ジム廃業して飛んでパルデア   作:あさいかくり

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 俺の眼前には土嚢が並べてある。

 ただし土木資材として扱うのではない。お目当ては袋の中身、パルデア各地から採取した土である。

 

「ではお願いします。チリさん」

 

「なんや急に呼び出して藪から棒に」

 

「メールでご連絡した通り、じめんタイプのエキスパートであるあなたにお願いがありまして。ここにある土の良し悪しを調べるお手伝いをしていただけないかと」

 

 俺は土については齧った程度の知識があるだけ。だがじめんタイプを扱う彼女ならば、経験と感覚で上質な土を見極めることができるのではないか、と考えた。

 

「突然先生に呼び出されたもんやから、てっきりデートのお誘いかと思ったわ」

 

「僕ではチリさんに到底釣り合わないでしょう。大変申し訳ありませんが」

 

「真面目か。ちょっとした冗談やん。まるでチリちゃんがフラれたみたいな雰囲気出すのは堪忍やで」

 

 俺も勘弁してほしいよ。冗談でもその手の揶揄はやめてくれ、夜道で背後の暗闇を警戒するのは嫌だから。あなた絶対ファンクラブとかあるでしょ。

 

「ま、ええわ。ほなやろか」

 

 土嚢の前で膝をつくチリさん。リーグ四天王の手袋を外して土に触れる。俺には分からないが、それぞれの質感を肌で確かめているのだろうか。

 

「これとこれはあかん。こっちは水捌けが悪い。これは粒が大き過ぎる。奥のはええんちゃう?」

 

 おお、あっという間に判別してのけるとは。

 

「正直なところ無茶を言った自覚があったのですが、流石は四天王といったところでしょうか」

 

「どんなポケモンにも好みがあるやろ。それに付き合うてたら自然と詳しくなる。……よっしゃ、これでしまいや。報酬は良い土一袋でええねんな」

 

「一袋と言わずどうぞ。運ぶのが面倒でしたら僕がお届けします。ちなみに何に使われるのかお聞きしても?」

 

「ドオーの泥遊びにな」

 

「あのパルデアウパーの進化系ですか……想像すると愛嬌がありますね」

 

「せやろー。べっぴんさんやねん」

 

 ゆるキャラみたいな顔をしているくせして、勝負では俺の手持ちをじしんで沈めた猛者である。テラスタルとタイプ一致で二倍補正とか聞いてないし。

 でもどくタイプ複合なんだよな。機会があれば捕まえて育ててみるのもいいかもしれない。

 

「そうそう、ポピーがまた先生と勝負したいんやって」

 

「…………」

 

「ごっつ嫌そうな顔するやん……」

 

 思わず顔を顰めてしまった。違うんだ、ポピー様先輩はいいお方なのですが、バトルとなるとトラウマが……ドータクン……デカハンマー……うっ、頭が……。

 

「四天王の皆さんともなれば、僕との勝負で得るものなんてそうないでしょうに」

 

「自分、謙遜も過ぎると嫌味やで。こっちも勉強させてもらったわ。人間は性格の悪さをここまで煮詰められるもんなんやなぁ……ってな」

 

「それでも勝てませんでしたから。頑張ってくれたポケモンにはとても顔向けできない結果ですよ」

 

 テラスタルの使い所を見誤らなければ、もう少しいい勝負になっただろうか。どうだろうな。単タイプになるという都合上、俺の手持ちのタイプと搦手主体の戦い方では適切に扱える気がしない。

 他のタイプにテラスタルできるなら、もう少し戦略の幅が広がりそうなものだが。いや、それはそれで選択肢の数に振り回される気がする。

 

「どくさえ、どくさえ通ればはがねタイプだろうが削る算段があるのですが……」

 

「先生は他のポケモン育てとらんの?」

 

「ジム戦用に育成した個体と、あとは旅の途中で仲間に加えた子がボックスに預けてありますよ。ただ今の手持ちが一番慣れているので」

 

 憎きはがね対策に特化したポケモンがいないではない。だが練度が不十分なので実戦投入するのは厳しいだろう。ジムリーダー時代からの癖でシンオウ地方に生息するポケモン以外はあまり使わないし。

 

「全タイプにどくが効くようになりませんかね」

 

「無法やん」

 

 だよね。俺もそう思う。

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