ジム廃業して飛んでパルデア 作:あさいかくり
レッツ一人旅。プチ休暇だぞ。
現実は授業の準備なので旅行とは程遠い。俺まだパルデア全土を巡る事ができていないのですが。長期休暇が取れたら何の憂いもなしに各街へ足を運びたいね。
荷物をまとめてモトトカゲにライドオン。なかなか俺に懐いてくれないのは何故なんだ。移動と世話以外でボールから出してないからか?
まず訪れたのはボウルタウン。
噂通りであれば目当ての人物は簡単に釣れる、という俺の目論見は大正解。ロズレイドを連れ歩いていたら向こうからやってきた。
「止まれそこのキサマァ! 優雅で気品のある身のこなし、マスクで覆われた目元から覗く理知的な瞳、そして芳しい香りを放つ紅と蒼の花弁……ッ! まさにアヴァンギャルド!! 麗しき薔薇のポケモンよ! ワタシの作品のモチーフにならないか!? いやなるべきだ!」
コルサさんは気に入ったくさタイプポケモンを口説くというのは本当だったか。
なお興奮が静まるまで本題に入れなかったので、俺は彼と取っ組み合いをする羽目になった。くっそ疲れた……でも参考になる話を聞けたのでよしとする。
次に足を運んだのはセルクルタウンだ。
途中襲撃してきたビークインを撃退し、やや疲労感を覚えながらパティスリー「ムクロジ」に。最初は怪しまれたが事情を説明してどうにか不審者扱いは免れた。同業者のスパイじゃないです、はい。
「そんなことを知りたいんですか〜? 構いませんけど、お役に立てるかどうか。そういえば! アカデミーの生徒さんから美味しいお菓子の噂を聞いたんですよ〜」
店長のカエデさんが言う美味しいお菓子とはポフィンのことだろう。どうも職員室で配った例のブツを生徒に目撃されていたようである。先生の誰かがこっそり持ち帰ってつまんでたな?
お話を伺う礼に基本のレシピを渡した。お礼のお礼に、大量のお菓子を土産に持たされてしまった。甘いものは嫌いじゃないが、この量は食べ切れないです。
カラフシティでは砂嵐の洗礼を受けた。
砂漠から風に運ばれた熱砂が容赦なく頬を打つ、やってられないので早々に目的地へ。
「何、食材の仕入れ先? ……ふうむ。よし、ここはオイラが一肌脱いでやろうかい!」
ハイダイさんは「ハイダイ倶楽部」の厨房で腕を振るっていた。どうやら快く協力してくれるらしい。でもお腹いっぱいのところに中華料理は重い……は? 砂漠越えには腹ごしらえが必須?
徒歩で砂漠を進むとか誰が想像するかよ。
やけに激しい地震に襲われつつ、ハイダイさんの案内でやってきたのは港町マリナードタウンの大型市場。あちらはあちらで海産物の仕入れがあるとか、俺は深々と頭を下げてハイダイさんと別れる。
「やはり箱で売られていましたか」
十分な量をまとめ買いしたら問題のひとつは解決だ。
自分で用意してもいいが、生徒全員分は手間がかかる。いやできなくはないけど一度に乱獲すると生態系に影響を与えたりもするからさ。個人がちまちま集めるのとは訳が違う。他の準備に時間がかかりそうなので時短時短。
「ん……? な、あれは……!」
他にめぼしいものがないか市場を回っていると、競りにかけられたとある品に目が吸い寄せられた。まさか遠い異郷の地パルデアでコレを目にする事があろうとは。
入札価格は五千円から。安いように思えるが、ここから値段が釣り上がる可能性もある。
「五千五百!」
「六千五百円」
「ならこっちは七千だ!」
「俺は八千!」
「一万円」
「何だとッ」
「いや、まだだ……一万五千! これで」
「二万円」
「くそっ! あんた、どこにそんな金が……」
「残念でしたね。僕は給料が入ったばかりで懐が暖かいんです。悪いですが、これはいただいていきます」
俺はまんまと商品を競り落とすことに成功した。
これは素晴らしい掘り出し物だ……育てるもよし、加工するもよし。ポケモンたちに久しぶりの故郷の味を楽しんでもらうのもいい。なお初期設定の四倍の額を支払ったことは意識しないものとする。庶民……。