ジム廃業して飛んでパルデア   作:あさいかくり

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 テストの採点終わり。

 丸バツをつける繰り返しでペンを握る右手は強張っているが、これで後期まで仕事とはおさらばだ。……図書館の方はテスト関係無しに作業せねばならんのだが。

 

『エル』

 

『サナ』

 

「お茶を淹れてくれたんですね。それに軽食まで。ありがとうございますエルレイド、サーナイト」

 

 緑茶とおにぎりを乗せた盆が机に置かれる。特に訓練をしたわけでもないのにこの気遣いと家事力、流石はうちのエルサナですわ。要人護衛にだって駆り出せるスペックは伊達じゃない。いやそんな仕事させないけど。

 

 あー、お茶がうめえ。

 おにぎりは梅干しと昆布か。海苔がしにゃけているが、それもまた味わい深いというものよ。

 

『エルル?』

 

 一息ついていると、エルレイドが答案用紙の山を指差して首を傾げた。気になる点があるようだ。

 

「ああ、この付箋ですか。後で見返せるように目印をつけているだけですよ」

 

 中間テストの最後の設問は自由記述式にした。生徒の感想を後期の授業に反映するためだ。決して問題を作るのが面倒になったとか、サービス問題にして不合格者を減らそうとしたとか、諸々の他意はないのである。

 

 逆に仕事増えてね。うっせばーか。馬鹿は俺。

 

 他愛のない感想や一言のコメント、あとはテストの恨み言と落書きが大半を占めるのは想定通り。わりと好意的な意見が多かったのは嬉しいね。抱える生徒と仕事が増えるのは勘弁だが、どうせ物を教えるなら楽しんでもらった方がお互いにやりやすいだろう?

 だがボールデコに関しては俺は知らない、知らないったら知らない。だから質問を寄越すのはやめるんだ。俺をお洒落と紐付けるな。誰がボールデコ伝道師じゃい。

 

 そして、数あるコメントのうち、参考になる意見や要望には付箋でチェックを入れたというわけ。

 

 たとえば『講義だけじゃなくてクラフトの動画を手元アップで配信してほしい』とか。

 一時停止しながら見直せるのはたしかに便利なので、簡単なものから順に動画を上げていこうと考えている。

 

 また『ボールをカスタムするコツが知りたい』という感想がちらほらあった。

 これは地道な微調整と修正の繰り返しで個々人に適した構造を見つけていくしかないのだが、いきなり自分で考えろと言われても分からないだろう。

 とりあえず俺の調整を手本として紹介、後はカスタムで気をつけるポイントを挙げる……くらいかね。

 俺も空気抵抗とか力学とかの学問には疎いので、それ以上は理系の先生に聞いてくれ。タイム先生とか弾道計算の式を教えてくれるんじゃない?

 

「後は、これが一番多かったですかね」

 

 クラフトで生徒を悩ませる要因。堂々の一位。

 それは『素材を集められない』というものだった。

 

 ……技術か?

 

 たしかに野外で欲しい材料を探すには相応の知識と慣れが必要だ。俺もアオイに教わるまでキングリーフの採集に手間取ったから気持ちは分かる。

 森や草むらには野生ポケモンが生息しており、バトルが苦手な生徒は腰が引けてしまうのも無理はない。それ自体は別に悪い事ではないのだ。自分の実力を見極めて危険を冒さないのは大前提の心得だから。

 

 そういうやつは素直に店売りの道具を買え、と突き放すこともできる。あまり野外に出ないのならクラフトの技術は必要性がうんと下がるわけで。

 

 ただ、それを教師(おれ)が言うのは違うだろうと。

 

『サアナ』

 

『エル』

 

「たしかにやりようはいくらかあります。これが技術の範囲内かと問われると、些か自信がありませんが」

 

 前世ではどうだったっけ。木工と情報の印象が強いからあまり当てにならん。

 実際クラフト一辺倒というのは能がない、そして材料の入手難易度と煩雑さの関係で、生徒に教えられるレシピの数がさほど残っていないのもあり。後期は少し趣向を変えてみるのもありか……よし。

 

「明日から少し出かけましょう」

 

 誰か詳しい人がいればいいのだが。

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