であり罠だ。

 連れ歩くポケモンが多いほど戦略の幅は広がるし総合的な戦闘力は跳ね上がる、しかし実際に十匹二十匹と育てて信頼関係を築けるかというと大抵の人間には不可能だ。食費という金銭的な壁も立ち塞がる。

 

 だからこの世界でも、手持ちは六匹を目安に調整するものだという常識が浸透している。

 

 俺も大枠からは外れていない。

 長い旅なので念のため余力を持たせたが、手持ち全員ひんしになるとかまずあり得ない。その前にキズぐすり使うか逃げるよねっていう。

 

 さてと、誰を見せたらいいだろうね。

 恐らく期待されているのは初見のポケモン。ただ俺にはパルデアの生息分布が分からない。

 

「ではこの子にしましょう。エルレイド」

 

『エル!』

 

 やいばポケモンのエルレイド。旅の護衛戦力として連れている二匹の片割れだ。

 うん、いいよね。やっぱかっこいいよエルレイド。

 フォルムがもうスマートだもの。そんで剣士然とした凛々しさがあるからな。

 

「おおー、よく鍛えられてる!」

 

 あっれ思ったより普通の反応。ポケモンというよりは立ち姿とかけづやに注意が向いている。

 

「ご期待には添えませんでしたかね」

「え? ……ああっ、いえいえ違うんです! ただその、エルレイドはこっちにもいるからなんかそのぅ」

 

 マジですか。ではラルトスの系譜は初見ではいらっしゃらないと。……あっぶねえええ! 二匹同時に見せてドヤ顔しなくてよかったあああ!

 はい、というわけで護衛戦力の片割れことサーナイトさんはお休みです。ゆっくり休んでくださいねと。

 となると残りはですねえ……どれが当たりだ?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。